第5話
横断歩道を渡った先の商店街はアーケードになっているので傘はいらない。
ぼくは何を買うわけでもなく濡れた上着を乾かすために歩いた。新しい傘を買うつもりもなかったから、あまり意味がないということはわかっていたが。
ウィンドブレーカーの撥水加工のおかげで下に着ているシャツはほとんど濡れていなかったが、髪がしっとりとして肌にくっつくのはあまり心地の良いものではなかった。
都会とは世辞でも言えぬ土地から引っ越してきた。
あの町は雑木林や空き地が残る第一次産業を主な職業としている人間の多い町だった。家屋の他にあるのは畑ぐらいのもので、季節の移ろいは露地栽培の野菜の花でわかった。
ぼくはそうして生活をしていたから大概の野菜や果物の旬の時季を言えるが、年中問わずどの野菜も見かけるこの街の人々は正しく答えられないのではなかろうか。
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