第37話 戻って新学期

 

 エジプトから戻れば新学期、龍海もヒーローから学生モードに戻っていた。

 ダブルブリードの二人は遺跡破壊などをやらかしたが、大人の事情で龍海達は凶悪なヴィランの基地を壊滅させたという事で収まり現場は立ち入り禁止。

 水又教授の研究はお蔵入りとなった。

 夏休みも終わり秋の始まりである。

 

 「ふ~、エジプトではひどい目にあったぜ」

 新学期の投稿初日から机に突っ伏す龍海。

 「ええ、あのマミーラと言うヴィランは恐ろしい敵でした」

 いつの間にか龍海の隣の席にアイリーンがいた。

 「それは同意するが、しれっと君が俺の隣の席なのはどういうことかな?」

 疲労の原因の半分はお前だという目で、アイリーンに尋ねる龍海。

 「龍海さんがお休みの時に、席替えがあったんですよ♪」

 ニッコリと有無を言わさぬ笑顔で答えるアイリーン。

 「その席替えの正当性が非常に気になるんだが?」

 陰謀の気配しかしなかったが、龍海は藪を突く事を避けた。

 下手をすると家族と言う、ヴィランより強大な敵を相手にしないと感じたからだ。

 「大丈夫ですよ♪ 学校では私が龍海さんを、ドラゴン係としてお世話します♪」

 アイリーンの言葉に噴き出す龍海。

 「いや、ドラゴンがかりって何? 俺は飼育動物か!」

 「は~い、龍海さんどうどう♪」

 龍海に抱き着き背中をなでるアイリーン。

 「俺は馬じゃないんだが、クラスの目とか色々あって逆らえない」

 龍海、嫁には勝てなかった。


 「アイリーンさん凄い、あの凶暴なマザコンドラゴンを飼いならしてるわ!」

 「彼女の能力って、ドラゴンマスターなの?」

 「学園最強なのは実は彼女なんじゃ?」

 「彼女を怒らせると危険ね」

 「あのマザコンドラゴンを制した彼女は学園の聖女よ!」

 クラスの女子達がガヤガヤ騒ぎ出す。

 クラス内でのアイリーンの地位が上がった。

 アイリーンはドラゴンマスターの称号を手に入れた。

 アイリーンの発言力が上がった。

 ついでに龍海のストレスが上がった。


 龍海とアイリーンの様子に、春の大会でチームを組んだ甘粕力と鯖江光子は

戸惑っていた。

 「あのたっつんが、リア充になってる」

 「変わるもんだよね、あの二人結婚してるんだって」

 鯖江光子がヘルグリム帝国の新聞を見せる。

 「結婚って、早すぎねえ?」

 力が驚く。

 「ヘルグリム帝国は早婚が普通らしいからね、もしかすると彼女は来年には一児の母になっているかもしれないよ?」

 光子がアイリーンを見やる。

 「理事長も昔はそんなだったらしいしな、たっつんの家って大変そうだな」

 力は龍海達を遠めに見た。

 

 「で、気づくと何でチームメイトから距離を取られているんだ俺は?」

 力達が自分から距離を取っている事に気づく龍海。

 「きっと、空気を読んでくれてるんですよ♪」

 さらっとしてるアイリーン。

 「いや、俺をクラスから孤立させないで? 俺、友達が少ないんだから!」

 「龍海さんには、私がいるじゃないですか♪」

 「いや、ヤンデレか!」

 「デレデレです♪」

 「いや、惚気じゃなくて!」

 龍海がツッコむ。

 「はい、なかよ~し夫婦めおとっ♪」

 アイリーンがどこに向けたのか指をビシッと突き出す。

 龍海とアイリーンの夫婦漫才を、クラスメート達は生温かく見守っていた。

 

 「は~い、赤星君達はお後はよろしいかしら? ホームルームを始めますよ」

 担任の川原先生が入ってくる。

 「皆さん、夏休みは楽しんだようねその勢いで今学期も頑張りましょう」

 先生の言葉に皆がは~いと返事をする。

 「体育祭に文化祭、ハロウィンにクリスマスと行事が待ってますからね」

 先生が今学期の行事を上げる。

 「秋も色々疲れそうだぜ」

 行事を聞いて、龍海は机に伏した。

 「この学校って、行事が多いんですね♪」

 龍海と反対に、アイリーンは目を輝かせている。

 「行事も大事だけど、授業に出て勉強もしっかりしましょうね」

 川原先生が、龍海へと釘を刺す。


 そして、ホームルームが終わった。

 授業をすっ飛ばして、昼休み。

 「龍海さんお昼ですよ、一緒にいただきましょう♪」

 アイリーンが大きな弁当箱を取り出す。

 「それは構わないが、せめて二人きりで食わないか?」

 龍海は教室で飯を食いたくなかった、クラスメートの視線が痛い。

 「大丈夫です、私達の間に割り込める人はいませんから♪」

 アイリーンが笑顔で答える。

 「うん、腹減ってツッコむ気力がないから食べよう」

 龍海は抵抗をやめた。

 「お義母様と一緒に作りました、タコスチャーハンです♪」

 アイリーンが弁当箱を開けると、タコスの具で炒められたチャーハンと言う

二人分の多国籍な料理がそこにあった。

 「そうなんだ、いただきます♪」

 「いただきます♪」

 二人ともレンゲでチャーハンを掬って食べる。

 「おお、美味いぜ♪」

 「ありがとございます♪」

 「はい、あ~ん♪」

 龍海の方からアイリーンへ、チャーハンを食べさせようとする。

 それに応じるアイリーン。

 「では私からも、あ~ん♪」

 今度はアイリーンが、龍海へチャーハンを食べさせる。

 龍海とアイリーンは存分にいちゃつき、教室を砂糖まみれの甘い空気で満たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

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