第66話 黑い来客

 ブラックカルマに報復すべくヒマラヤ山脈へと赴いた龍海達。

 根回しはできたが仕事にならない戦いを挑む結果になった。

 

 「とほほ、敵に襲われるはタダ働きになるはと辛い」

 龍海は今回の戦いが報酬にならないことが不満だった。


 ネパール側から登頂を開始し、ベースキャンプを設営して一行は休息を取っていた。

 「しっかり休めよ、敵はエベレストにありだ」

 テントの中で華王が地図を広げて語る。

 「四人でエベレスト挑むって、縛りプレイ過ぎるぜ」

 龍海はげんなりしていた。

 「頑張りましょう、いざとなれば帝国へゲートを開けば帰れます」

 アイリーンが龍海を励ます。

 「社会のルールに縛られるのがヒーローの辛い所よね」

 黒華が全員にココアを配る。


 全員、華王は黄色、アイリーンはピンク、龍海は青、黒華は黒とそれぞれの色で

上下を統一したアルパインクローズ姿だ。


 龍海達がベースキャンプを設営し終えると、天気が晴れから突然吹雪へと変わり

彼らは行軍を止めざるを得なかった。


 吹雪の中、テントの外からシャリンシャリン♪ と鈴の音が鳴り響く。

 「え? こんな吹雪なのに誰が鈴なんて鳴らしてるの!」

 「敵襲かも知れない、全員変身して出よう!」

 「「応っ!」」

 怪しげな鈴の音を敵襲と判断した龍海達は変身してテントから外へと飛び出した。


 華王は金色の龍人と言う装甲、黒華も装甲を纏い黒い龍人となる。

 龍海とアイリーンもドラゴンブリード、エンプレスブリードに変身して身構える。


 吹雪の中、ヒーロー達の前に現れたのは白旗を掲げた黒装束の怪人に先導された輿。


 白旗を見てヒーロー達は警戒はしつつも手出しをせず相手の動向を見守った。


 黒装束の従者が担ぐ腰の上に座すのは豊満な体に黒いドレス状の民族衣装を纏った黒髪に碧眼で褐色の肌の美少女。


 黑い一団はヒーロー達の前で立ち止まり、輿を下す。

 黑い一団が到着すると同時に吹雪は止んだ。


 輿から降りた美少女はヒーロー達の前に進み出ると座礼をした。

 「攻撃をしないでいただき感謝いたします、ヒーローの皆様」

 美少女がヒーロー達に礼を言う。


 「奴らはブラックカルマか! 何で白旗上げてるわからないが、ひとまず話を聞かせてもらいたい」

 ドラゴンブリードが大声で相手に対話を試みる、黒い一団は以前遭遇したブラックカルマの構成員と同じ風体だった。

 

 ドラゴンブリードの声に応じて美少女が彼の前に歩み出る。

 「はい、私の名はシャンティ御覧の通り我らはブラックカルマの者です」

 美少女、シャンティは名乗りを上げた。


 「そちらの用件や要求を聞かせてもらえるかな?」

 ドラゴンブリードがシャンティと会話をする相手は日本語が通じた。

 「皆様が我らを討ちに来た事は存じております、その上で我らが首領の導師は皆様に私の保護を求めて送り出しました」

 シャンティが自分が来た理由を語る。


 「ずいぶん都合が良い話ね、人の身内を弾いておいて?」

 黒華が怒気を含めて呟く。

 「ふむ、重要そうなお嬢さんをこちらに寄越した? 何が起きてる?」

 華王はシャンティの言葉に興味を覚えた。

 「私は、ドラゴンブリードの決定に従います」

 エンプレスブリードはドラゴンブリードを見やった。

 それに頷くドラゴンブリード。


 「わかった、こちらの条件は相談して行くとしてあなたの保護は受け入れる」

 ドラゴンブリードはシャンティの保護を決断した。

 「ちょっと、本気なの?」

 黒華は不服を漏らす。


 「ほう、度量があるな? 流石俺の曾孫♪」

 仮面の下で華王は微笑んだ。


 「正直、俺はそっちに襲撃されたのは怒りはしているが恨んではいない」

 対話に応じた事に不思議そうな顔をしたシャンティに対してドラゴンブリードは

自分の気持ちを打ち明けた。

 

 戦いを生業とするなら敵を攻めるのも敵に攻められるのも仕事の内、相手が対話を求めるなら警戒しつつできる限り応じるスタンスを見せるドラゴンブリード。


 「ありがとうございます、こちらはそちらの条件は何なりとお受けいたします」

 シャンティはドラゴンブリードに礼を言う。

 「じゃあまず、そっちの事情を全部話してくれるかな? それと道案内とか俺達への協力をしてもらいたい、タダで保護するつもりはない」

 ドラゴンブリードの言葉に頷くシャンティ。


 「はい、我らブラックカルマは財団Uと言う組織と袂を分かち現在その財団Uの手の者と抗争中です」

 シャンティが事情を語りだす。

 「財団Uってのは、何者?」

 ドラゴンブリードが問いかければシャンティは素直に答える。

 「一般人やヒーロー側には無名ですが、我らヴィラン組織にとっては資金や武器などの提供や仕事の斡旋してくる組織です貴方達ヘルグリム帝国は交戦済みでは?」

 シャンティは知らなかったのかと言う顔をする。


 「まさか、はぐれ悪魔と取引しようとしていた白衣集団やメアリを使って謎のロボットで暴れさせた黒幕か!」

 ここへ来てようやく自分達の中で事件が繋がったドラゴンブリード。

 

 ドラゴンブリードの言葉にそうだと頷くシャンティ。


 「我らでも憚られる地球だけでなく魔界にも手を伸ばして非人道的な実験や研究を行っていて現在はN兵器に注目していると、あちらはヒーローも一般人もヴィランも等しく自分達の実験動物と思っているようで我らに牙を剥いて参りました」

 淡々と感情を込めず機械的に語るシャンティ。


 「で、俺らがそいつらを倒してお前さんらの残党も保護してくれってか?」

 今度は華王がシャンティに問いかける。

 「それ関してはそちらに委ねます、私からは共通の敵がいるのでお互いを利用し合わないかとご提案させていただきます」

 シャンティがヒーロー達に問いかける。


 「わかった、その提案を受けるよ善悪混合で呉越同州だ! その財団Uの方があんた達ブラックカルマよりも俺は気に食わない」

 ドラゴンブリードはシャンティの提案を受け入れた、人間界と魔界の平和を重んじるヘルグリム帝国としては財団Uの方が許せぬ邪悪であった。


 「ドラゴンブリードが決めたなら従うわ、そっちが裏切るなら容赦しないけどね」

 ドラゴンブリードとは違い従妹である蘭華を襲ったブラックカルマの方が許せない黒華であったが、今回のリーダーであるドラゴンブリードの決定に従うと決めた。


 こうして、シャンティ達ブラックカルマの一部が新たな仲間? に加わり善悪混合の臨時チームが結成された。

 

 狙う的は財団U、呉越同舟のチームはシャンティ達に先導されて戦場へと行くのであった。

 

 

 

 

 




 

 

 

 

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