第20話 新アイテム完成

 人生には、色々な転換期がある。

 まさか、幼い日の夢がこんな形でやって来るとは思わなかった。

 これから語るのは、父さんからもらったアイテムで俺が夢に決着をつける話だ。


 「父さん、これは一体何? 小さい呼び鈴みたいだけど?」

 父さんに呼び出された俺は、執務室でUSBメモリ程のサイズの呼び鈴みたいな

アイテムを見せられた。

 「そう、まさに呼び鈴だ。それも力を呼ぶパワーアップの呼び鈴だ」

 父さんが摘み上げた黒く小さい呼び鈴から、何か親しみのある力を感じた。


 「パワーアップ? 使ったらどうなるか気になるんだけど?」

 父さんが呼び鈴を差し出して来たので受け取ると、それはズブズブと俺の掌に沈んでいった。

 「え! いや、ちょっと! 何か中に入っちゃったんですけど!」

 突然起きた衝撃的な出来事に俺は混乱したのに対して、父さんは微笑んでいた。


 「大丈夫だ、問題ない♪」

 にこやかに告げる父さん。


 「いや! 異物が体内にって問題じゃ?」

 まだ混乱の抜けきらない俺、生まれた頃から低い正気度が下がってる気がする。


 「問題ない、それはモンスターベルがたっ君を認めた証だから」

 呼び鈴の名称を言う父さん、モンスターベルって? と俺が思った瞬間に俺の脳内にすべての情報が流れ込んできた。


 「うん、大体分かった。これ、使いこなして見せるよ」

 念じて掌からモンスターベルを取り出して父さんに見せる、何はともあれ手にいれたからには練習しないとな。


 まずはドラゴンブリードの姿に変身、次にモンスターベルを取り出して父さんの目の前で鳴らしてみる。


 俺の目の前で父さんが執務机に倒れ伏すと同時に、父さんの体から小さくデフォルメされバイコーンに乗ったデーモンブリードが飛び出して俺にぶつかって来た。


 山羊の頭を模したマスク、肩アーマー、胴鎧と四ヶ所ほど山羊の頭が付いた黒い悪魔の如き騎士鎧が俺の全身を包む。

 『使い時には注意して欲しい、トイレ中とかでも意識が持って行かれるから』

 胴鎧になっている山羊の頭から父さんの声が聞こえる。


 「父さん? 山羊の頭、多くない? そして、何で?」

 初めてのフォームチェンジの感想は、山羊の頭が多すぎるとしか言えなかった。

 

 だが、それ以上に酷いと感じたのは股間の部分に馬の魔獣であるバイコーンの頭の飾りが付いていた事だ。

 『諦めてくれ、黒山羊はもう帝国の絶対的なシンボルだから外せない』

 「山羊は仕方ないとして、何で股間にバイコーンの頭が?」

 とにかく俺は、父さんに疑問をぶつけていた。

 『素材にバイコーンを使用した結果、股間を守れる位置にバイコーンの頭が出た』

 父さんの言葉を汲むと、偶然らしいが股に馬の頭は卑猥な感じがした。

 

 『誓って言うが卑猥な意味は無いぞ、股間を守るのは男の義務だ』

 「父さん、それなら普通に日本風の草摺くさずりでも良かったんじゃ?」

 急所の守りは大事だけれど、これはないわ~!


 『バイコーンも皇帝の乗騎で帝国のシンボルだから仕方ないんだ』

 「デザインしたの誰だよ? 文句を言い難い相手な気がするんだけど?」

 父さんに誰がデザインしたのかを聞く、予想はついているが聞く。


 『母上、お前のお祖母ちゃんだ』

 父さんの口から出た名前に俺はあきらめた、国の最高権力者には勝てなかったよ。

 「とりあえず、元に戻るね」

 フォームチェンジを解除すると、父さんも意識を取り戻した。


 「ふう、戻ってこれた。これがたっ君用のアイテム、デーモンアーマーだ」

 父さんが良い笑顔で決めるが、決まっていなかった。

 

 「いや、すごい達成感のある顔をされても困るんだけど! 無理に使わなくても良いよね? 子供の頃は父さんに憧れてたけれど、落ち着いたよ!」

 夢から覚めた気分だった、さようなら幼気な頃の俺。


 「いや、父さんへの憧れはなくさなくていいんだぞ? パパ、かっこい~♪ って思ってくれてたんだろ? 父さんをリスペクトする気持ちは素晴らしいぞ♪」

 父さんの言葉に、俺の目がジト目になる。

 この時、俺の中で父さんへの好感度が大幅に下がったのだった。


 だが、このデーモンアーマーでデーモンブリードの力を使えるようになった事が俺や家族を大いに助けてくれることになるのは後の話である。


 この時、まだ俺はデーモンアーマーの真の力に気付いていなかったのだ。

 

 所変わって、とあるお好み焼き屋。


 カウンター席には二人の男が座っていた。

 「進ちゃん、お前バカだろ! 股に馬の頭ってないわ~♪」

 進太郎を笑うのは元気、めんたい餅のもんじゃを食いながら笑う


 「バカって言うな、俺の所為じゃない俺はきちんとデザインをだな」

 自分を笑った元気につっかかる進太郎。


 「でも股に馬だろ、何のアピールだよ? 股の馬の角がハンドルになって回すと

バイコーンを召喚するって、変な所に力入れるなよ」

 元気は笑う。

 「いや、ちゃんと乗り物を呼ぶ機能になるはずだったんだよ!」

 弁明する進太郎。


 「しかし、龍海もコレジャナイの洗礼を受けたか♪ グレなきゃいいが」

 笑いつつ弟子を案じる元気。


 「止めろ、たっ君ぐらいなんだぞ嫁の影響を受けず素直に育ってるうちの子は!」

 進太郎、自分が親バカ目線になっているのに気付いていない。


 「いや、あれもう反抗期来てるって」

 元気が進太郎にツッコむ。


 進太郎と元気は、店が閉まるまでぐだぐだ言い合っていた。

 

 



 

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