第57話 縁カウント
「ヒーヒッヒッヒ♪ 土地も物も命も転がすコロビ商会~♪」
夜の港の倉庫街で酷い歌を口ずさむのは全身を黒猫を模したマッシヴなスーツ
で覆う怪人コロビ仮面、そして彼の配下の全身黒ずくめの戦闘員達。
小さな悪事から大きな悪事までどこでも行き何でもやる悪の秘密結社コロビ商会
の社長だ。
彼らの悪事の中でも有名なのは法の合否を問わない手段で行う転売で、ヒーローだけでなくヴィランからも迷惑がられている。
その旅に何度もヒーローやヴィランにボコボコにされているのだがしぶとく立ち上がり再始動する、自称スーパー小悪党だ。
「さーて、在庫を確認しましょうかね~♪」
コロビ仮面がダミー会社経由で借りている倉庫のシャッターを押し上げる。
暗い倉庫の中はガラ~ンと、空っぽだった。
「な、何じゃこりゃ~~~っ! うちの商品が消えてる~~っ!」
暗視機能で中を見て泣き崩れるコロビ仮面、戦闘員が慌てて明かりを付けに行くと
明かりが付くとともに吹き飛ばされて海へ落ちる。
明るくなった倉庫の床に黒い闇が円状に突然広がり闇の中から浮かび上がる者がいた。
「イッツ、マジック♪ コロビ仮面、お前の悪事を潰しに来た」
冗談を言って現れたのはドラゴンブリードだ。
「……デ、デーモンブリード? いや、その鎧は息子の方か! チクショウ、どこでバレたか知らんがかかれっ!」
過去にヘルグリム帝国のグッズも転売した事がある違いの分かる男コロビ仮面。
彼は魔界や愛媛県が絡むと悪魔の如く襲ってくる面倒くさいヒーロー組織であるヘルグリム帝国に喧嘩を売らないように商売をしてきたはずだった。
部下がやらかしたか? と、把握できていないがヤバいと焦っていた。
ヤケクソに戦闘員をけしかけるが、ドラゴンブリードの周りの闇から黒い触手
が生えてきて戦闘員達の足を絡め取り全員海へと投げ飛ばす。
「人の商売邪魔するなんて、お前らヘルグリム帝国の方が悪の組織だ!」
不当な文句を言いつつ紫色の刀型のガジェットを構えて突撃するコロビ仮面。
「やかましい、お前らに不当に買い占められた人達の怒りを喰らえ!」
三叉槍を取り出すドラゴンブリード、白兵戦に持ち込むと相手に思わせる。
「くたばれ~~~っ!」
ジャンプしてドラゴンブリードを切ろうとするコロビ仮面の全身を床から生えて来た闇の触手が絡め取る。
「うげっ、気持ち悪い! ヒーローのくせに卑怯だぞ、エロ同人かこの鬼畜!」
空中で動きを止められたコロビ仮面が喚いて騒ぐ。
「鬼畜な事をされたくなければ、最近ヴィランと取引している白衣の集団について
吐いてもらおうか?」
ヘルグリム帝国がコロビ商会の事件に乗り出したのはヴィラン対策室から依頼を受けたと言う偶然だった。
その偶然を利用してドラゴンブリードがヴィランの事はヴィランに聞くと言う捜査法で自分達がとり逃した白衣集団こと財団Uについて調べようとする。
「は、白衣の集団? 知らん! 知っていたとしても無料では売らん! 一億円で情報を探して渡すから見逃してくれないか、良い買い物だぞ?」
知らないと答えつつ商売に持ち込もうとするコロビ仮面と期待外れだと知ったドラゴンブリード。
「そうか、ついでにお前らが食品を隠している冷凍庫も俺達が押さえているので
そう簡単に再起できるとか思うなよ?」
コロビ仮面の言葉をスルーして彼に非情な宣告するドラゴンブリード。
コロビ商会が食料品の転売の為に利用している冷凍庫の方は、エンプレスブリードが制圧に向かっていた。
「あ、あんまりだ~~っ! あっちはきちんと金を払ったのに~! ヒーローの癖に横暴だぞお前ら! お前らの方がヴィランじゃねえか! 鬼、悪魔、税務署!」
