第67話 悪の戦隊を潰せ 前編
「シャンティさん、あんたも俺の又従姉ってオチだろ?」
ドラゴンブリードがとんでもない事をつぶやく。
「あら、流石ですね♪」
それを肯定するシャンティ
「なっ! まさか導師ってのはもしや?」
驚きながら身に覚えに関して脳内検索する華王
「うふふ、私のひいおばあ様です♪ 初めまして、ひいお爺様♪」
困惑する華王の様子を楽しむシャンティ。
「ちょ! ここに来て隠し曾孫の発覚ですか!」
エンプレスブリードは驚く
「……ち! あんたも血の繋がった身内だってんなら許すわ、私達は家族に手をかけるなんてしない」
黒華はシャンティの素性を知り無理やり自分の中の怒りを抑えた。
「マジか、当たって欲しくなかった事が当たっちまったよ」
ドラゴンブリードが掘り当てたのは衝撃の事実、実はドラゴンブリードは
初めて会ったシャンティに妙な親近感を感じていた。
「まさか、俺の女癖に不満で尼になるって逃げた三人目の愛人がヒマラヤで子供を産んでいたとは思わなかったぜ」
「事が済みましたら認知などの手続きをお願いいたしますね♪」
行軍する中で己の不始末に後悔する華王、シャンティが自分の曾孫と聞いて
即座にどの女との系譜かを思い出す。
「ひいお祖父ちゃん、責任取ろうな」
「私もそれは引くわあ、帰ったら親族大会議物よ」
「……反省して下さいね、義曽祖父様」
「帰ったら、シャンティの分の銀行口座とか用意します」
仲間達にドン引きされる華王、だが彼の蒔いた種に関する余罪はこの後も出てくることはまた別の話である。
「敵を叩くだけでなく隠蔽工作もせねば、曾孫とわかった以上は綺麗な身で
迎えねばなるまい」
ドラゴンブリードに目配せして、言外にヘルグリム帝国でシャンティの経歴ロンダリングを頼む華王。
「ちょ、自分の不祥事の片棒を担がせる気かよ!」
シャンティが隠した、ブラックカルマの秘密の集落への入り口を掘り出そうとするドラゴンブリードが華王の目線に気づく。
「大丈夫、シャンティ自身は特に殺しとかの罪とか犯してはいないんだろ?」
華王がシャンティに問いかける。
「はい、私は組織内では託宣の姫巫女として祀られながら祭祀を執り行う以外の生き方はしてきた事はございません」
シャンティが問いかけに答える。
「ならば良し! 悪の組織から助け出したとかバックストーリーは作る!」
良しではないと思うのだがシャンティを救うと決めた華王は脳内で算段を行った。
「……俺達は何も聞いていない、日本でやらかしてないし管轄外だ」
「そうですね、救援依頼で出かけたヒマラヤで悪の組織から助けた人が実は血の繋がった親戚だったと言うだけですね」
ドラゴンブリードとエンプレスブリードは黙認を決めた。
そんな中、突如轟音が鳴り響き山が震える!
突然の雪崩がヒーロー達を襲った!
