第74話 転売の成敗

 夜の香港、夜景を見下ろすのは黒ずくめの戦闘員達を率いた一人の怪人。

 「ク~クック、ここなら日本のヒーローもやって来れまい♪」

 怪人の名はコロビ仮面、黒猫を模したスーツを纏うヴィランだ。

 「この間はヘルグリム帝国に邪魔された、日本じゃなければあの悪魔ヤクザ共も

来ないはずだ!」

 自信満々に叫ぶコロビ仮面、彼と手下達が狙うのは伝統ある美術品オークションのバーナビーズ。

 落札された高級品を奪って転売しようと企み彼らは香港へとやって来た。

 「今回の仕事には全予算と社運を賭けた、失敗すれば倒産だ気合いを入れろ!」

 コロビ仮面が戦闘員達に激を飛ばす。

 前回ヘルグリム帝国に邪魔をされたが、何とか今日まで構成員達を養い組織を持たせてきたコロビ仮面。


 経営者としての能力や部下からの人望はあるのだが、当人はそれを悪用する事しか考えていなかった。

 「安い物は高く売る、高い物は奪って更に高く売る! それが俺の転売道!」

 コロビ仮面のモットー、それは外道の思想だった。

 

 定価や適正価格、メーカーや客の気持ちや利権などお構いなし。

 それが彼と悪の組織コロビ商会のやり方にして生き様であった。

 

 そんな彼らが目をやる建物では世界的なオークションが開催されていた。

 会場の中では並べられた席に購入希望者達が座り、プロジェクターには商品の映像が映されて壇上の司会者が商品名を読み上げる。

 「ダッサイ、ジャパニーズ、サケ!」

 読み上げられた品の競り落としが始まった、会場内だけでなくネット上でも行われる。

 誰が最高額を付けて競り落とすのか?

 緊張が高まる中、会場のドアを蹴破ってコロビ仮面が乗り込んで来た! 

 「プライスゼロでいただくぜ!」

 コロビ仮面が勢い良く叫んだところで気づく、乗り込んだ会場の中にいた人物達に

コロビ仮面は顎を落とした。

 「引っかかったな、転売屋!」

 「オークションはすでにオンラインで終了、商品は落札されたお客様の手にお届け済みです!」

 そこにいたのはドラゴンブリードとエンプレスブリードのWブリード。

 「へ、ヘルグリム帝国~~~?」

 コロビ仮面にとって、いるはずのない存在がいた。

 「俺達だけじゃない、百華龍の黒龍隊ヘイロンたいもいるぜ♪」

 ドラゴンブリードが顎で指示した先には黒い龍を模したヒーロースーツを身に纏った女性と同様のスーツを纏った男達。


 その正体は、シャンティと元ブラックカルマの構成員達によって編成されたチーム黒龍隊がズラリと待ち構えていた。

 「あなたの業、終わらせてあげましょう♪」

 シャンティがコロビ仮面にドスの利いた声で断罪を宣告する。


 「ふざけんな、悪魔ヤクザ共! こうなりゃ自棄だ、かかれ!」

 自分達が罠に嵌められたと知ったコロビ仮面はブチ切れて戦端を切る。

 「雑兵と後始末はこちらで、ドラゴンブリード様達は会場を壊さないように敵の首魁を蹂躙なさって下さい♪」

 シャンティが明るい口調で酷い事を言う、流石は元ヴィラン組織の幹部だ。

 

 「これ、俺達いなくてもよくね?」

 「ですよね? 観覧車乗りに行きましょうか♪」

 「死ねや、腐れヤクザ共!」

 ドラゴンブリード達が空気になりかけている所にコロビ仮面が刀を振り上げて襲い掛かる。

 「誰がヤクザだ!」

 「私達は真っ当な異世界国家元首ヒーローです!」

 ドラゴンブリードとエンプレスブリードが、同時に飛び蹴りで襲いかかって来たコロビ仮面をぶっ飛ばす。

 「畜生、舐めやがってコロビ抜刀斬ばっとうざん!」

 ぶっ飛ばされたコロビ仮面が立ち上がり、刀を紫色に光らせてから降りろして

エネルギーの斬撃をドラゴンブリード達へ飛ばしてきた。

 「させるかよ、ゲートオープン!」

 ドラゴンブリードは虚空に異次元への穴を開けて、コロビ仮面の必殺技を穴の中に

吸い込ませた。

 「イッツ、マジックです♪」

 そして、エンプレスブリードがコロビ仮面の背後に異次元への穴を開けると先ほど吸い込まれたコロビ抜刀斬の斬撃がコロビ仮面自身に直撃した。

 

 「ば、馬鹿な! 後ろからだと!」

 エネルギーの斬撃を背中に受けて自分のスーツが爆発し損傷するコロビ仮面。

 「くそ、まだだ! 俺には会社を守る社長としての使命があるんだ!」

 自業自得の大ダメージを受けても立ち上がろうとするコロビ仮面。

 彼は諦めが悪かった。

 「やかましい、手加減して倒してやる!」

 「行きますよ、手加減して、手加減しての!」

 ドラゴンブリードとエンプレスブリードが手加減を意識した上で二人で同時にジャンプして必殺技を放つ。

 「「ダブルブリードキック!」」

 ドラゴンブリードとエンプレスブリードの手加減をした必殺キックがコロビ仮面の

 胸部にヒットし、コロビ仮面は目を回して倒れた。

 「コ、コロビ仮面死すとも転売屋は死なず!」

 ふざけた台詞を残して気絶したコロビ仮面。

 「いや、お前以外の転売屋も退治するから」

 「真っ当な商売の邪魔をする転売は許せません!」

 倒れたコロビ仮面をダクトテープで縛り拘束しながら転売屋は許さないと誓う

ドラゴンブリード達であった。


 こうして、コロビ仮面によるオークション会場襲撃事件は幕を閉じた。

 出品された品々は無事に落札者の手に渡った.


その中でも、百万円の最高金額で落札された日本酒の獺祭は誰が手にしたかと言うと。

 「……うっひっひ~♪ 無事に手に入れたぜ俺の肝臓は負けない、飲むぞ!」

 黄色い拳法着姿のイケジイな男、黄・華王の手に渡り美味しく戴かれたとの事。


 転売はするのも買うのも止めよう、商品はきちんと正規で買って楽しく正しく経済を回して行きましょうと言うお話。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る