第75話 教導の親子対決
「その図体は直線的な軌道が見え見えだ、デーモンキック!」
空の上でデーモンブリードが、突進してくる巨大なインペリアルドラゴンを体を捌いて首筋を蹴り飛ばして墜落させようとする。
落ちかけていたインペリアルドラゴンも負けじと落下を止め急上昇。
口から電撃のブレスを吐く。
「甘い甘い、その電撃は赤ん坊の頃から対処してきたよ♪ デーモンビーム!」
闇の光線をぶつけて電撃を相殺するデーモンブリード。
青と黒のエネルギーがぶつかり合い爆発する。
インペリアルドラゴンの中では龍海とアイリーンが唸っていた。
「……さすがお義父様、手ごわいお舅さんですね」
「その言い方やめよう、闇には闇だダークトルネードで行こう!」
脳内会議を終えてインペリアルドラゴンも金色のボディから闇を噴き出して体は蜷局を巻きながら闇の竜巻を起こしつつ突進する。
「昔は独楽の玩具で遊んだなあ、ならばこちらもデーモンスピン!」
台風のように縦の竜巻のインペリアルドラゴン、大してデーモンブリードは横に渦を巻きコークスクリューの如く突っ込みに行く。
闇の竜巻同士のぶつかり合い、その衝撃でインペリアルドラゴンはドラゴンブリードとエンプレスブリードに分離してしまう。
「そーら、急いで再合体する! デーモンバッツスコール!」
容赦なく落下しかけている息子夫婦に、闇のエネルギーで作った蝙蝠の群れを雨あられとけしかけるデーモンブリード。
「やられるか!」
エンプレスブリードを庇う様に抱きしめ、再度インペリアルドラゴンになりデーモンブリードの攻撃を背中で受けて耐える。
「うんうん、伴侶を庇って耐えるとは流石は我が息子♪」
悪役っぽい言い回しで軽口を吐くデーモンブリード。
そんなデーモンブリードを、インペリアルドラゴンの吐いた氷のブレスが襲い
彼を氷漬けにする。
彼らは何故親子対決をしているのか? 答えは教導の為である。
インペリアルドラゴンになれるようになった息子夫婦のさらなる成長を促す為
デーモンブリード自ら組手を申し込んだのが数日前。
そして場所は魔界、ヘルグリム帝国の僻地の空。
氷漬けにされたデーモンブリード、パリンと氷を割って復活。
「これは効いたな、お返しだ」
「進太郎、お祖父ちゃん寒いんじゃが?」
「お祖父ちゃんは長男だから大丈夫!」
デーモンブリード虚空から薙刀を取り出して構える。
「うん、こいつは出来がいいやはり子供には良い武器を与えないとな♪」
娘である雪花の武器をかっぱらったデーモンブリード、薙刀を上段に構えて振り回してお返しにと猛吹雪を巻き起こす。
対するインペリアルドラゴンは火炎ブレスで反撃、吹雪を相殺し大爆発を起こす。
追撃しようとした所、爆発に行く手を阻まれるデーモンブリード。
「そうそう、体勢はどんな手を使ってでも立て直して良い! だがそれは相手にも同じように立て直しの時間を与える事になるがな!」
相手の動きを見て感心するデーモンブリード、そして薙刀をタクトのように降り空に無数の氷柱を浮かべて薙刀を振り下ろすと同時に氷柱の群れを落下させる。
だが、落下を始めた氷柱の群れは地上に降り注ぐことなく蒸発した。
「……空が、変わった?」
ワインレッド色であるはずのヘルグリム帝国の空は綺麗な青空になっていた。
その蒼天の空に輝くのは帝国に存在しない物、黄金に輝く太陽であった。
「「闇を喰らえ、黄金の太陽っ!」」
少年と少女の重なり合った叫び声と共に、太陽からデーモンブリードへと落ちて来る者がいた。
それは、龍頭の兜を被り中米の神であるケツァルコアトルを模した羽毛毛の蛇頭を胴鎧に纏とって翼竜の翼を生やした黄金のドラゴンブリードと言う形状の戦士。
「インペリアルドラゴンキック!」
落下しつつデーモンブリードに蹴りを叩き込むインペリアルドラゴン。
その一撃は、ガードをしたデーモンブリードを大地へと叩き付けたっ!