「頼むぜブラザー!」
ドラゴンブリードは迫りくる白い暴力に対して、異母兄弟の幸太が持つ灼熱の人狼の力を借りて超高熱の火球を放り投げるという赤き灼熱の暴力で殴り返した。
雪崩対火球の対決はドラゴンブリードが勝った。
「……周囲の雪が完全に無くなりましたね」
「環境破壊じゃね?」
「流石です♪」
「聞きしに勝る暴虐ぶりですね」
「いや、そんな事より敵襲に備えろよ!」
好き勝手な事ばかり言う仲間達にドラゴンブリードが叫ぶ。
大地が揺れ、爆音と共に地中から飛び出してきたのは五つの影。
「見つけたぜ、ブラックカルマの生き残りよ~♪」
影の正体は五色の戦隊スーツの戦士達、その中の緑が下卑た声を出す。
「女だな、嬲っても良いかいリーダー?」
黄色もシャンティを見て下種な事をつぶやく。
「駄目だ、さっさと殺せ」
リーダーと呼ばれた赤スーツの戦士が拒否する。
「遊びじゃないんだ、片づけるぞ」
青スーツがリーダーに続いて言う。
「あれ? 百華龍とヘルグリム帝国がいるわねまとめて潰しましょ♪」
ピンクスーツの戦士が女性らしい声でドラゴンブリード達を害そうと進言する。
この五色の戦隊が財団Uの実験部隊ユーレンジャーであった。
「作戦開始だ!」
赤スーツのリーダーの号令で、ユーレンジャーとヒーロー達の対決が始まった。
「行くぜ、エアカッター!」
ナイフを振り回して真空の刃を飛ばしてくる緑スーツ、対峙したのは黒華。
「阿保らしい!」
片足裏を軽く上げて下ろす、それだけの動作で大地が揺れて衝撃波が発生し襲い来る真空の刃とぶつかり合ってかき消した。
「その程度の風の芸、家の年少組にすら笑われるわよ」
「何? 瞬間移動っ!」
「貴方より速いだけよ」
緑の戦士に瞬時に接近した黒華が、肩から相手にぶつかる貼山靠を叩き込む。
「へびゃっ!」
その一撃は、緑の戦士を突き飛ばすと同時にその装甲だけを粉々に粉砕した。
雪が降っていなくても場所はヒマラヤの極所、インナースーツ一丁という姿されたユーレンジャーグリーンの中身である禿げ頭の小男は高山病の症状が出て倒れ気を失った。
「はい、一丁上がり」
グリーンを仕留めた黒華は、護衛の構成員を黄色の戦士イエローに倒されたシャンティを助けに向かった。
「グリーンがやられたか、奴は一番の雑魚だな」
「登山訓練にもついてこれなかった奴だ、放っておけ」
ヒーロー達から距離を取り狙撃の機会を狙っていたブルーはスポッターをしていたレッドと共に
グリーンの脱落を目撃した。
「誰から狙う?」
狙撃用のライフルを構えたブルーがレッドに尋ねる。
「奴らの中で唯一生身のブラックカルマの女だ、それさえ殺せば帰投しても良いと上からは言われてる」
レッドが質問に答える。
「了解、イエローとピンクは?」
「捨て駒だ、データは本部に転送されてる」
ブルーとレッドは非情なやり取りを終えて、待機を決め込んだ。
「へっへっへ~♪ やってやるぜ~♪」
外見は正義の戦隊ヒーローの黄色と言うヒーロー側に対する侮辱でしかない
デザインで武装は巨大な手甲具足と言うイエローが下品な笑みを仮面の下に浮かべて
剛腕を振るう!
イエローが狙うのはこのヒマラヤと言う過酷な環境で生身でいるシャンティ。
シャンティを守る護衛の構成員達はクワガタ人間に変身してイエローに挑む。
「グラビティパンチ!」
黑い球状のエネルギーを纏ったイエローの拳が護衛の怪人達をなぎ倒す。
「重力操作機能付きのガントレットだ、どんな奴でもぶっ潰すぜ~♪」
邪魔な護衛を排除したイエローの拳がシャンティに迫る。
「沈みなさい!」
「何言ってやがっ!」
シャンティの叫びと共に、地面が揺れてイエローが立っていた大地が崩落する。
「落とし穴です、全身は埋まりませんでしたか」
シャンティが呟く、イエローは下半身がすっぽり隠れて埋まってしまった。
「くそ! こんなの砕いてっ!」
「砕けるのはあんたよデカブツ!」
抜け出そうとするイエローの頭頂部をシャンティを助けに来た黒華の踵落としが砕く。
その衝撃は、イエローのマスクだけでなく頭蓋骨まで届いておりイエローは二度と動かぬ体になった。
「ありがとうございます、黒華さん」
「ま、あんたも又従姉妹だから仕方なくよ」
こうして、残るユーレンジャーは後三体となった。
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