第35話 罠を越えて

 「さて、まずは第一関門突破かな?」

 「そうですね、急ぎましょう」

 ドラゴンブリードの言葉に同意するエンプレスブリード。

 再びバイコーンチャリオットに乗り込み、敵の本陣を目指す。

 

 二人が敵の本陣である黒い岩山へと進む、次に彼らの行く手を阻んだのは

夥しいサソリの群れだった。

 「蹴散らすぜ、燃えろバイコーン!」

 ドラゴンブリードの叫びに応え、バイコーンが黒い炎に包まれる。

 サソリ達を焼きながらミンチにしていくWブリードだったが、サソリ達の骸が

磁石の様に骸に吸い付いて行き人の形を取りサソリの怪人軍団が誕生した。

 「倒したはずのサソリ達が怪人に!」

 エンプレスブリードが驚く中、サソリ怪人の軍団は二人の行く手を塞ぐように集結し毒針付きの尾を槍にして構え突撃して来た。

 「ファランクスは、ギリシャだろうが!」

 怪人軍団の突撃の突撃にひるまずドラゴンブリードは、バイコーンチャリオットで突っ込む。

 「砲手はお任せ下さい、エンプレス、バーーーーストッ!」

 エンプレスブリードの胸のピンクのハートに金色の山羊の頭が浮かび上がる。

 肋骨を守る金色の牙が開かれ、ハートマークから先端が山羊の頭を象ったビームが放たれてサソリ怪人の軍団を消滅させ道を切り開く。

 「流石♪ このまま行くぜ!」

 戦車を牽引するバイコーンの尻を叩き、戦車の速度を上げるドラゴンブリード。

 

 しかし、砂漠を走っていたはずの彼らの行く手に突然、緑が生い茂るジャングルが発生した!

 突然の出来事に、バイコーンチャリオットは横転し消失魔界へと送還されると戦車から放り出されたドラゴンブリード達は落下の衝撃で変身が解除された。

 「痛たたたた、大丈夫かアイリーン?」

 落ちる前にエンプレスブリードを抱きしめていたので、アイリーンを受け止める形になった龍海。

 

 一方、山中の神殿の中で様子を窺っていたマミーラ。

 「おお、この女の記憶が再現されたようじゃな♪」

 寝台型の装置で眠る、水又教授と外の様子を交互に見やるマミーラ。

 突然のジャングルの発生は、水又教授が出かけた南米のジャングルだった。

 そして、マミーラは変身が解けた龍海を見る。

 「ほほう、中々の体つきに我の好みの顔、我の婿に相応しい男児が来よった♪」

 マミーラが龍海を見て艶かしく舌なめずりをする。

 「連れておる女子はいらぬな、あの男児の目の前で始末してやろう♪」

 マミーラは目を金色の蛇の目にして龍海に目を付けた。

 「くっくっく、やって来るが良い愚かな娘よ! 貴様の愛する男児は我が奪う!」

 マミーラは高笑いを上げた。


 そしてカメラは龍海達に戻る。

 「……寒気がする、エジプトに来たのに」

 「……あの山から邪悪な気配がします、龍海さんの貞操の危機的な!」

 「突然、嫌な事言わないでくれ!」

 悪寒に襲われる龍海、アイリーンは反対に闘志を燃やしていた。

 「ご安心ください♪ 龍海さんは誰にも渡しません!」

 決意を燃やすアイリーン。

 「まあ俺も君を誰にも渡したくない、ただ俺より自分の身を大事にしてくれ」

 そんなアイリーンを案じる龍海、彼にはアイリーンの方が心配だった。

 

 怪しいジャングルの中を、乗り物で突っ切る気にはなれなかったので龍海達は

徒歩で進む。

 

 進んだ先には、底なし沼で溺れる腕に時計の後がある現地民らしき人物。

 「……これは、助けた方が良いんでしょうか?」

 「タスケテー、タスケテー!」

 現地民らしき人物がカタコトの日本語で、笑顔で助けを求める。

 「罠っぽいから、スルーしよう」

 「そうですね、何だか大昔のバラエティ番組みたいですし」

 現地民を無視して先を目指すと、ジャングルの奥に洞窟があった。

 「何だろう、敵が何をしたいのかまったくわからない」

 龍海は敵の思惑を計りかねていた。

 「もしかすると、敵が仕掛けた手順を守らないと水又教授の命が危ないのでわ?」

 アイリーンの推測に、龍海が頷く。

 「多分そういう事なんだろうな、でなきゃ砂漠にジャングル出す意味がわからん」

 洞窟に龍海達が入ると、中には白骨が転がっていた。

 「やけに綺麗な白骨ですね」

 アイリーンが驚く。

 「う~ん、何だろう? ちょっと一休みして水又教授について調べてみよう」

 龍海がスマホを取り出して水又亜美で検索する、その検索結果は以下の通りだった。


 ・民俗学者水又亜美の冒険隊、ジャングルの黄金郷伝説に挑む。

 ・民俗学者水又亜美の冒険隊、怪獣伝説を追う。

 ・民俗学者水又亜美の冒険隊、アジア野人探訪。

 ・民俗学者水又亜美の冒険隊、イギリス吸血鬼紀行

 

 「え~と、ドキュメンタリー風の番組出演が多いな」

 検索結果とネットが繋がった事に龍海が愕然とする。

 「これって、民俗学者さんのお仕事なんでしょうか?」

 アイリーンが首をかしげる。

 「民間伝承とかの研究だから遠すぎるけど、体張ってる人なんだな」

 龍海が変な所で感心する。

 「もしかして、このジャングルや洞窟は教授の記憶から生み出されたとか?」

 アイリーンが正解に辿り着くと同時に、白骨が集まり怪人に変化して襲って来た。

 「だとしたら、さっさと教授を助けないと面倒な事になるな!」

 龍海が、白骨怪人を蹴り飛ばしアイリーンを庇う。

 アイリーンもフランケンアイリーンとなり鋼の腕で敵を粉砕する。

 

 その後、毒蜘蛛怪人達を蹴散らしてようやく龍海達はエジプト風な石造りのピラミッドの中への突入に成功した。

 「やっとここまで来たか、この奥がボスの間かな?」

 石造りの扉が開くと、そこは広い空間だった。

 壁の燭台に炎が灯り、室内が明るくなる。

 

 部屋の奥には玉座があり、そこには白いワンピース状のドレスを纏ったおかっぱ頭の豊満な褐色の美少女が座っていた。

 「よく来たな侵入者よ、我が名はマミーラ! この世界の新たな王だ!」

 マミーラが名乗りを上げる。

 「お前が、調査隊を殺して教授をさらった犯人か!」

 龍海がマミーラを睨んで叫ぶ。

 「ほほう、その真剣な眼差しも良いな♪ そなた、我の夫になれ♪」

 マミーラが龍海に手を伸ばす。

 「そうはさせません、龍海さんは私の夫です!」

 アイリーンが、エンプレスブリードへと変身する。

 

 次回、主人公を差し置いて正妻戦争が始まる!

 

 

 

 

 

 

 

 


 



 

 

 

 

 


 

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