第46話 ドラゴン・ミーツ・アフター86その2

 「ところで繋太郎君? あなたのお祖父ちゃんはどうしてますか?」

 アイリーンが繋太郎に尋ねる、繋太郎の祖父は自分と龍海の息子であると感じ取っていた。

 「アイリーンが怖いから来ないん……ぶっ!」

 龍海が言いかけた所でアイリーンが豊満な胸で龍海の顔を抑え込む。

 「も~♪ 龍海さんったら、皆さんの前で~♪」

 口調は可愛いがこもってるのは怒気、アイリーンの胸に挟まれた龍海は気絶する。

 「我がプリンス、いつの世も我らが帝室は女性が強いようで」

 ヴォイドが言葉を選ぶ。

 「そうだね、知ってたけど」

 そばを食べつつ呆れる繋太郎、先祖のイチャラブを見せられてげんなりだ。

 「繋太郎ちゃんもおっぱいが欲しいの♪ 大おばあちゃまのでよければどうぞ♪」

 リーファが胸をアピールする。

 「……え~っと、食後にお時間があればで」

 繋太郎も言葉を選んで辞退した。

 「まあ、おっぱいはともかく君達がこの時代に来たのは何かが起こるからか?」

 進太郎が繋太郎に尋ねる。

 「皆にはこれからの事なんだけど、お正月にヴァンパイア族が攻めて来るんだ!」

 繋太郎の言葉に全員の目が戦闘モードになる。

 ヴァンパイア族、それは遥かな昔にヘルグリム帝国のある魔界の土地を支配していた邪悪な吸血鬼の一族。

 人造生命族にとっては忌むべき造物主、人狼と人魚にとっては異世界から来た邪悪な侵略者。

 ヘルグリム帝国におけるパブリックエネミーであり、吸血鬼根絶法と言う法律ができた原因である。

 かつて世界で猛威を振るったヴィラン組織、吸血夜会はヴァンパイア族に連なる者が起こした組織である事も調査により判明している。

 「我らの時代の記録によれば宇宙よりヴァンパイア族が襲来とあるのですが、その後どう乗り越えたのか?と言う部分において全ての資料に記録の空白期間が発生し調査の為にプリンスと私がこの時代に参りました」

 ヴォイドが来訪の理由を説明する。

 「空白か、何者かが介入した結果かもな? ならば、我々が勝利してきちんと歴史の穴を埋めよう」

 進太郎が決意をする。

 「家の先祖が追い払った敵が地球に攻めて来たとなれば、動かない道理はないな」

 アイリーンの胸から抜け出した龍海も闘志を燃やす。

 一家が戦う気になった時、食卓で歌番組を流していたテレビがニュースを報じた。

 「年末歌決戦の途中ですが臨時ニュースです、先ほどNASAの衛星が木星付近で謎の巨大物体を発見! これを受けアメリカ政府は宇宙軍の出動を決定しました」

 場面が切り替わり宇宙ステーションから白い剣と言うべき姿をした人類初の宇宙戦艦スペースネルソンが発進していく姿が流された所でニュースが終わる。

 「アメリカが動いたか、ならばこちらも動こう繋太郎君達も来なさい♪」

 進太郎の言葉に皇帝一家は食事を終えると、魔界へと向かった。

 

 ヘルグリム帝国の海は黒い、だがこの日はその濃さが増していた。

 よく見れば海上にはずらりとマッコウクジラの群れが並んでいるのがわかるだろう。

 ただのマッコウクジラではない、マッコウクジラ型の魔獣を改造した生きた万能戦艦であるダイマッコウ号の群れだ。

 その中でも百メートルを越えたダイマッコウ号に皇帝一家は搭乗していた。

 「こ、これが伝説のダイマッコウ号! 凄い大きい!」

 繋太郎が感動する。

 「これは素晴らしい、歴史の瞬間に立ち会えるとは思わなかった」

 ヴォイドも感動する。

 「では、演説はたっくんに任せよう♪」

 進太郎が龍海にマイクを渡す。

 「俺かよ! 帝国将兵に告ぐ、行先は太陽系! 敵は帝国建国以前からの怨敵であるヴァンパイア族っ! 奴らの船を撃破して新年の祝いの花火に変えてやれっ!」

 物騒な演説をする龍海。

 その言葉を聞いた将兵たちの士気は上がった。

 空に巨大なブラックホールが開き、巨大な鯨型の魔獣達が次々と穴の中へ飛んで行く。

 太陽系を舞台に、ヘルグリム帝国とヴァンパイア族の戦いが始まろうとしていた。

 この戦いが切欠で、後の世にニュータントの力を宇宙開発に利用するという発想を人類に与える事になるとは誰も想像していなかった。

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

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