第190話 選ばれなかった子供達02



「俺にも剣を 戦い方を教えてください」


ラノフはレーズの母親に頭を下げ お願いする


しかし レーズが


「私が守るのは可愛い女の子のみ」っと


レーズの母親はクスクスと笑いながら


「レーズ あなたが可愛いと思えれば 男の子を助けてもいいのよ 好きな男の子なら助けていいのよ」


「タイプじゃない」


「えっ えっ」


「お兄ちゃん」


ニコはラノフを可哀想な目で見て


「振られちゃったね」っと


「えっ えっ」


「食べ終わったら 街に行くけど 案内してくれるかな」


「うん そうだ オークを倒してそのままにしてあるんだった」


「ニコちゃん レベルが上がってアイテムボックスが大きくなってるわよ 持てる重さに斬って収納するといいわよ」


「はい 分かりました お兄ちゃん 行こう」


ニコはラノフの手を引き 倒したオークのところへ


ラノフはニコを鑑定してみた


ニコ 6歳 レベル53


「えっ」


「どうしたの お兄ちゃん」


「ニコって さっきまでレベル1だったよね」


「そうだけど」


「どうやった 何でレベルが53になっているんだ」


「レーズちゃんに上げて貰ったのよ レーズちゃんの稽古のついでにね」


「えっ あの子のレベルは低かっただろ」


「う~ん そうなんだけどね どうしてだろうね」


「いや それより レベル53なんて どうやって」


「私はレーズちゃんについて走っていただけだよ レーズちゃんが次々に魔物を倒していったんだよ 倒した魔物とお金の回収はレーズちゃんの母親がしてくれたのよ」


「次々って あの子が いや それでもレベル53なんて」


「この森の奥には強い魔物が沢山いたのよ まあ レーズちゃんにとっては 稽古で倒す弱い魔物だったみたいだけどね」


「森の奥って 聖戦士様でも厳しいって父さんが」


「う~ん レーズちゃんは私を守りながら 簡単に倒していったよ」


「まさか 本当に 第4の」


「う~ん どうかな 英雄様は16歳なんでしょ」


「そうだけど 森の奥の魔物は 聖戦士と呼ばれるレベル100の冒険者が6人以上で倒す魔物 そんな魔物が倒せる人は」


「お父さん 言ってたよね 英雄様がいるから大丈夫だって」


ラノフとレーズの父親は魔族との戦争に行ってから戻って来なかった


2人の父親だけでなく 戦争に参加した人は誰も


英雄様がいるから大丈夫だと言っていたのに


・・・


2人は無言になる


・・・


ニコはオークの解体をはじめた


「ニコ 俺にも教えてくれないか 俺も強くなりたいんだ」


「ごめんね お兄ちゃん 戦い方は教えたらダメって言われているの」


「えっ どうして」


「分からないけど 戦い方を教えるってことは責任が発生するんだって」


「俺だって強くなりたいんだ」


ニコは首を横に振った


レーズとの約束


自分だけのために強くなること 他の人に教えてはダメだと 他の人を強くしてはダメだと


レーズの母親も言っていた


まずは自分が強くなりなさいと 強くなって責任が取れるまでは人に教えてはダメだと 強さだけでなく 愛を教えないと力は意味がないのだと 力は恐ろしいものだと 意味が分かるようになるまで絶対に人に教えてはダメなんだと


ニコには意味が分からなかった



レーズは言った


「強くなっても 馬鹿だと戦争をするのよ 魔族の領土に攻め込んだり 獣族の領土に攻め込んだり」


「攻めて来たのは魔族でしょ」


「先に攻めたのは馬鹿な人なのよね ママ」


「ふっふっ どうなのかしらね 人が魔族を攻めて 魔族が人を攻めて 人が魔族を攻めて 魔族が人を攻める どっちが先なのか どっちが悪いのか」


「えっ 魔族なんでしょ 悪いのは魔族でしょ だって魔王は人の住む王都を占領しているんでしょ」


「どうかな そこは本当に人の王都なのかな」


「えっ」


「元々誰の領土なのかな 人の領土なのか 魔族の領土なのか 獣族の領土なのか 天使族の領土なのか それとも他の種族の領土なのか 知ってるの」


「えっ えっ」


「第4の英雄は 可愛い子の味方なのよ」


「可愛い人の味方なら」


「ふっふっ 人族だけのことじゃないわよ 獣族の 魔族の 天使族の あらゆる種族の可愛い子の味方なのよ」


「えっ 英雄様は人族なんでしょ」


「違うわよ 英雄様は 全ての種族の英雄なのよ」


「そんなの嘘よ」


「ふっふっ 私も英雄様が人族だって思っていたけどね でも違ったのよ 第4の英雄様には獣族との子供が 魔王との子供が 大天使との子供が それに この世界の種族でない種族との子供がいるんだって」