「……ガハッ! 予想通り、化けやがったパパは嬉しいぞ♪」
自分の予想通りに龍の形態から人型へと変形を果たしたインペリアルドラゴンに仮面の下で笑うデーモンブリード。
強力な一撃を受けつつも立ち上がる。
結構良い一撃をもらったが、まだこの教導は終わらない。
自分もまだまだだこれからの身だが、後継ぎ達には更に可能性の扉を開いて進んでもらわなければならない。
その為の教導だ。
対するは太陽を背負いし黄金の龍の戦士となったインペリアルドラゴン。
その脳内では合体元の龍海とアイリーンが会話をしていた。
「お義父様、厳しいですがどう攻略しましょうか?」
「何言ってるんだよ? 父さん、無茶苦茶模範解答出してくれてたぞ♪」
アイリーンは腑に落ちていないようだが龍海には父の伝えたい事が伝わっていた。
龍の巨体では人型サイズの敵には動きが大味になり過ぎる事。
人間サイズでインペリアルドラゴンの力を操れるようにする事。
無理かもしれなくても気付いた事は試しにやってみる事。
この三つの課題を乗り越えてかかって来いという事が伝わっていた。
デーモンブリードとの打ち合いの中で理解した龍海は実行に乗り出した。
「コアトルばあちゃん! 華王ひい祖父ちゃん! 力借りるぜ!」
「お、お借りしますっ!」
祖母と曽祖父の力を借りると叫んだ二人の暖かくも眩しい太陽の光が包んだ。
そしてインペリアルドラゴンは、人型の戦士の姿へと変形したのだ。
デーモンブリードが地面に落下した事で戦いは地上戦にシフトした。
インペリアルドラゴンも、地上にスーパーヒーロー着地をすると同時に地震を起こした。
大地が揺れ、地割れが起こり岩が隆起し瞬く間に周囲の景色が空る。
デーモンブリードとインペリアルドラゴンの二人は岩と土でできた古代ローマ風の闘技場に立っていた。
「リングは作った、ここからが勝負だ父さん!」
「趣味の良い演出だな、受けて立つ!」
黒い闇と黄金の光がぶつかり合う!
衝突からの手四つ、互いに相手の次の動きを読み合った末に殴り合いに移行した。
お互いが狙う方向に突きを繰り出せば拳と拳がぶつかり合う、拳のフェンシング。
相手のフェイントに気付いたインペリアルドラゴンがバックステップで避けた。
手刀を構え両手に黄金の炎を灯すインペリアルドラゴン。
「父さん、あなたから最初に教えていただいた技ですドラゴンチョップ!」
手刀から燃える黄金の炎を剣の如く伸ばし、デーモンブリードの側頭部と肋骨をめがけて振るうインペリアルドラゴン。
デーモンブリードも両手に闇を炎の如く灯して黄金の炎の牙を受ける。
「く! これは流石に受け止めきれないっ!」
「すまん、お祖父ちゃん限界!」
受け止めた黄金の牙は闇を飲み込み、デーモンブリードをも光で飲みこもうとした所でブラックホールが発生したかのようにデーモンブリード全身から闇が噴き出す。
噴き出した闇が黄金の炎を打ち消すと同時に、デーモンブリードの鎧が消えてスーツ姿の進太郎と同じくスーツ姿の美形老人であるゴート六十六世がギブアップした。
「降参じゃ、ひいお祖父ちゃんもう無理だから!」
「二人共、成長したな」
終わったと切り上げようとする進太郎とゴート六十六世。
「いや、あの感じならまだ行けるでしょ? こっちの技消されたし」
インペリアルドラゴンはまだまだ戦えると、棘の様な刃をしたアステカの剣であるマクワウィトルに似た武器テールセイバーを上段に構える。
「いや、これから書類仕事があるし食事とかインターバルを入れよう?」
綺麗な虹がかかった青空の下、ヘトヘトになるまで息子夫婦と教導の模擬戦を行ったデーモンブリードであった。
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