第5話 最強の魔法使い
俺はクレールの街を目指した カウナの街からだと北東にあるが 最短の道には盗賊が出るとニャムが教えてくれたので迂回ルートの北の道から目指すことにした 倒せると思うが人を殺すのは極力避けたい 向かってくれば別だが
迂回ルートは安全なようで護衛なしの商人の馬車も通っていた 旅は何事もなく順調に進み3日目の夜にクレールの街にたどり着くことが出来た 入街税1万エンを払い 街の中に すぐに宿を見て回ったが……いまいち
街を歩いていると1軒の食堂が目についた
よし ここにしよう
「君のオススメで」
「何が好きですか 肉?魚?野菜?」
「君が好きです」
「えっ 食べ物でお願いします」
「だめ」
「可愛く言ってもだめです」
「お肉料理のオススメで」
「じゃあ 私の得意料理を」
女の子は店の奥に入って行った
しばらくして
「お待たせ」
「いいにおい これは君が作ってくれたの」
「うん 私の得意料理だよ」
「美味しそうだね いただきます」
「今日はいつまで仕事なの」
「私は後2時間くらいかな」
「この街初めてなんだ よかったら オススメの宿を教えて」
「えっ 1人なの?」
「うん 王都に行ってみようと思ってね」
「王都なら安全だね ちょっと待っててね この街の簡単な地図があるから」
俺は彼女から教えてもらった宿に泊まることにした
「美味しかったよ じゃあ 待ってるからね」
「えっ」
「迎えに来たほうがいい?」
「えっ 来なくていいし 行かないからね」
「えっ どうしても」
「うん どうしても」
「もう 会えないんだ う~ん よし 待ってるからね じゃあ後で」
「えっ」
食堂の娘 リリカ 19歳 その夜 王都のことをいろいろ教えてもらうことになった
翌朝 宿の前でリリカと別れ ギルドに向かった ギルドに入ると人が多く慌ただしい
なんでこんなに混雑してるのかな?
壁際にいた初心者の冒険者ぽい男に聞いてみると街の外に魔物の群が出たらしく 冒険者は強制依頼を受けているらしい 魔物の強さから判断して 中級者以上の冒険者が対象だと 俺は初級なので大丈夫なようだ 現在 この街にいて集められた冒険者は C級が6人 D級が18人 E級が23人
魔物の襲撃等 街の警備兵だけでは無理だと判断された場合 ギルドは冒険者に強制依頼を出す 冒険者は断ることが出来ないが討伐報酬は出る ギルドは冒険者のランク以下の魔物の討伐依頼しか出せない
F級(初級)レベル10以上 オーク等
E級(中級)レベル15以上 狼の魔物等
D級(上級)レベル30以上 大狼の魔物等
C級(鋼の戦士)レベル50以上 大蟷螂の魔物等
B級(白銀の戦士)レベル75以上 虎の魔物等
A級(聖戦士)レベル100以上
ランクはレベルだけで判断されている ギルドの特別依頼や強制依頼を受けるとギルドポイントを貯めることが出来る 初期は木で出来たギルドカード ポイントが増えると銅→銀→金となる これは冒険者の信用度を表す
俺は他の依頼が出来そうにないので この街を出て王都に向かうことにした しかし門に行くと閉鎖されていて 魔物討伐が終わるまでは討伐に参加する者しか出ることが出来ないと言われた
う~ん 行くとこも することもないけど…どうしよう
街の繁華街を歩いてみたが どの店も閉まっていた 街に魔物が入って来るかもしれないかららしいが…… 暇すぎる ギルドに行こうか……そうだ
俺はリリカのいる食堂で時間を潰すことにした 店に入ってもリリカは出て来なかったが 朝食を頼んだ 食べ終わってからは飲み物を頼んで長居することにした ぼーっとしていると 中からリリカが出て来て俺の横に座って話し相手になってくれた 調理と洗い物が終わって昼まで休憩だそうだ 魔物の群が街の近くまで来るのはよくあることみたいでリリカは落ち着いていた
外が急に騒がしくなる 悲鳴や叫び声も聞こえてくる 俺とリリカは様子を確認するために外に出てみたが 人ごみで前が見えない リリカは人ごみをかき分けて前に進んでいく 俺もその後に続いたが……リリカが勢いをつけすぎて前に飛び出した
そこに魔物が 虎の魔物が飛び込んできた
リリカは恐怖で悲鳴をあげながら座り込んでしまった 人々は叫びながら蜘蛛の子を散らしたようにその場を逃げ出している 数人の冒険者がすぐに駆けつけて来たが 顔を見ると怯えているように見える 1人の冒険者が叫んだ
「この魔物はB級だ 倒せる冒険者がこの街にはいない 皆 逃げるんだ」
えっ そうなの?
