第68話 悪の戦隊を潰せ 後編
「戦隊みたいな格好してるくせに連携が取れてねえな!」
「貴方達は、ヒーローやヴィランを舐めてますね!」
ドラゴンブリードとエンプレスブリードがピンクと対峙する。
財団Uの実験部隊ユーレンジャーは、リーダーらしき赤と青以外は各個で敵に挑むと言う戦隊の格好をしたならず者と言う印象だった。
「ちっ! 何でこいつら私達の力が通じないのよ!」
苛立ちを隠さず現実を認めないピンクが切れて吠える。
彼らの行動の原因は侮り、彼らにとってブラックカルマやヒーロー達は連携を取るまでもない相手だと舐めて高を括っていたのが理由であった。
実際、ブラックカルマの秘密の集落への襲撃は成功したのである。
「死になさいよヒーロー共、破壊エネルギーガンッ!」
ピンクが拳銃型の武器を構えて引き金を引く、銃口の前にピンク色に光りバチバチと帯電する光の球が発生しドラゴンブリード達へと射出される!
「危ねっ、伏せろ!」
ドラゴンブリードがエンプレスブリードを巻き込み転倒して敵の攻撃を避ける。
避けられたエネルギー弾は、空を切って飛んで行き遠くの山を穿った。
「避けてるんじゃないわよ、エネルギーサーベル!」
ピンクが銃を腰のベルトに収納し手から自分のマスクに手を添えると
彼女の手にサーベル型の武器が握られる。
赤く発光したピンクのサーベルが乱雑に振るわれると刃の起動と同じ方向に斬撃が飛ぶ!
「斬撃ならこちらも飛ばせます!」
エンプレスブリードも両手に爪を生やして振るい、銀色に光る斬撃を飛ばして敵の斬撃へぶつけて打ち消す。
「飛ぶ斬撃を打ち消すとか非常識よ!」
「ニュータントに常識は通じません、エンプレスナックルッ!」
自分の攻撃が通用せず、自棄になって突っこんで来るピンクへエンプレスブリードの拳が飛んで行き文字通り遥か彼方へ殴り飛ばす。
「さて、残るは二人ですねドラゴンタッチで決着を付けましょう♪」
「ああ、早く帰ろう♪」
エンプレスブリードがドラゴンブリードを抱きしめて、二人は巨大な黄金の龍の姿であるエンペラードラゴンへと姿を変えて空へと昇る。
ピンクが倒されてエンペラードラゴンの出現を確認したレッドとブルー。
「作戦変更、ブルーは船を呼んでくれ撤退戦だ」
「了解、他の連中は捨てて行こう」
レッドの指示にブルーが応じ、ブルーが自分のベルトのバックルを押す。
すると突然空に暗雲が立ち込めて、雲の中から巨大な灰色の三角形の飛行物体が現れた。
ユーレンジャーのブルーとレッドは飛行物体の出現を確認すると倒されたイエローとピンクとグリーンを見捨てて背中のブースターを起動し空へと舞い上がり飛行物体へと吸い込まれた。
それを目撃した華王と黒華はドラゴンブリード達がエンペラードラゴンになったのに続くことにした。
「さて、俺達も龍になるか」
「ええ、敵も大きいの出して来たしね」
「お二人共、行ってらっしゃいませ」
「一人で大丈夫?」
「ええ、もう決着がつくでしょうから平気です♪」
華王と黒華の二人も、シャンティに見送られてエンペラードラゴンと同じサイズの巨大な黄色と黒の龍へと瞬時に姿を変えて空へと舞い上がった。
空中で相まみえる、三頭の龍と三角形の飛行物体。
飛行物体の名はデルタシップ、財団Uが建造した飛行戦艦の試作機である。
デルタシップの中はシートが五つ、だが本来五人が座るはずのシートには二人しか乗員がいなかった。
「ちっ! 化け物が三匹も出やがって、これでも喰らえ!」
ブルーフがスイッチを押すとデルタシップからミサイルが発射される。
ミサイルは三頭の龍達に直撃し爆炎で包み込んだ。
「やったか、ブルー?」
着弾を確認したレッド、だが煙の中から三頭の龍が無傷で抜け出して来た。
「効いてないだと? 逃げるぞ!」
