第21話 デーモンアーマーの力 前編

 かくして、俺のゴールデンウィークは父さんから力を貰った位で終わった。

 「さようなら、俺の夢。デーモンアーマーは使わない方が良いかな?」

 やはりデザインが悪の幹部っぽいのと、股のバイコーンの頭がヤバい。

 そして何より、父さんの意識も来るのがマズイ。

 親の干渉が煩わしいと言うだけでなく、俺が力を使うせいでデーモンブリードが必要とされる事態に対応できなくなるのがマズイ。


 デーモンブリードの重力を操る能力などは戦闘だけでなく、自然災害や大事故の対応にも役立てられていて特に海難事故ではメイママと組んで船の救助のみならず重油などで汚染された海を浄化するなど悪魔なのに神対応だ。


 津波を押し返したり台風を吹き飛ばしたりと天候操作じみた仕事で人助けをする父さんの姿は誇らしい、父さんは家族だけの父さんではないのだと力を得たことで改めて思い直した。

 父親自慢をするわけではないが、デーモンブリードは俺が敬意をいだくヒーローである事には変わらない。


 最も、どうやって父親を乗り越えるとかがわからないと言う悩みがある。

 

 この関しては一度父さんに相談した事があったが、当人からは親子で比べあってどうする? そんな評価は後の歴史家にでも勝手にやらせておけと一蹴された。


 「身に付けると父さんの意識まで来るとは思わなかった、何と言う二人羽織か」

 父さんには悪いが、あの人と似たような事ができるだけの方がありがたい。


 そんな事を想いながら俺は浜辺に来て海を見ていた、海は良い。

 俺が海を眺めていると、後ろから見知った気配がやって来た。

 

 「よ、龍海♪ 相変わらずお前は海が好きだな♪」

 声をかけて来たのは父の幼馴染で師匠である元気さんだ。

 

 「あ、師匠! お久しぶりです!」

 俺は師匠に挨拶をする、ここの所あちこちで働いていたらしい。

 この師匠も、俺だけの師匠ではないと感じた。


 この人が俺の師匠になった経緯は、父さんが学生時代に頼んだらしい。

 甘やかす事も無茶はしても、無理をさせる事はない指導の良い師匠だ。

 

 「聞いたぜ~♪ デーモンアーマーだっけ? 見せてくれよ♪」

 師匠が楽しそうに言ってくる、というか楽しんでやがる。

 

 「勘弁して下さいよ、父さんの意識まで来るんですよあれ?」 

 正直に頼む、マジで勘弁して欲しい。


 「お~♪ お前も、そう言う年になって来たか♪」

 弟子の言葉に元気は微笑んだ。

 「どういう事ですか、師匠?」

 俺は師匠に聞いてみた。


 「お前も父親離れしてきてるって事だ、弟子の成長を実感できて俺は嬉しいぜ♪」

 元気が笑う。

 「……そういうもんなんですかね?」

 正直、師匠の言葉は今一つよくわからなかった。


 「よ~し、んじゃお前に進ちゃんの恥ずかしいエピソードとか語ってやるか♪」

 元気は上機嫌で父さんの過去のエピソードを語ろうとする。


 「待て~~~~~いっ! 元気! お前、家の息子に何を吹き込もうとした!」

 元気師匠が進ちゃんと呼ぶ、父さんが飛んできて師匠と手四つで組み合った。


 「よ~う、親友♪ お前の学生時代の武勇伝をしっかりと語ってやろうとなあ♪」

 元気が悪い笑顔で言う。


 「ほ~う? それはお前の恥ずかしい話も語る事になるぞ?」

 父さんも悪い笑顔で師匠を睨む。


 「この人達は良い大人なはずなのに、何やってるんだろ?」

 幼馴染同士である師匠と父親が組み合う中、俺は海を見て溜息をついた。


 だが、そんな平和な一時は終わりを告げた。

 「おい? あのフェリー、何かこっちの方に来ようとしてねえか?」

 視力の良い元気師匠が、不審な動きをするフェリーを発見した。


 確かに、港のないこっちの浜にフェリーが来るなんてありえない。

 「よし、変身するぞ!」

 やる気を出した父さんに俺と師匠が頷く。


 「「変・身っ!」」

 俺達三人は同時に変身した。

 

 「今こそデーモンアーマーを試す時だ、使ってみなさい」

 デーモンブリードが俺に促す。


 「え? 父さんの意識がこっちに来ちゃうんじゃ?」

 そうなった場合、面倒な事になる。

 

 「大丈夫、今度はそういう事は無いから」

 父さんの言葉を信じる事にした俺は、デーモンベルを取り出して鳴らした。

 空に暗い穴が開き、デフォルメされたバイコーンに乗ったデーモンブリードが現れて俺と衝突し俺を黒い悪魔の鎧が覆った。

 

 「それじゃあ、インストラクションを始めるか。まずはバイコーンを呼ぶ!」

 父さんが自分の乗騎であるマシンバイコーンを召喚し、レッドブレイズ師匠と相乗りした。

 それに続いて俺も、股のバイコーンの角を回すとブヒヒヒ~~~ン! と

バイコーンの頭が嘶きいつの間にか俺は鞍付きのバイコーンに跨っていた。


 二人の悪魔の騎士と炎の魔神が、二頭のバイコーンで海を駆けて行く。

 「デーモンアーマーの機能その一、バイコーン召喚はクリアだな」

 デーモンブリードが喜ぶ。って、喜んでる場合じゃないだろ父さん!


 「いや~、お前らその姿はマジで親子っぽいな~♪」

 レッドブレイズ師匠は呑気だ、経験から来る余裕だろうか?


 「師匠~!」

 俺は師匠に唸る、師匠らしく真面目にしていただきたいのですが?

 

 「唸るな、力むな♪ こういう時こそリラックスしろ、助ける相手に余裕がないと要救助者が不安になるだろ?」

 師匠が俺を諭す、いう事は正しいが納得できないし今の悪魔みたいな外見で余裕な態度だと悪の幹部っぽくてイヤなんですけどっ!


 俺は不安ながらも、父と師匠と三人で仕事に挑むのであった。


 




 


 


 

 

 


 

 

 

 

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