スーツを着ているのに血涙を流すコロビ仮面がドラゴンブリードを罵る。
「日本の税制度には不満はあるのは同感だが、文句なら牢屋で叫べ!」
倉庫の外にヴィラン対策室の牢獄への異次元ゲートを開けて、そこへコロビ仮面を投げ込もうと放り出したドラゴンブリード。
だが、彼の投げだしたコロビ仮面を受け止める者がいた。
「な、何だ? 誰だお前は!」
自分を捕らえた者が他にもいた事に驚くコロビ仮面。
彼を空中で捕獲した者、それは灰色のバトルスーツとバイザーで全身を包んだ
銀髪の美少女コピーキャットだ。
「テレポーターか? 新手のヴィランか!」
ゲートを消してドラゴンブリードが槍を構えて飛び出す。
ドラゴンブリードが迫る中、コピーキャットはコロビ仮面に尋ねる。
「貴方が買ったゲーム機は何処? 答えなさい」
「さ、差し押さえられた!」
素直に答えたコロビ仮面は、コピーキャットによりドラゴンブリードへと投げ飛ばされる。
「何っ! 喰らえ、トレントシュート!」
謎の闖入者によりコロビ仮面を投げられたドラゴンブリードは容赦なくコロビ仮面へ構えた三叉槍から放水攻撃を放った。
「ギャ~~~! データ転送&自爆!」
ドラゴンブリードの攻撃を受けたコロビ仮面は、爆散した。
データ転送と言っていたので、どこかにあるアジトでいずれ復活するのだろう。
そして、ドラゴンブリードとコピーキャットは出会った。
「で、君は何者だ? 事と次第によってはヴィラン対策室へご同行願うが?」
コピーキャットが敵か味方か判別できないので、武器を構えて警戒しつつ対話を試みるドラゴンブリード。
「私の名はコピーキャット今日はそちらに用はない、転移します」
名乗ったと同時にコピーキャットは姿を消した。
「は? 何だそりゃ?」
唖然としつつ地上へと降りたドラゴンブリードは変身を解いた。
「いきなり現れて消えやがった、わけが分からん」
謎の人物コピーキャットと出会った龍海、ここからヘルグリム帝国と財団Uの
闘いが始まるなど今の龍海には予想すらできなかった。
「龍海さ~ん♪ お待たせしました♪」
そんな龍海を背後から抱きしめる者がいた、柔らかな感触と甘い香りが龍海の心を
和らげる。
「ああ、アイリーンもお疲れ様♪」
「さあ、お仕事も終わりましたし我が家へ帰りましょう♪」
「いや、報告とかまだだから!」
「では、報告後にデートをしてから帰りましょう♪」
「わかった、わかったから俺をお姫様抱っこしないでくれ!」
アイリーンにお姫様抱っこをされる龍海、逆だろうとツッコむも無視されて
倉庫街を後にする事となる。
一方、財団Uの秘密のアジト。
「パパ、あいつからゲーム機を取り戻せなくてごめんなさい」
スーツを脱ぎ検査着姿のコピーキャットが白衣の中年男性であるチーフに謝る。
「ははは、良いんですよゲームよりも面白いデータが取れました♪」
コピーキャットがコロビ仮面に対してとった行動の数値が表示されたタブレットを見て笑うチーフ。
「私の性能、数字上がってたの?」
「ええ、良い数字が出てましたよ転移の速度も早まってます♪」
コピーキャットをほめるチーフ、育成シミュレーションを遊ぶ感覚で語っていた。
「わ~い♪ ご褒美貰える?」
開発者の笑顔に自分も喜ぶコピーキャット。
「ええ、何か欲しい物をカタログで選んで買ってあげますよ♪」
娘に欲しい物を自分で選ばせるという良い父親の顔をするチーフ。
彼らの背後では、戦車らしき乗り物が組み立てられていた。
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