「えっ そんなの 嘘よ」


「ふっふっ 私もあったことないんだけどね でもね 本当のことなのよ」


英雄が人の味方ではないと


魔族は悪ではないと


ニコには意味が分からない話が続いた


・・・





ニコが収納し終わると 見ていた レーズが


「じゃあ 案内して」っと


ニコを先頭に街へ


街の門に辿り着くと


「生きていたのか あっ 冒険者様でしょか」


門の男が嬉しそうに レーズの母親に話を


「違いますよ ただの旅人です」


「そ そうですか」


冒険者だと期待していた男はがっかりと肩を落とす


強い冒険者が街にいてくれれば 魔物の肉が 素材が手に入り街が救われるのだ




「じゃあ 孤児院に案内してくれるかな」


「えっ この街にはないです」


「そうなの う~ん それじゃあ 君が ラノフ君が孤児院を作ってくれるかな」


「えっ 俺が」


「お お兄ちゃんが」




レーズの母親は大きな屋敷を買い 親のいない子供達を集めた


肉の匂いにつられて すぐに子供達は集まってきた


大人達も沢山集まっていたが


レーズの母親は大人達を無視


ニコは不思議に思い聞く


「どうして 助けてあげないの」


「私は強くないのよ 全ての人を助けることなんて出来ないの 私が助けるのは可愛い子だけって決めてるのよ」


「でも レーズちゃんも レーズちゃんのママも強いのに」


「ふっふっ あの大人達は ニコやラノフより強いのよ お金も持っているのよ 助けてくれたの」


「えっ うんん」


「助けてあげたくても 限界はあるのよ 選ばなくてはいけないの 分かるかな」


「分からない」


「ふっふっ そうね 難しいわね ニコちゃんは お兄ちゃんと知らない人が困っていて どっちか1人しか助けられない時はどっちを助けるの」


「お兄ちゃん」


「どうして」


「えっ だって お兄ちゃんだから」


「そうよね 私もそうなのよ 全員を助けられないの」


「でも 皆困っているのに」


ラノフが「ニコ 知っているか この街には食べ物がある なのに俺達にはくれない」


「えっ どうして」


「選ばれているんだよ 貴族やお金持ちが飢えているなんて聞いたことないんだ その子供達は痩せてないだろ」


「うん」


「俺達みたいに 草を食べている大人は少ないだろ どうしてだか分かるか」


「えっ」


「他の物を食べているからだよ」


「えっ」


ラノフは知っていた 冒険者が減ったと言っても 兵士達が減ったと言っても いなくなったわけではない 魔物を倒せる人は少なくなったが いなくなったわけではない


食べる量が減ってしまっているだろうが 街のほとんどの人達は魔物の肉を食べれているのだ 貴族達は街で飼っている動物の肉を食べているのだ


親のいない子供達に分ける余裕はないが




「どうする ラノフ君」


「うん やってみる」


「ふっふっ 選ぶことができるかな」


「分からないけど 出来るか分からないけど 意味は分かる」


「お兄ちゃん」


「俺がニコを守る」


「お兄ちゃん」


レーズ「魔物はニコが倒すんでしょ」


「ふっふっ 魔物を倒せるだけじゃだめなのよ」




レーズの母親は可愛い女の子だけに戦い方を教えた


魔物の解体の方法も 素材の利用方法も


レーズの母親は 昔 冒険者ギルドで働いていたそうだ 凄く強いが 毎日 稽古をしているそうだ 強さの秘密は可愛い女の子だけに教え 誰にも教えてはダメだと約束を


沢山の大人達が寄ってきたが 孤児院の運営に大人が必要だと言ってきたが


全てを断りラノフに任せると


自分達のためだけに頑張りなさいと


余った肉をギルドで売ることで 余った素材を売ることで 素材から何かを作ることで 街を救うことになっているのだと


自分の力以上のことはしなくていいのだと


それは大人がすべきことなのだと




孤児院の看板には 第4の英雄の孤児院と そして サブル王国と書かれていた


ラノフには文字が読めなかったが


レーズの母親から渡された通信の玉は サブル王国との通信の玉だった


何かあった時はサブル王国が責任を持つと書かれた看板


領主の手の出せない国の名前 そして 恐ろしい言葉が書かれている 第4の英雄と書かれている孤児院


理不尽な英雄と言われる第4の英雄


怒らせば国を簡単に滅ぼしてしまう英雄


いなくなったとの噂があるが


最近 現れたとの噂もある





「何が第4の英雄だ 噂は噂だ」


この街の領主の護衛をしている男が孤児院にやって来た


倒した魔物の半分をよこせと


そして レーズの母親に剣を向けて 俺の女になれと


レーズの母親は くすくすと笑いながら


「強くなっても こんな人になってはダメですよ」っと


「貴様~」っと男が叫んだ瞬間に


男は 真っ二つに


レーズが剣を抜いていた


何が起きたのか 周りにいた人達には見えなかったが


ラノフ達 子供には分かっていた


すぐに領主の護衛達が沢山集まってきたが


レーズの母親は顔色を変えることはなく普段通り


「貴様 何をした」


「ふっふっ 記録の玉がありますから見ますか 襲われたのですよ」


「なっ そんな玉など」


「ママ この人達も斬っていいの」


「いいわよ」


「なっ 待て 俺は領主だぞ」


「それが何か」


「貴様は冒険者なんだろ」


「違いますよ 私は旅人です ほら これを」


「なっ これは サブル王国の」


サブル王国の視察官と書かれているプレートが


「サリアに連絡してもいいわよ」


「サリアだと サブル王国の」


「貴様は 何者なんだ」


「ふっふっ レーズ 何者だって」


レーズは 大きな声で


「私は第4の英雄だよ」っと

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