第157話 英雄が消えた



知らない国へ 知らない場所へ


俺達はのんびり旅をする


俺達のレベルは低く 名前も知られていないので 盗賊に襲われたり ヘンな貴族に襲われたりもするが


可愛い ちゃちゃ ばにら ちょこ あおい あかり と楽しい旅が続く


楽しい 楽しい 旅が続く










小さな村に立ち寄った時にドラゴンの話を聞く


村の北にある山に恐ろしいドラゴンが住むと


ギルドで話を聞くと 指名手配魔物で洞窟の中に住んでいるそうだ


あかりが行きたいみたいなジェスチャーをしてきたので 見に行くことに


・・・


ただの観光のつもりで


・・・






洞窟はすぐに見つけることが出来たのだが


・・・





また あの声が


{逃げて}


幻影の指輪からの声 ということは あの時の


ちゃちゃが奥の方を指差す


そこには やはり いた あの時の弓使いが


ここで倒しておかなければ


俺は幻影の俺を5体と幻影の炎の玉を10個出し 炎の玉に紛れて 男に向かう


{ダメ 逃げなさい}


いや 大丈夫


俺は炎の玉に紛れて 男の横に


んっ なぜ


男の構えている弓の矢の先端が俺の方に向いている


動いても 動いても 俺の方に


居場所がばれているのか


{逃げなさい}


あおいとあかりに任せた方がよかったのか いや 倒す


俺はアイテムボックスから取り出した 霊魂力で強化した石を全力で男に投げる



男は弓で矢を構えたままの体勢で石をかわす


そして 矢を


まっすぐに放たれた1本の矢


これくらいなら問題ない


巨大盾


なっ


矢が巨大盾を貫通して 俺に 俺の心臓めがけて飛んでくる


大丈夫 これくらい避けれる


しかし 矢は 俺の体に 胸の 心臓の位置に


避けたのに なぜ


・・・


そうか 魔法で軌道を


・・・


俺は衝撃で倒れる




すぐに あおいが俺の側に


あかりは男に向かって石を投げつけていく



男は全てをかわす


そのとき


物凄い跳躍で男に飛びかかり 剣のような鋭い爪で首を


「しゅぱっ」


ちゃちゃが男の首を剣のような爪で飛ばす



あおいは微笑みながら俺にキスを


ばにらは微笑みながら俺にキスを


ちょこは微笑みながら俺にキスを


あかりは微笑みながら俺にキスを


そして


ちゃちゃは微笑みながら俺にキスを





なんだろう この感じは


前にも あったような


・・・


・・・



>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


「服を脱げ」


「いや」


「さっさとしろ」


「やめてください」


後ずさりながら 何度も拒否を


こわい こわい


男が 師匠? が裸になり 俺の服を脱がそうとしてくる


(まさか師匠はそっちの人なのか いや 師匠とは顔が違う 雰囲気は似ているけど あれっ これって 修行の時の いや 違うのか)


「ロキ様 俺は差別はしませんし 理解は出来ますが ごめんなさい」


「一度くらい 構わないだろ 愛しているんだよ さっさと脱げ」


「それ以上近づくと 父に訴えますよ」


(誰だ ロキ って)


俺は走って逃げる


「なぜ 俺を拒む 俺が男だからか 男が男を愛してもいいだろう」


(愛する者同士なら性別は関係ないだろうが 俺は女が好きだ)


「俺を拒むなら殺す 絶対に逃がさない」


怖い 怖い


俺は走って逃げ 母親の元に


母親は優しく俺を抱きしめてくれる


(この声は)


・・・


母親は自分の魂の一部を使い 俺に指輪を作ってくれた いかなる武器での攻撃も 魔法での攻撃も傷つけられることのない指輪を 幻影を出し全ての攻撃を避けることが出来る無敵の指輪を


・・・


この指輪のおかげで ロキが雇った盗賊達の襲撃を返り討ちにすることが出来た しかし ロキが主犯だとの証拠は見つけることが出来なかった 


・・・


指輪のおかげで最強になった俺を披露するための宴が始まる


俺はあらゆる攻撃も 魔法も避けていく


(凄い これが幻影の指輪の本来の力なのか 体も見えなくなっている 光に包む必要もないのか 幻影の体は全ての攻撃を避けていく)


