第39話 ハロウィンと死者の日

 「体育祭が終わって、文化祭か」

 ルチャ大会と言う名の体育祭から早一月半、ハロウィンと死者の日と兼ね合わせた文化祭だ。

 「この学校は、行事を兼ね合わせたり混ぜる事が多いですよね?」

 アイリーンが疑問を口にする。

 「家がなんでもごちゃ混ぜにしようってだけ、クリスマスと誕生日も一緒だし」

 龍海が愚痴る。

 「一緒に祝えてお得ですね♪」

 アイリーンは無邪気に笑う。

 「何でも纏めれば良いってもんじゃないよ」

 屋台で買ったじゃこ天をかじりながら不満をこぼす龍海。

 龍海とアイリーンは、出し物の焼きそばの材料の買い出しを終えるとクラスから

お役御免と追い出された。

 「じゃこ天、ほんのりとした甘みと塩味が効いていて美味しいですね♪」

 アイリーンもじゃこ天を食べる。

 「ああ、おやつにも主食にも使えるソウルフードだよ」

 ご当地ヒーローのようにじゃこ天の魅力を語る龍海。

 「龍海さん、私とじゃこ天のどちらがお好きですか♪」

 アイリーンが笑顔で尋ねる。

 「君だよ、かけがえのないのはアイリーンだ」

 真剣にアイリーンを見つめて応える龍海、そんな龍海の顔に頬を染めるアイリーン。

 「龍海さん、ここぞという時に決めてくるのはズルいです♪」

 「ここぞという時に決めるのがヒーローだから、俺は君のヒーローだよ?」

 「今は私の心をかき乱すヴィランです、私が龍海さんのヒロインです!」

 そんなアイリーンの口にじゃこ天をすっと突き出すと、アイリーンが反射でじゃこ天を口に咥える形になる。

 アイリーンが咥えて半分突き出たじゃこ天に食らいつくと同時に、龍海はアイリーンにキスをした。

 この時のキスはほんのり塩の味がしたと後のヘルグリム帝国皇帝列伝に記載されてポッキーゲームならぬじゃこ天ゲームが、ヘルグリム帝国の恋人達に流行する事になるのは後のお話。

 「……って、食べ物で遊んではいけません!」

 しっかりキスをしておいて、顔を赤くしながら怒り出すアイリーン。

 「はっはっは、今更遅いよ♪」

 「やっぱり、龍海さんは悪い人です!」

 「君に仕置きされるなら受けるよ♪」

 バカップルモードに入った二人は、甘い空気を学園内に垂れ流し出した。

 龍海達に刺激されたのか、学園祭を楽しむ他の生徒や一般客のカップル達も

じゃこ天を買いに行く者達が現れると本人達が無意識の所でじゃこ天屋台の売り上げに貢献していた。

 「あらあら♪ たっちゃん達は楽しんでるわね♪ これまでは、学校を抜け出して海を眺めていたあの子が青春を謳歌しているってママ嬉しいわ♪」

 龍海達のバカップルぶりは、理事長室でリーファにモニタリングされていた。

 「じゃこ天でキス、私達も旦那様としなくちゃ♪ アニーさんにお家でじゃこ天を作ってもらいましょう♪ うふふふ、待っていてくださいね旦那様♪」

 こうして、進太郎がじゃこ天を咥えた妻達に襲われる事が決定した。

 

 龍海達は、じゃこ天で変なブームを作りつつ文化祭を回る。

 ハロウィンや死者の日と兼ね合わせて仮装OKな文化祭は誰も彼もが

普段とは違う姿をしていた、魔物に対抗するクノイチの格好をした女性教諭とか

オークにひどい目にあわされそうな姫騎士とかいたがそう言ったものはアイリーンが龍海の目をシールドして守っていた。

 「え~と、何で時々目隠しをするのかな?」

 「龍海さんと私の精神衛生を守るためです」

 「心理状態を色で表すアニメじゃないんだから」

 「私と龍海さんの恋路を邪魔する存在はエリミネートします♪」

 「洒落にならねえから止めて!」

 夫婦漫才をしながら展示のコーナーへ行ってみる二人。

 複数の文科系のサークルが大きめの教室を使い、それぞれの部活動の成果を発表したりしている。

 「漫画研究会で~す、新刊一冊500円で~す♪」

 「文芸部も冊子を販売してま~す♪」

 漫研と隣になった文芸部は互いに火花を散らしながら商売をしていた。

 「模型同好会は、キット販売してま~す! 在庫処理にご協力くださ~い!」

 模型同好会の目玉商品は、警察のパワードスーツなどを着たヒューマン・ヒーローやヒーロー達のフィギュア等を販売していた。

 「すごい、良くできてますね」

 アイリーンがフィギュアの出来に感心するが、龍海の方は苦い顔。

 「そうだね、学校で知ってる人のフィギュアを見るとは思わなかったよ」

 父親や師匠の関係で、交流のある先輩ヒーロー達の商品から目をそらす龍海。

 「腹がすいたので、学食とか食べ物系を見て回ろう」

 アイリーンの手を引き、龍海は文科系サークルの展示コーナーを出て行った。


 「こ、これわ! ほ、本格的なインドカレーです♪」

 白いプラスチックの皿に盛られた大盛りのインドカレーに舌鼓を打つアイリーン。

 「カレー研究会のインドカレーはガチだからな、何故うちの学校にいるのかがわからない」

 校庭はズラリと食べ物の模擬店が並んでいた、中央にリングがあるのは体育祭から片付けていないのではなく新たに設営した物だ。

 文化祭を楽しむ龍海達、このまま平和に文化祭めぐりが終わるのか?

 はたまた、そうは問屋が卸さないのか?


 次回、ハロウィンの刺客が迫る!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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