魔物は周りにいる冒険者を警戒していたが 一番前に出てしまっているリリカに目線を向けた このままではやばいかな…… 仕方ない 俺はアイテムボックスから取り出した石を虎の魔物に投げつけた すると虎の魔物が叫びながら俺にターゲットを変えた
「リリカ すぐに立って逃げろ 注意は俺が引く」
「立てないよ 先に逃げて」
腰を抜かして立てないようだ 仕方ないか 俺は更に前に出て叫んだ
「俺がリリカを守る 愛するリリカのために俺は戦う」
虎の魔物は俺だけを警戒している
「リリカ ゆっくりと後ろに歩いて行くんだ 出来るね」
「うん でも一緒に」
「心配いらないよ 俺は強い」
リリカは冒険者に手を引かれて離れて行った 虎の魔物は俺に目線を合わせているが周りにいる冒険者達にも警戒しているのか まだ動かない 冒険者達も勝てないまでも 街の住民が逃げるまで足止めするつもりらしい 強い冒険者が来る気配がない
仕方ない 俺が倒すか 人前で戦いたくないが…
俺は叫んだ
「魔那よ 俺に力を 飛翔」
俺は虎の魔物の5メートル上までジャンプした
「滅びよ 氷龍怒弩牙」
俺の体から光りが溢れ そして光りの中から氷龍が現れる 氷龍は大きな口を開けたまま 真下の虎の魔物に向かっていく 氷龍が虎の魔物を飲み込み地面に吸い込まれていった 氷龍が地面に消えた時 虎の魔物は飲み込まれておらず その場にいたが……2本の大きな氷の牙が突き刺さっていて……倒れて お金が出てきた
見ていた人達は何が起きたのか戸惑いながら状況を確認している
俺は片膝をついて……そして倒れた
虎の魔物の足止めに来ていたギルド職員が俺に近寄り俺の様子を確認している すぐに他のギルドの職員に測定の玉と魔力ポーションをギルドから取ってくるように指示している
測定の玉とは 体力と魔力の残量値が残り何%なのかが分かる玉
魔力ポーションとは魔力が回復する高級ポーション
ギルド職員は俺に測定の玉を使った やはり魔力枯渇のようだと 体力100% 魔力が0%だと 話している 魔法をどんなに使っても普通は無意識にセーブして10%を切ることがないのだ 戦士なら魔力が0%になっても大丈夫なのだが 魔法使いの場合はとても危険なのだ 魔法使いは体を動かすのも魔力を使っていると言われている 魔力が尽きると言うことは体力が0になることに近い現象なのだ もちろん体力があるので死ぬことはないのだが 意識が戻らなくなる可能性があるのだ
ギルド職員が俺に魔力ポーションを飲ませようとしてきた
さすがにそろそろ起きたほうがいいかな……
「リリカの口移しで」
俺がはっきりとした口調で言うと 俺の無事がわかり 歓喜の声が鳴り響いた 命をかけて大魔法を使って街を救った少年に向けて拍手と賞賛の声が鳴り響く そしてギルド職員が話しかけてきた
「意識があるので大丈夫だと思うが この魔力ポーションを飲むように 今夜はこちらで宿をとるので ゆっくりと休んでくれ 体調が戻れば明日にでもギルドに討伐報酬と魔物の買取のお金を取りに来てくれ」
俺はリリカに支えられて立ち上がり 周りに集まった人達に手を振った すると再び賞賛の声と拍手が鳴り響いた 俺はリリカと一緒にギルドが手配してくれた宿で休むことになった リリカの両親も俺の看病に付き添っていいといってくれたようだ
朝までか……時間も体力も有り余っているけど……
翌朝 街を救った俺の姿を一目見ようと集まっていた人達は 宿から出てきた疲れている俺とリリカを見て 労いの言葉 そして街を救ってくれたと賞賛の声がまた鳴り響いた 寝ずに看病していたと思われたリリカにも労いの声が……リリカは顔を赤くして 下を向いたまま走って食堂のほうへ消えていった
