第191話 選ばれなかった子供達03



「ニコ 何をしているんだ」


「えっ 稽古だよ」


「稽古? レベルが上がれば強くなれるんだろ」


「えへへ 秘密だよ」


毎日 木剣を持ち 稽古をする可愛い女の子達


なぜ そんなことをしているのかラノフには分からなかった


この世界ではレベルが上がると強くなれる 剣の腕が上がるのだ


素振りをしたところで 筋トレをしたところで 強くなれるなんて聞いたことがない


なのに ニコ達は 毎日 稽古を


既に強いのに


「ニコ 俺も強くなりたいんだ」


「じゃあ 一緒に素振りをしようか お兄ちゃんも一緒に明日から走る」


「えっ そうじゃなくて レベルを上げたいんだ」


「そればダメだって言われているのよ 他の人のレベル上げは出来ないよ」


「俺はニコを守りたいんだ」


「私は守られているよ お兄ちゃんが孤児院を守ってくれるから 私は安心して住むことが出きるんだよ」


「でも ニコに戦わせて 俺は」


「レーズちゃんは言ってたよ 守るって言うことは 心が強くならないとダメなんだって 勉強も出来ないとダメなんだって」


「心」


「ほら これ プレゼント」


「えっ 本」


「うん これで勉強してね」


「えっ 勉強」


「そうよ 私を守ってくれるんでしょ」


「そうだけど」


「力が全てじゃないんだって」


「そうだけど はぁ 勉強か」


「頑張ってね」


「はぁ ありがとう やるか そうだよな 俺は孤児院の経営者になったんだよな 知識が必要か 勉強かぁ」


「ふっふっ そうだよ お兄ちゃんは 他の子供達に教えないとダメなんだよ 愛を教えないとダメなんだって」


「う~ん 愛か よくわからないけどなぁ~」


「皆 お父さんも お母さんもいないんだから お兄ちゃんがお父さんに お母さんにならないとダメなんだよ」


「俺が はぁ」


「強くならないとね」


「強くかぁ」


「なりたいんでしょ」


「はぁ そうだよなぁ 強くか そのための勉強か」




ラノフとニコには分からないことだらけ


学ぶべきことは沢山ある


強くなったニコ達のおかげで 食べることが出来るようになった


しかし 食べれない子供達は多い


ラノフの孤児院に全てを受け入れることなど出来ない


選らばなくてはならないのだ


全員を助けることなど出来ない


受け入れることの出来ない子供達のために炊き出しをしているが


量には限界がある


ニコ達に無理をさせるわけにはいかない


魔物退治は命がけ 絶対に無理はさせてはいけないと 厳しく言われている


ニコ達も倒していい魔物の場所と種類と数が決められている


選ばなければならない


・・・


いい物をあげるわ


これは


サイコロって言うのよ 18面体のサイコロ それは絶対に振ってはいけないサイコロなのよ


えっ


1面だけ赤く 17面は白いサイコロ


ニコ達に無理をさせるということは そのサイコロを振るのと同じことなの 赤が出れば ニコ達は死ぬわよ


えっ


99%勝てる魔物と戦い続けると どうなるか分かる


えっ


1%の確率で死ぬのよ それが 今日かもしれないし 2年後かもしれない いつかは 赤が出るのよ


えっ


ニコ達に無理をさせるということは そのサイコロを振るのと同じなの 忘れてはダメよ


はい


100%勝てる戦いしかしてはダメなのよ 100%勝てると思っていても 相手は魔物 何があるのか分からない 絶対に100%勝つためには 強くならないとダメなのよ


ニコ達は強い しかし 100%勝てる戦いでなければ いつかは


・・・


通信の玉で お金のことや経営のほとんどは サブル王国の人が教えてくれる 交渉は全てサブル王国の人がやってくれる



助ける子供達を選ぶのはラノフがやらなければならない


全てを救いたいが


・・・


私は弱いのよ


強いレーズの母親が言っていた


全ての人を救うことが出来ないと


可愛い子だけを助けると


・・・


意味が少しだけ分かるようになった


なぜ 大人達は助けてくれないのか


そう思っていたが


限界があるのだと


選んでいるだ 自分の家族を守ることを


他の人を助ける余裕はない


お金持ちは沢山いるが


彼らも選んでいる


自分の幸せを


家族の幸せを


他の人を助けることが出きるかもしれないが


限界はある


家族の幸せを減らしてまで助けるのか 食べる物を減らしてまで 他の人を助けるのか


選んでいるのだ


正解は


・・・


「可愛い子だけを助けると決めているのよ」


・・・


ラノフには学ばなければならないことが沢山ある


妹を守るために 家族となった 孤児院の子供達を守るために


7歳のラノフは勉強をはじめた


強くなるために

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