第82話 巨大ロボット時代の芽生え

 「も~♪ つよつよな龍海さんも最高でしたね♪」

 時は進みホワイトデーが近づく三月、激しく愛し合ったバレンタインデーの後から龍海に対するアイリーンのデレは更に度数が上がっていた。

 

 ある日の昼休み、力華学園の中庭では龍海とアイリーンがいちゃついていた

 「……やり過ぎたのかな俺」

 バレンタインから正気に戻った龍海は、赤面していた。

 「おや、龍海さんがピュアなシャイボーイに戻ってますね♪」

 「何だよ、ピュアなシャイボーイって?」

 「うふふ♪ 攻めモードの龍海さんも素敵ですが、いつもの龍海さんには実家のような安心感で満たされます♪」

 アイリーンも酔っているのかという位、頬を紅潮させて龍海に寄りかかる。


 「幸せの青い鳥ならぬ青い龍、私の幸せはここにあるという安心感です♪」

 「いや、何言ってるのかわからないから!」

 すっかり頭の中が春になって龍海に抱き着いて来たアイリーンに対して、彼女は俺が守らねばと思う龍海。


 「私達の人生は薔薇色ですよ龍海さん♪」

 「否定はしないけれどアイリーン、アホな子になってないか?」

 「龍海さんのせいです、責任取って下さい♪」

 「いや、結婚して絶賛取ってる最中だよ!」

 「どんどん責任を積んで行きましょう、塔が立つ位に」

 「うん、がんばるよ財団Uや他のヴィラン達との戦いもあるし」

 自分がヒーローであるという事で正気を保とうとする龍海。

 学校も三学期が終わりかけており四月からは二人は高校三年生だ。


 「そう言えば、帝国と自衛隊のロボット開発の件はどうなったんです?」

 「ああ、台湾のひい祖父ちゃんや米軍にバレて停滞してる」

 「ひいお爺様、商売の事に鼻が利きますからね」

 「父さんは無かった事にしたいみたいだけど、周りが乗る気」

 「ヒーローと巨大ロボが力を合わせるのはロマンですよね!」

 「アイリーン、何と言うか本当にロボ好きだよね?」

 「龍海さんもお好きですよね? え、ロボよりも私の方が好き♪」

 自分で話を振りつつ一人ボケツッコミをするアイリーン。


 世間では、龍海達が関わった御殿場事変から航空主兵論ならぬ巨大ロボット主兵論が出始めていた。

 龍海がスマホを懐から取り出して見るとニュースが上がっていた。

 

 都立国防高専が非ニュータントである、ヒューマン・ヒーローが使うパワードスーツの技術を土台に試作機を開発して行くらしい。

 「国防高専、動きが早いですね」

 「バックに自衛隊が付いているからな、実験場みたいな所だし」

 ヒーロー甲子園で国防高専と試合をした時を思い出す龍海。

 「私も出たかったですね、ヒーロー甲子園」

 アイリーンが膨れる。

 「事件で出られなかったからな」

 龍海はアイリーンをなだめる。

 

 そんな事を話しつつ話題が変わる。

 「私も、龍海さんとタンデムシートで巨大ロボットを操縦してみたいです♪」

 「ああ、アニメやゲームでよくある奴な」

 ゲーム世界に閉じ込められた時を思い返して、シチュエーションは有りだなと思う

龍海。

 「龍海さんも、パイロットスーツ姿の私などいかがでしょうか?」

 「ああ、魅力的だねいつかは見てみたい」

 妻の言葉を肯定する龍海、そんな龍海のスマホに着信が来る。

 連絡して来たのは、黄・華王。

 「はい、龍海です? どうしたの?」

 仕方なく出る龍海。

 「へ~イ、元気か龍海♪ お祖父ちゃん、スーパーロボット試作する予定だから乗らないか♪」

 「プラモ作る感覚で電話して来るなよ!」

 「素晴らしいです♪ 是非、乗せて下さい♪」

 アイリーンが会話に入り込む。

 「お♪ 流石アイリーン、良いよ♪」

 了承する華王、アイリーンが動くなら龍海も動くと踏んでの承諾だ。

 「いや、大丈夫なの?」

 不安になる龍海。

 「大丈夫、全部合法♪ 一緒に、正義のスーパーロボットを作ろうぜ♪」

 電話の向こうでウザイウィンクをする華王。

 

 「龍海さん、このビッグウエーブは乗りましょう♪」

 「そうだぜ♪ 春の新生活はロボットで♪ 日本支社には通達しておくから♪」

 龍海が答える前に連絡を切る華王と、やる気を出すアイリーン。

 「仕方ない、受けて見るか」

 身内の頼みと愛するアイリーンを守る為、曽祖父の話に乗る事を決めた龍海。

 「龍海さん、私のパイロットスーツ姿見て下さいね♪」

 龍海の心配をよそにアイリーンは笑顔だった。


 「お爺様ったら仕方ないわね、我が校のスポンサーでもあるし逆らえないわね」

 母であり力華学園の理事長であるリーファが、赤子を抱きながら画面の向こうでため息をつく。

 魔界でリモートワークをしつつ彼女は育児に励んでいた。

 「力華学園にも、ロボットのパイロットやメカニックなどの育成課程を実施するようにってお爺様からおねだりが来たのよ? お金も人も権限も出すからって!」

 「素晴らしい事ですね、お金も人も権限も出さない所よりは」

 「身内相手でもしっかりするのは尊敬するよ」

 やる事はべらぼうだが、筋は通そうとする華王を褒める龍海達。


 「というわけで、特別授業扱いで許可は出すから二人はお願いね♪」

 リーファが許可を出したので、龍海達は正式に百華龍の運営する兵器産業の日本支社へ行く事が決まった。

 

 こうして、ヒーロー科を有する学校でもロボットのパイロット育成が行なわれる風潮が出来て来た。

 

 身体能力の高いニュータントの学生の精力善用や、ヒーロー以外での活躍の幅を広げる効果を期待して教育業界は巨大ロボットと言うまだ海の物とも山の物とも付かぬ存在を受け入れて行く。

 

 後にヒーロー甲子園と並ぶイベント、ロボットファイト甲子園がヴィラン対策室の主催により開催される事となるが力華学園がヒーロー甲子園だけでなくロボットファイト甲子園の強豪校として名を馳せる一因を龍海達が開発に関わった機体が担う事を二人はまだ知らない。



 


 


 

 

 

 

 


 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

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