デルタシップは、唯一の武装であるミサイルが効かないとわかると三頭の龍に背を向けて逃げ出しにかかる。
だが龍達は逃がす気はなかった。
三頭の龍達は逃げるデルタシップを追って、ぐるりと取り囲むように動き回る。
そして三方向からの体当たりで、デルタシップをヒマラヤの大地へと
墜落させた。
三頭の龍達に落とされたデルタシップの中、スーツを纏っていたおかげか
生きていたユーレンジャーのレッドとブルー。
「く、こうなれば這ってでも逃げるぞ」
「ああ、くたばってたまるか」
生存を諦めず悪あがきを試みようとする二人。
だが、突然デルタシップの操縦室の虚空にデジタルスクリーンが浮かび上がる。
「じ、自爆システム作動だと!」
「後、十秒? に、逃げられん!」
デジタルスクリーンからブザー音と共にカウントが始まり、レッドとブルーが逃げだす間もなくデルタシップは轟音を上げて爆散した。
三頭の龍は爆発を目撃すると急いで地上へと降り人の姿に戻った。
「おおう、でかいクレーターができてるな」
「シャンティさんはご無事でしょうか?」
「そうね、敵は放っておいてシャンティを探しましょう」
「……ド派手にやっちまった」
クレーターに降り立ったドラゴンブリード達、シャンティを探そうと周囲を見回すとボコボコと地面が動き地中からいくつもの黒い人影が飛び出して来た。
「げげ! ブラックカルマども!」
黑い人影達をみて華王が叫ぶ。
「やられたんじゃなかったのか?」
「これは一体、どういう事でしょう?」
「嵌められたの?」
いつの間にかブラックカルマの構成員達に取り囲まれたヒーロー達。
すると、囲いの一部が解かれ黒い法衣を身に纏った巨漢を後ろに連れたシャンティが姿を現した。
「ご苦労様でした、百華龍とヘルグリム帝国のヒーローの皆様♪」
シャンティが微笑む。
「この状況はどういう事だ!」
ドラゴンブリードがシャンティに叫ぶ。
「我らが首領、導師の発案による欺瞞作戦です♪」
シャンティと巨漢が下りてきてシャンティが巨漢を紹介する。
「我がブラックカルマの導師である、此度はそなたらの助力に感謝する」
導師がドラゴンブリード達に礼を言う。
「けっ! 自分達の基地を潰して死んだふりをしたって事か」
華王がシャンティ達の思惑を理解する。
「その通りだ我が祖父よ、我らブラックカルマはそなたらと和解する用意がある」
導師が華王を祖父と言い和解の提案をする。
「……ドラゴンブリード、この話受けても良いか?」
華王がドラゴンブリードに尋ねる。
「ひいおじいちゃんの蒔いた種だし、身内だとわかった以上は仕方ないね」
ドラゴンブリードが頷く。
「若き龍の子、そなたの決断にも感謝する」
導師がドラゴンブリードに近づき握手を求める。
差し出されたその手をドラゴンブリードは握った。
かくして、悪の戦隊は潰れヴィラン組織であるブラックカルマも表向きは壊滅した。
その後の話し合いで、ブラックカルマ達とシャンティは百華龍の諜報部門として取り込まれる事になりヒーロー達はヒマラヤから帰国した。
「あ~、やっと日本に帰ってこられた」
「結構離れてましたからね」
龍海とアイリーンは、島の浜辺で寛いでいた。
「夏休み返上で補習になっちゃいましたね、龍海さん」
アイリーンが残念そうにつぶやく。
「良いよそれくらい、俺はもうしばらく日本から出たくない~っ!」
ヒマラヤでの一仕事を終えて帰ってきた龍海に待っていたのは、出席日数不足による夏休み返上での補習という日本の現実であった。
普通なら悲惨な状況だが、それでも龍海には穏やかに日本で過ごせる事の方が嬉しいのであった。
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