第56話 龍の夫婦と猫のすれ違い

 「裏で誰かが何か動いているってのがありすぎる」

 「地球も大小さまざまなヴィラン組織がありますからね」

 最近の事件に裏があると思いを語りつつ龍海とアイリーンは秋葉原に来ていた。

 アイリーンは黄色いラインの緑ジャージにスカート。

 龍海は青いパーカーにストレッチパンツと私服だ。

 ヘルグリム帝国は自分達のフィギュアや同人誌やDVDのグッズ類を

通販だけでなくコミケやホビーショップに委託販売して稼いでいた。

 ヒーローが自分のグッズを自分でホビーショップへ納品しに行くと言うシュールな光景が展開された帰りである。

 「私達のグッズ、結構売れていて驚きました」

 「インぺリアルドラゴンのフィギュア作るの大変だったな」

 「転売対策もしないといけませんね」

 「父さんも昔、転売するヴィランと戦ったらしいしな」

 倒しても倒しても転売ヤーは出て来る、ヴィランによる転売事件もまだ撲滅できていなかった。

 

 「コロビ仮面って、ヴィランがいるコロビ商会とか要注意だね」

 「組織ぐるみで強盗して転売とかするみたいですからね、何度ヒーローに叩かれても蘇るしぶとい組織ですか? 資金源やらが気になりますね?」

 龍海の話を聞いてスマホでヴィランについて検索するアイリーン。

 「まあ、その辺はぶつかる事になったら考えよう」

 「ですねえ、そろそろお昼にしましょうか♪」

 昼食時になったので近くのラーメン店に入る二人。

 「全部乗せでお願いします♪」

 ガツンとカロリーを取りに行くアイリーン。

 「何時でもガッツリ行くタイプだね、塩分とか平気か?」

 普通盛りの龍海がアイリーンのカロリーなどを心配する。

 「龍海さんからは今晩たっぷり搾り取ってあげますね♪」

 アイリーンの顔は笑っているが、その目は獲物を狙う獣の目だった。

 だが、豚骨ラーメンを食べるアイリーンの表情や仕草が可愛らしく龍海は

その光景に見惚れていて幸福感を味わっていた。

 「はっ! 龍海さんからの愛を感じます!」

 そんな龍海の視線に気づくアイリーンと見惚れていた事がバレて恥ずかしくなり急いでラーメンをすする龍海。

 「恥ずかしがらずにもっと私を愛でてくれて良いんですよ♪」

 「……さて、何の事やら? 俺は何もしていない」

 追及を逃れようとする龍海。

 「ツンは入りませんから! もっと私にデレて下さい砂糖マシマシで!」

 「いや、お店の中が温かい視線になってるからやめようね」

 迫られると逃げようとする癖が出る龍海。

 「これは今夜は寝かさないコース決定ですね、お替わりをお願いしますニンニク大盛りで!」

 精が付きそうな量のニンニクが盛られた豚骨ラーメンを頼むアイリーン。

 「……すみません、同じのをお願いします」

 せめてもの抵抗でアイリーンと同じ注文で頑張ろうとする龍海であった。


 ラーメン屋での昼食を終え色々温まった二人。

 「……か、体が火照って来ました♪」

 「いや、にんにくたっぷり入れた大盛りのラーメン二杯食べればそうなるから!」

 「……うふふ、お腹いっぱいでしゅ~♪」

 「ニュータントでも食べ過ぎや取り過ぎは駄目だからな、真面目に運動するぞ」

 寄りかかりるアイリーンを抱き寄せる龍海、可愛いが油断し過ぎなパートナーを

守りながら歩く。

 

 一瞬、遠くの雑踏の中に銀髪の少女の姿が見えた気がした龍海。

 敵の可能性を感じたが、パートナーのコンディションとこんな所で戦うわけにもいかないとスルーを決め込み通り過ぎる龍海。

 一方、銀髪の少女コピーキャットも龍海を見つけるも無視する。

 「……あれが、ドラゴンブリード? 何か臭いから近づきたくない」

 人造ニュータントのコピーキャットは、数十メートル離れていても龍海達

のニンニク臭さを感じ取り接近は避けた。

 

 「パパのお使いが優先、まだ私達の存在がバレるわけにはいかない」

 コピーキャットは開発者であるチーフの指令である能力テストと物資調達の為に秋葉原へ来ていた。

 認識障害で周囲の人間に存在を認識させないように高速移動を試す中、望遠視力と嗅覚探知が龍海達を感知し高速思考で接触を回避を選択。

 コピーキャットは、実年齢が生後一週間の状態で自分の素材になったニュータント達の能力を急速に使いこなしていた。

 そんな彼女がとある量販店の前で、完売の張り紙を発見し落胆する。

 支給された端末で開発者であるチーフに連絡を取る。

 「パパ、あちこちのお店でパパの欲しかったゲーム機が完売してるよ?」

 悲しげな声で語るコピーキャット。

 「ええ、確認しました残念ですどうやらコロビ商会と言うヴィランに買い占められたようですね」

 秘密基地内でタブレットPCで通販サイトなどを確認しながら語るチーフ。

 「どうする? そのヴィラン達は私が潰しちゃう?」

 確認を取るコピーキャット。

 「いいえ、この程度の連中はヒーローに始末させましょう」

 穏やかな口調だがチーフは内心怒っていた、この男は自分の趣味や欲望には全力投球するという思考の持ち主である。

 「わかった、早く帰るね」

 チーフに返答するコピーキャットはビルの谷間の闇に消えた。

 ヒーローとヴィランは引かれ合う、偶然のすれ違いの次は必然の出会いか?

 ドラゴンブリード達とコピーキャットの対決の時は徐々に近づいていた。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る