第38話 ルチャ大会で義妹と対決
「うちの体育祭って、ルチャ・リブレだけなんですか?」
アイリーンが、龍海に尋ねる。
「ああ、母さんの趣味だ」
教室の窓から外を眺めながら龍海が額を手で押さえながら答える。
今日は力華学園の体育祭、グラウンド中央には特設リングが設営され生徒達が己の能力を使い超人的なルチャの試合を始めようとしていた。
普通の学校の体育祭とは違い、力華学園はルチャ・リブレ大会で観客を呼び試合を見せている。
龍海やアイリーンは、能力差と運営サイドの立場から体育祭への参加を禁止されていた。
ルチャ・リブレなのは、メキシコ出身である理事長のリーファの独断専行だ。
「お義母様、学生時代はルチャの選手だったそうですね」
「それ以前に、子供のころの父さんを締め落としてたとか」
母のエピソードを思い出す龍海、自分も締め落とされた事があるので震える。
「ちなみに、文化祭はハロウィンと死者の日の祭りも兼ねてるから」
死者の日はメキシコのお盆で、ハロウィンを前夜祭として三日間の祭りが行なわれる。
力華学園の文化祭もそれに合わせて行われるので、カオスな事になる。
「毎日がハロウィンな感じですね♪」
アイリーンが無邪気にほほ笑む、この後彼女に面倒くさい戦いが待ち受けている
という事も知らずに。
「さて、誰が対戦するんだろうな?」
龍海がリングを見ると、まだ秋だというのにマットの上に粉雪が降りだした。
そして、リングの上に現れたのは学園の理事長に瓜二つの姫カットポニーテールの
巨乳美少女が現れる。
柔道着の下にスパッツにシューズとサンボ選手のような格好だ。
「あ、あれは雪花さん! どうして、こちらに来られたんでしょうか?」
アイリーンが驚く。
「俺も知らない、何してんだあいつわっ!」
龍海が頭を抱える中、雪花はマイクを取りだして叫んだ。
「アイリーンさん、私は貴方を義姉とは認めませんっ! お兄様も渡しません!」
それは、アイリーンへの宣戦布告だった。
「……龍海さん、姉として義妹へお仕置きしてきますね♪」
アイリーンが、龍海へ微笑むと跳躍しリングの上に降り立った。
雪花からマイクを素早く取って、こちらもマイクでアピールする。
「雪花さん、その挑戦お受けします! 私はあなたの義姉ですからっ!」
アイリーンが、雪花の挑戦を受けた!
この事態に明人、ギュンター、幸太と龍海の異母兄弟達が龍海を教室から連れ出してリングへと連れていく。
「ちょ、お前ら何すんだ!」
異母兄弟達に担がれリングの上へ投げ入れられた龍海。
「たっつんがレフリーをやるんだよ、責任取れっ!」
異母兄弟の幸太が代表で叫ぶ。
「家族間の調停も皇帝の仕事だ」
明人が冷たく言い放つ。
「たっちゃん、頑張れ♪」
ギュンターは気楽に言い放った、アイリーンと雪花も同意してるようなのでやる事にする。
「ただ今よりダークマッチ、アイリーンVS雪花の試合を開催します!」
龍海の宣言と同時にゴングが鳴り、ヘルグリム帝国の義姉妹喧嘩が始まった。
「正妻として何時いかなる時、誰であろうと恋敵は倒します!」
アイリーンの闘魂は燃えていた、たとえ義妹であろうとも龍海は渡さない。
「私がお兄様と一番長くいたんですっ!」
お兄ちゃん大好きブラコンドラゴンと化した雪花、アイリーンとがっつり手四つで組み力比べに挑む。
「はあああっ!」
雪花が力を入れて押すがアイリーンも踏ん張る。
動いたのはアイリーン、雪花の押す力をサイドに回って受け流し背後に回る。
だが、雪花には尻尾があった。
その尻尾をロックしたアイリーンは力を込めて振り回した。
「姉スイーーーーーーングッ!」
尻尾を使いジャイアントスイングで雪花を回して放り投げたアイリーン!
飛ばされた雪花も、尻尾をコーナーポストに巻き付けて立ち直る。
今度は雪花がコーナーポストに上がり叫ぶ
「お兄様、愛してますわ~~~っ!」
叫びと同時に飛んで、フライングボディプレスをしかける雪花。
アイリーンは、雪花の落下位置を予測して彼女の真下に来るように移動する。
落下してきた雪花を受け止め、彼女の首と足に腕を絡めて曲げるように決める。
「姉バックブリーカーですっ!」
ギリギリと曲げて、雪花の首と腰と足をアルゼンチンバックブリーカーで攻めるアイリーンは本当に未来の義妹といえども容赦がなかった。
雪花をマットに叩き落し、押さえつけてフォールを狙うアイリーン。
「ワン・ツーッ!」
しかし雪花も諦めておらず二カウント目で返し、寝技に持ち込む。
倒れたアイリーンの腕を引き込み首を足で挟んで締めに行く。
ヘルグリム帝国のお家芸とも言うべき技、三角締めで落としに行った。
だが、アイリーンも負けてはいないエスケープで抜け出す。
回り込んで雪花の腕を取りアームロックで反撃に出た。
雪花も抵抗するが抜けず、ギブアップをした。
試合首領のゴングが鳴り響き、アイリーンが勝利を掴み取った。
「負けましたけど認めませんわ!」
まだ認めない雪花、アイリーンは笑顔で
「何時いかなる時でも、恋敵の挑戦は受けて立ちます♪」
と宣言するのであった。
こうして、義理の姉妹の対決はアイリーンの勝利となった。
だが、アイリーンにこの後も恋敵との対決が待ち構えている事をこの時はまだ
知る由もなかった。
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