第61話 初対決!

 「変身前のドラゴンブリードとエンプレスブリード発見!」

 空の上の武骨な灰色のロボット兵器ムクロ、そのコクピットの中で

コピーキャットはモニター越しに龍海とアイリーンを視認、ムクロの肩の

プラズマ砲を発射する。


 青白いプラズマ弾が海岸で戯れていた龍海達に迫る!

 「「変身!」」

 瞬時にデーモンブリードとエンプレスブリードに変身した二人。

 迫りくるプラズマの塊に対して虚空に黒き異次元への扉を開き吸収する。

 「あぶねえな、何だあのロボット?」

 「敵ですね、止めて鹵獲しましょう!」

 砂浜から飛び立つ二人、ムクロは腰のスコップを逆手に持って構える。

 ドラゴンブリードも三叉槍、エンプレスブリードは巨大なガントレットで武装し

ムクロと空中で向かい合う。

 「どこのヴィランかは知らないが、売られた喧嘩は買うぜ!」

 「警告します、投稿してください!」

 エンプレスブリードが一応投降を促す、だがそんな物は無視された。

 再度プラズマ砲を発砲するムクロに対して、巨大な海水の球を射出して

防ぐドラゴンブリード。

 「警告は無視か」

 「来ます!」

 瞬時に自分達へと転移して振るわれたムクロのスコップ!

 ドラゴンブリード達はガードするも吹き飛ばされ砂浜へと落とされた。

 妻であるエンプレスブリードを下敷きになって庇うドラゴンブリード。

 「だ、大丈夫ですか?」

 「ああ、デーモンアーマーのおかげで何とか周囲の被害は?」

 身に纏った装甲に救われた二人。

 「今、私達が砂浜で倒れている程度です」

 エンプレスブリードが答える。


 ムクロの狙いはドラゴンブリード達にのみに正確に絞られていた。

 人気も側に施設もない海岸とはいえ周囲への被害はほとんどなし。

 「どういうつもりかは知らないが、被害がないのは良かった」

 「あなたに被害が出ています!」

 夫に少し怒るエンプレスブリード。


 一方、ムクロ側は新たな攻撃を繰り出そうとしていた。

 「しぶとい、ならニュートラルフィールド展開」

 スティックのスイッチを押すコピーキャット。

 ムクロを青い色の力場が包み込んだ。

 「敵が、青い球に包まれました!」

 夫を立たせたエンプレスブリードがムクロの様子を見て叫ぶ。

 「良し、魔界へ引きずり込もう!」

 ドラゴンブリードが虚空で手を引くと、空間が引き戸のようにずれて黒と紫の混ざった混沌とした空間が見える。

 異次元へのゲートを開けてその中に入ったドラゴンブリード達をムクロガテレポートで追跡するとゲートが閉じられて海岸に静寂が訪れた。

 

 そこは次元の狭間、ドラゴンブリード達を追って来たムクロのコックピット内で

コピーキャットは吐いた。

 ムクロの必殺の武器を試そうと狙ってみた者の、バイザー越しのモニターに映るのは混沌とした何か?

 機体のコンピューターでネット接続していた所属組織のリンクが切れる。

 敵の位置を探るセンサーもエラーを表示しアラートを鳴らしていた。

 「嘘! リンクが切れた、パパ! 助けて!」

 機体を覆うフィールドは切れ、ムクロは上下も左右も定かではない空も大地もない場所で動きを止めてしまった。


 パイロットであるコピーキャットも生きてはいたが異次元への耐性はなかった。

 機体の中にいてもコピーキャットは気持ち悪さに襲われていた。

 「どうしよう、あいつらがいないしムクロが動かない!」

 コントローラーを動かしても機体の手足がジタバタと無意味に動くだけだった。

 ニュータントを利用したロボット兵器とはいえ、異次元でも自由に動けるわけでもなくコピーキャットは想定外の事態に追い込まれていた。

 「……パパとお話ができない」

 造物主であるチーフとの繋がりを立たれた事で彼女の精神は混乱していた。

 

 「誘い込み成功だ、どうやら次元の狭間では自由に動けないみたいだな♪」

 喜んだのはドラゴンブリード。

 「次元の狭間なら周囲に迷惑も掛かりませんね♪」

 エンプレスブリードも元気だ。

 

 ムクロがジタバタと漂うのに対してヒーロー二人は自由に次元の狭間を

動き灰色のロボットを追跡していた。


 ドラゴンブリードとエンプレスブリードが纏う鎧は、次元の狭間でも動けるような力が働いていた。

 しょっちゅう次元を超えて魔界と人間界を行き来したり自分達のヘルグリム帝国から他の魔界の国へと移動できる彼らに異次元での戦闘では一日の長があった。

 「今の内に解体しましょう、デートの邪魔をしたお仕置きです」

 エンプレスブリードが私怨の炎を燃やす。

 「怒る所はそこ? まあ行くか」

 ドラゴンブリードは虚空から妹の武器である薙刀を取り出す。

 エンプレスブリードは手足の具足に爪を生やす。

 「「ジャッジメント!」」

 二人のヒーローはムクロへと突進しその手足を切断した。

 「嫌~~~っ!」

 コピーキャットはレーダーにもモニターにもロストしていたドラゴンブリード達が

突然現れて奇襲を受ける事となった。

 機体の四肢を切断された事で疑似的ではあるが、機体と自分をリンクさせていた彼女は自分も手足を切断される痛みを味わう。

 コピーキャットはコックピットの中で意識を失った。

 「さて、これで戻っても平気だろう東京の方に出るか」

 「ええ、ヴィラン対策室へ引き渡しましょう」

 ドラゴンブリードとエンプレスブリードは、四肢を切断されたロボットを抱えて次元の狭間を越えて地球へと帰還した。


 この後、コピーキャットの処遇を巡ってひと悶着が起こる事を二人は予想すらできなかった。

 

 

 


 


 

 


 

 

 

 

 

 


 


 

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