第81話 龍海の全力バレンタイン
二月十四日、世間ではバレンタインデーで恋人達が会いを交わし合う日である。
「これまで、バレンタインはヴィランと戦ったりしたが今年は違う!」
学生服姿で龍海は今年こそは、アイリーンとめちゃくちゃ積極的に自分から愛し合おうと考えていた。
「龍海さん、バレンタインデーのお祭り楽しみですね♪」
女子の学生服姿のアイリーンが龍海の隣で彼の腕に抱き付く。
「……ああ、楽しみにしていてくれ!」
「……ど、どうしたんですか! 何やら龍海さんが主人公っぽいです!」
「いや、主人公だよ! そしてヒロインはお前だ!」
「龍海さん、何だか心臓の鼓動がバクバクしてますよ?」
龍海の胸に手を当てたアイリーンがたじろぐ。
「大丈夫、最高のバレンタインにしよう♪」
「た、龍海さんが私に本気になってくれてます♪」
アイリーンの頬が赤く染まり、目がハートマークになる。
龍海は唇に指を当てて口笛を吹く、するとその音に応えて地面に黒い闇の魔法陣が
描かれる。
そして、陣の中心から山羊角を生やした黒馬の怪物バイコーンに引かれたオレンジ色のカボチャの馬車が現れた。
「龍海さん? 馬車で学校に行くんですか?」
「違う、学校行事は悪いがサボって二人きりになろう」
アイリーンをお姫様抱っこする龍海、アイリーンは抵抗しない。
馬車のドアが開いたので龍海とアイリーンは馬車に乗り込んだ。
そして馬車は天を駆け上がり、大使館近くの山へと降り立った。
馬車から降りた龍海とアイリーン、降り立った場所は山の頂上の花畑。
二月だというのにピンクにオレンジにと色とりどりの花が咲き誇っていた。
「……凄いロマンチックな場所ですね、近くにこんな所があったなんて♪」
「アイリーンと一緒にここに来たかったんだ、父さんもデートした場所だから」
「ここの所、お義父様としていた内緒話はこの事だったんですね♪」
草地になっている場所に二人は座る。
「ああ、父さんから教わった時ここは連れて行かなきゃと思えるほど花が綺麗だったのと好きな女の子と花畑で過ごしたいって子供の頃から思っていた」
自分の想いを語る龍海。
「龍海さん、意外と乙女チックな所があるんですね」
「母さんとメイママが、二人して俺に昔の少女漫画とか読ませたんだよ」
「お義母様達の教育は素晴らしいですね♪」
アイリーンが龍海に微笑む、その笑顔は春の陽だまりのように暖かくかけがえのない物のように龍海は感じられた。
「その笑顔が見れたのは、俺にとってまずは成功かな」
龍海はアイリーンの笑顔に照れた。
「もう、自分から誘っておいて照れないで下さい」
アイリーンがむくれる。
「いや、お前の世界一愛らしい笑顔に照れないなんて無理だよ!」
龍海が顔を真っ赤にする。
「た、龍海さんの卑怯者! シャイボーイ! こんな場所でそんな事を言われたら私も恥ずかしくなっちゃうじゃないですか!」
アイリーンも顔を真っ赤に染めて自分を棚上げして叫ぶ。
互いに顔を真っ赤にして硬直する二人。
先に動いたのは龍海、頑張ると決めた意地を見せようとする。
「ここからまた、気分を新たに付き合って行こう」
「む~! 龍海さんはやっぱり卑怯です」
「それでもお前が好きだ、愛してる」
瞳を閉じてアイリーンの首に手を回し引き寄せてキスをする龍海。
キスをされてからアイリーンも瞳を閉じて龍海を抱きしめる。
抱き合う二人はまるで絵のようにしばらくそのまま動かなかった。
そして龍海から動き出す。
「この場所、今度は春にまた二人で来よう♪」
「ええ、今度はお弁当を持ってピクニックですね♪」
「それ、父さんとフランママのデートだ♪」
「龍海さん、デートの仕方までお義父様から相続されたんですね♪」
「ああ、凄い良い財産を受け継いだよ♪」
「では、私達の子供達にも受け継がせましょう♪」
未来を語り合う二人、その言葉通りこの花畑デートは二人の子孫に代々受け継がれて行く事となる。
「アイリーン、行きたい所はこの山だけじゃないんだここは星空も綺麗だけど」
「むむ? そういう情報を出しておいてお預けは酷いですよ龍海さん」
アイリーンがジト目で龍海を睨む。
「先の楽しみだよ♪」
「そういう姑息な手は、私だから許されるんですからね?」
「いや、お前以外に使う相手はいないよ!」
「当然です! 龍海さんの恋人でお嫁さんは私だけです!」
「お前の恋人で夫はただ一人、俺だ!」
真面目な顔でアイリーンに告げる龍海。
「そうですけど! そのお顔と台詞は素敵ですけど! 龍海さんは格好付ける時と場所が違います~!」
顔を真っ赤にして龍海の胸をポカポカと叩くアイリーン、傍から見れば可愛い仕草だがニュータントの身体能力なので結構なパンチ力があった。
「うん、わかってる!」
それに耐えてアイリーンの行動をライフで受ける龍海。
「……龍海さん、私は良妻ですから夫のわがままに付き合ってあげます」
「うん、ありがとう♪」
片腕でアイリーンを抱き寄せ、もう片方の手でアイリーンの頭を撫でる龍海。
「……今日の龍海さんは、ズルいです」
アイリーンは、龍海に積極的に出て欲しいが出られると何だか複雑という気分だった。
「俺がズルいのは母さん譲りだから諦めて♪」
龍海は、ついに母であるリーファの性質が開花したのか普段とは打って変わってアイリーンに対して攻めに出ていた。
アイリーンを再びお姫様抱っこして馬車に乗り、今度は海辺へと降り立つ。
「海ですね、波の音は心地良いですし夕陽が出てきました」
龍海にお姫様抱っこされながらアイリーンが呟く。
「ああ、こうして波の音を聞きながらアイリーンと夕陽を見たかった」
「それは、私も龍海さんと海で夕陽を見るのは好きですけど」
「ここの所、見れてなかったから一緒に見たかったんだ」
「はい、それは構いませんがそろそろ受け取っていただけませんか?」
アイリーンが何故か胸の谷間から、ピンク色の包装をされたハート型のチョコレートを取り出す。
「うん、今年もありがとう♪」
礼を言う龍海、アイリーンを抱きかかえた状態から優しく降ろす。
「ホワイトデーには、ガッツリお返しをいただきますからね」
「受けて立つよ♪」
「龍海さん、格好良いですが可愛げを捨て去るのはいけませんよ?」
照れながらアイリーンが龍海から目線を外してチョコの包をほどく。
そしてチョコを口にくわえると、瞳を閉じて龍海に加えた顔を突き出す。
「いただきます♪」
チョコをかじりアイリーンを抱きしめてキスをする龍海。
夕陽が二人を見守っていた。
そして夜、二人は地球の大使館ではなく魔界の宮殿内の部屋にいた。
「ば、バラの花弁が部屋中に!」
赤いバラの花が部屋を満たしていた。
「朝まで愛し合おう♪」
「も、もう♪ 龍海さんのロマン馬鹿っ♪」
龍海とアイリーンは、永遠の愛を語り合った。
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