・・・


(なっ あの男は なぜ あの男がここに 弓使いが)


攻撃をしてくる男達の目線は幻影の俺に向いているが 弓使いの矢は見えなくなっているはずの俺の本体を向いている


そして 矢が放たれた


矢はまっすぐに俺の方に 俺の心臓めがげて飛んでくる


(くっ 避けれないのか)


矢は俺の心臓に


・・・


俺が倒れると


悲鳴が しかし 1人だけ笑っている男が ロキという男だけが笑っていた


1人の女が叫びながら弓使いの首を飛ばす


(あれっ ちゃちゃ いや 違うのか)


ロキは捕らえられたが 倒れている俺に向かって叫ぶ「貴様が悪いのだ 俺を拒むから 俺は貴様を愛していたのに 貴様が悪いのだ」何度も繰り返し叫ぶ


俺に放たれたのは やどりぎで出来た矢だった


・・・


幻影の指輪が効かなかったのは あの男が 俺の弟が盲目の弓使いだったから ロキに騙され 俺を


・・・


ロキは永遠に幽閉されることになったのだが ロキは魂を2つに分け 邪悪な魂を異世界へと転生させた


・・・




この世界と邪神の世界との戦いの始まりは


ただの失恋だった 2つの失恋から 始まった


ロキが俺を愛した


弟もただ騙されただけではなかった 弟が愛した女性は俺と結ばれていた 


たった2つの失恋から2つの世界を巻き込む長い長い戦争が始まったのだった


・・・







>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>






俺の横には 1本の矢が落ちていた


鎧を着ていたから助かったのか あれっ そう言えば昔も・・・


俺は死んでは・・・


あれっ 夢か 何か夢を見ていたような


昔の


・・・


微笑む ちゃちゃとキスを


微笑む ばにらとキスを


微笑む ちょことキスを


微笑む あおいとキスを


微笑む あかりとキスを


・・・


え~と 何していたんだったっけ


そうか ドラゴン退治に来ていたんだった




俺は起き上がり 皆と洞窟の中を進んでいく


それにしても 魔物が一匹もいない


ドラゴンの縄張りなのだろうか


人も魔物も入ってこない洞窟なのか



げっ あれは ダメだ


「ちゃちゃ ばにら ちょこ あおい あかり 撤退だ 逃げるぞ あれは勝てない」


今なら逃げれるはずだ


しかし


あかりがクスリっと笑い 恐ろしいドラゴンに向かって走る


ダメだ 勝てない


俺は走ってあかりを追うが 速さが違いすぎる 間に合わない


「あかり 逃げろ 逃げるんだ」


あかりは ばんっと地面を蹴り 恐ろしいドラゴンに向かってキックを




えっ


恐ろしいドラゴンが吹き飛び


壁にめり込む


そして


お金を出した


・・・


あれっ




あかり って こんなに強かったのか




あかりは振り返り 微笑む


俺は自然と呟いていた「ソア様」


最強の戦神 赤髪の戦神ソア


・・・




ソアって誰だったっけ あかりはあかりだよね




俺はあかりを抱きしめる


「無理はダメだぞ 心配したんだからな」


あかりはコクリと頷き 俺をぎゅっと抱きしめてきた



おそろしいドラゴンの死体を手で持てる大きさに切り分けて アイテムボックスに収納した




ふぅ~ あかりがこんなに強いとは だとすると あおいも


ちゃちゃ ばにら ちょこも強くなってるのかな


俺もそろそろ強くなった方がいいのか


そろそろ本格的にレベル上げを始めてもいいのかも知れないな


・・・


今日で俺も15歳になったし


この世界に来て 5年か


長いようで 短い 短いようで 長い


楽しい 楽しい日々


これからも ずっと 続いていく楽しい日々




俺がぼーっと考えていたら


ちょこが後ろから抱きついてきた


いつものように じゃれて


俺はふらつき 前に


げっ


魔法陣


これは罠


ふらついて 罠の魔法陣に乗ってしまう


・・・





初級の罠と言われている罠の上に 直径1メートルの小さな魔法陣 外から引っ張ったり 押したり 魔法陣を剣等で傷をつければ解除出来る初級の罠の上に


・・・






時間停止の罠の上に


・・・







魔物から攻撃されても解除される 簡単に解除出来る罠の上に


・・・







仲間が入れば問題ない初級の罠


