第58話 メイドの日
五月十日は母の日だけではない、メイドの日でもあった。
ヘルグリム帝国ではこの日は祝日でメイド祭りが催されていた。
「龍海さん♪ 如何でしょうか私のメイド服姿は?」
黒のワンピースにロングスカート、白カチューシャに白いVの字状
カットのエプロンとヴィクトリアンメイド服姿のアイリーンが屋敷の庭で
龍海へメイド服姿を披露していた。
「可愛いけれどさ、メイド祭りってどうなの?」
龍海は周囲の女性達が全員メイド服姿になっていて困惑していた。
「建国戦争の際に、虐げられていた種族の女性達がメイド服姿で従軍してヴァンパイア族との決戦に挑んだと言うのが由来の伝統あるお祭りらしいですよ?」
アイリーンがメイド祭りの由来を語る。
「大昔の建国の戦いって、本当に何があったんだよ!」
古代の感性について行けない龍海は天に向かって叫んだ。
「もう、そんな天に向かって叫んでいないで私のご奉仕を受けて下さいね♪」
「ちょっと待って、何でそうなるのさ!」
ご奉仕発言に戸惑う龍海。
「由来のお話には続きがありまして、建国戦争の終戦時に従軍したメイド姿の女性達が決戦終了後に一斉に意中の男性にアタックをして大量のカップルが成立しベビーブームが到来した事からこの日は女性が男性にアタックする日になったそうです♪」
「バレンタインみたいなもんなの? もしかして、俺のご先祖様もその時に結婚したとか言わないよね?」
「はい、初代皇帝陛下はメイド服に身を包んだ三人の皇后と結ばれたそうです♪」
「やっぱりか! 当たっていて欲しくなかったよ、そんな自分のルーツとか!」
遠い先祖の時代からメイドに押し倒されてきた家系と知りショックを受ける龍海。
ドンだけ押しに弱いんだ俺の遺伝子と龍海は心の中で嘆いた。
「というわけでメイド祭りのこの日は男性は女性からのアタックを受けなければならない日ですので、お覚悟は宜しいでしょうかご主人様♪」
アイリーンの髪の色が紫に変わり、頭頂部に狼の耳が生え尻からは尻尾が生える。
ウルフアイリーンと言うこの形態、これが犬好きの龍海にとって一番好きな自分の姿だとアイリーンは龍海との付き合いで学習していた。
「待って、男に拒否権はないの? ……アイリーン、マジでちょっとステイ!」
抵抗を試みる龍海と一応、その言葉に従うアイリーン。
「初代皇帝陛下により男性側からのご奉仕の拒否を禁じられてます♪ 流石は帝国の礎を築いた偉大な名君で、龍海さんのご先祖様ですね♪」
「……どんだけ押しに弱いんだ、俺のご先祖様~っ!」
「ところで龍海さん? 私のご奉仕ゲージはもはや満タンを越えてゲージバーがどんどん増加しているのがおわかりですか♪」
アイリーンが全身からオーラを噴出しながら微笑む。
「いや、そんな課金でクリアできそうにない謎ゲージ俺には見えないからっ!」
「お覚悟なさいませ、ご主人様っ♪」
飛び掛かり龍海を押し倒すウルフアイリーン。
「わかった、お世話されるからあのカカワトル用意して!」
降参した龍海はホットチョコレートを要求する、糖分を取らないと体が持たないと
彼は本能で悟っていた。
「む~っ♪ 仕方がないですね、では待っていてくださいねご主人様」
龍海から離れて行くウルフアイリーン、そんなこんなで一息つけると思った龍海。
だが、そんなアイリーンが立ち止まると彼女の姿がブレ出す。
いや、ブレているのではなく分裂だ。
耳が銀色の魚の鰭なマーメイドアイリーン、ピンク色のロボ娘なフランケンアイリーンに加えて包帯の上にメイド服を着たマミーアイリーンに金色の龍の角なドラゴンアイリーンに黒い蜘蛛な下半身のアラクネアイリーンと全フォームが集結した。
どのアイリーンもメイド服姿とマニアックであった。
そして、それらアイリーンが一斉に龍海を見つめる。
「モンスター娘メイドのハーレムって、素晴らしいな」
龍海はこの後、分身した変身ヒーローの群れに襲われる悪の怪人の気分を味わう事になった。
そして本場の魔界では居城内の寝室にて龍海の父親の進太郎も、和装メイドに扮した四人の妻に迫られていた。
「……うん、今日がメイドの日で母の日だって知ってますよ? 国中でメイド祭りしてるのもわかるよ皇帝だから、でも何故に和装メイド?」
妻達に問いかける進太郎。
「もちろん、夜の夫婦生活のマンネリの打破ですわ♪」
三十代で三人の子持には見えない水色の姫カットに金色の龍の角を生やした美女。
龍海の母であるリーファが愛らしい笑顔でリーファに微笑む。
アニー、メイ、フラン達三人もリーファに同意して頷く。
「いや、俺はメイドならヴィクトリアンが好きかなって違う!」
一人ボケツッコミをする進太郎をスルーする妻達。
「「旦那様、四人目のパパになるお覚悟は宜しくて♪」」
赤青緑紫と戦隊カラーな和装メイドのモンスター妻達が一斉に宣告する。
「いや、宜しくないですから!」
人間界で息子が同様に抵抗しているなど露知らず、同じように妻に対して無駄な抵抗をする進太郎。
だが、彼と十五年少々連れ添ったモンスター妻達がそれで止まるわけもなく。
抵抗むなしく親子どころか先祖代々メイドに押し倒された龍海達。
この因業は後の子孫にも受け継がれる事を彼らは知らなかった。
そんなわけで、謎のヴィラン、コピーキャットと遭遇したり財団Uと言う組織が暗躍していてもヘルグリム帝国は通常運行だった。
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