俺は手を振りながらゆっくりと歩きギルドに向かった ギルドでお金を受け取り 俺がすぐに王都に向かうと言うと馬車に乗って行けるように手配してくれた 俺は馬車で王都まで行くことになった
……
リリカは両親に今日は休んでいいと言われベットに入った そして昨日のことを……今朝までのことを思い出していた……
「ねぇ 本当に大丈夫なの?魔力が0%って大変なことなんでしょ」
「んっ ああ 大丈夫だよ この通り元気だよ そうだねぇ~ 1戦することに1つ教えてあげるよ」
「もう 心配してたんだからね」
「話の続き」
「そうだったね 俺は元々魔力が0なんだよ だから いつ測定しても0%なんだ」
「でも 魔法で空を飛んでいたし 氷の凄い龍の魔法だって」
「俺はね ジャンプ力が元々凄いんだよ 鍛えてるからね 虎の魔物を倒したのは 俺がアイテムボックスから取り出して真上から落とした2本の大きな氷柱だよ」
「えっ えっ でもあれは 氷の龍は魔法だよね」
「知りたいなら」
「もう 本当に疲れてないのね」
「続き」
「そうだね 氷の龍は指輪の力なんだ 幻影の指輪といって イメージしたものを何でも作り出すことの出来る指輪なんだ」
「凄い 何でも それなら魔法と同じ いや 魔力を使わないで……無限に放てるの」
「無限に放てるよ でも幻影だからダメージは与えられないけどね びっくりさせることができるんだよ」
「えっ それだけなの」
「凄いことなんだよ びっくりさせて足止め出来るし 幻影に合わせて 攻撃するば 魔法に見せることも出来るからね」
「そうね 確かに魔物に刺さった2本の大きな氷柱は魔法で作り出した氷の龍の牙だって皆信じてたもんね 落とすしか攻撃方法はないの?」
「リリカも元気だね」
「えっ あっ」
「で どうなの」
「え~と 俺は装備がほとんど出来ないんだよ だから 木で作られた強力な木の杖だけを使っているんだ この木の杖は凄いんだけどね 普段は石や岩をアイテムボックスから取り出して 投げて攻撃しているよ」
「えっ それだと 攻撃力弱いよね」
「そんなことないよ 石投げの威力は凄いんだよ 中距離なら手のひらサイズの石を投げて 近距離なら大きな岩だって投げられる 遠距離ならこれも使えるんだ」
「紐?」
「投石紐って言うんだよ 遠心力を使って 速く遠くまで飛ばすことが出来るんだ 力は早さ そして重さで決まるからね」
「う~ん 凄そうだけど 武器が全く使えないなんて」
「使えるよ 知りたいなら ねぇ」
「まだするの もう」
朝までいろいろ聞いたけど……どんだけ元気なのよ……私もわかっていて聞いてたんだけど……
……武器だったね この杖 朱殷の杖って言うんだ 呪いの力で血を吸って硬く重くなる凄い杖 今は魔物の血を吸って100キロ以上になっているよ これで殴れば凄い攻撃力なんだよ 俺の力がつけば更に血を吸わせて重く出来るしね……人間の体は鍛えても死ぬまで衰えないんだよ そうだね この世界ではね だから筋トレでもランニングでも鍛えれば鍛えるだけ強くなっていくんだよ レベルが上がった時と比べて微々たるものだけどね 気づかないくらい少しだけどね……リリカも好きだねぇ~……アイテムボックスに収納するためには手に持つ必要があるんだよ つまり力を鍛えれば重く大きなものを収納出来るようになるんだ……俺の師匠はね……着ている高級なローブやマント等も幻影の指輪で……師匠は先輩でも…………
朝までずっと……最後のほうの話はほとんど覚えてないわね……たしか……一番凄い指輪は認識阻害の指輪だとか この世界で安全に生きることの出来る指輪だとか言ってたような……眠い……また会えるよね……
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