・・・







時間が過ぎていく


・・・


1分


・・・


10分


・・・


1時間


・・・


2時間


・・・


3時間


・・・


5時間 ・・・ 10時間 ・・・ 15時間 ・・・ 1日 ・・・ 2日 ・・・ 3日 ・・・ 5日 ・・・ 10日 ・・・ 


・・・
















>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>






間抜けな男が初級の罠の上に


黒髪の女が嬉しそうに男に抱きつく


白髪の女も嬉しそうに男に抱きつく


茶髪の女も嬉しそうに男に抱きつく


・・・


青髪の女がくすくすと笑い魔法陣の中に


そして


微笑みながら男にぎゅっと抱きつき 魔法防御を解いて罠にかかる


天使や魔族は魔法防御が高いので初級の魔法系の罠は効かないのだが自ら魔法防御を


何のために


・・・


赤髪の女性も男にぎゅっと抱きつき 魔法防御を解いて罠にかかる


・・・


なぜ


ただ 抱きつきたかったから


・・・


なのか


・・・


小さな初級の罠に6人が


・・・




誰も入って来ない洞窟の中


・・・


人も魔物も入って来ない洞窟の中


・・・


間抜けな男と笑顔の5人の女が罠に


・・・


洞窟に吹く風の音


・・・


雫の音


・・・













アブソート教団と揉めていた賢者は消息不明に


勇者は27の国の兵を率いて 魔族の領土に攻め込み消息不明に


・・・


そして 第4の英雄も消息が途絶えてしまった


・・・





人族の王達は喜んだと言われている 


第4の英雄のことが恐ろしかったのだ


それに3人の英雄がいなくなっても あと1人 英雄がいるのだから


ある戦いで敗れて4人の仲間を失ってから 厳しい修行の日々を送り 強くなっていく英雄が


聖騎士 ハルト 人々を救うために行動する素晴らしい英雄


世界は平和だった


平和な世界には 我がままで強いだけの英雄などいらないのだ


・・・





しかし


魔族が攻め込んで来た


27人の魔王と共に


魔族の領土に攻め込んだ27の人族の国に報復するために


サブル王国を除く45の人族の国は力を合わせて魔族と戦った


サブル王国以外にいる冒険者達は全員強制依頼で参戦した


もちろん


聖騎士 ハルトも参戦


ハルトは仲間5人と共に 1人の魔王と戦う


6対1で


ハルトは強くなっていた



魔王とは才能のある1%未満の魔族だけがなることが出来る種族 才能のある魔族がレベル200以上になって覚醒した上位種族


・・・


ハルトは善戦したが


・・・


仲間達は次々に


・・・


そして 剣聖エリアスに魔王の戦棍が


ハルトはエリアスの前に素早く移動し


左手の盾で


・・・


戦棍が振り下ろされた時には


・・・


ハルトの左手はなくなっていた


・・・


エリアスはハルトを抱えて 走ってその場を後に


全力で逃げる



魔王が放った巨大な炎が エリアスとハルトの上空で爆発した


・・・









27人の魔王が27の人族の国の王都を支配する


しかし 27の国の1つ ブレンダル王国は既に滅んでいた


ブレンダル王国の王都に向かった魔王は別の国に


代わりに 他の国を適当に選ぶ 北の国 リベルテ王国を


・・・




冒険者達のほとんどがいなくなってしまった


45の国の兵士達も激減してしまった


・・・


食料も資源も ほぼ全てを魔物に頼っているこの世界


魔物を倒す者がいなくなり 人々の生活は困窮する


・・・


4人の英雄はいなくなってしまった


人々の希望 平和の象徴である英雄達がいなくなってしまった


・・・





誰かが言った


第4の英雄がいれば魔王に負けないのに っと


・・・


王達も第4の英雄なら魔王に勝てるのでは っと


・・・


しかし


英雄達は誰もいなくなってしまった


・・・





誰かが言った


絶望の時代が始まったと


世界の終わりが始まったと


・・・










【1章 完】

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