フォームチェンジ! デーモンアーマー編
第17話 僕のヒーロー
子供の頃、身近なヒーローと言えばデーモンブリードこと父さんだった。
身近な脅威である愛情過多の母さん達や、懐き過ぎる雪花から俺を助けてくれたのは父さんだった。
特に雪花は泣き出すとブリザードが吹き荒れるわ機嫌が悪くなると周囲の温度が下がるわと歩く気象兵器だ。
寒いのが苦手な俺にとって、雪花は遊びに出かける時の最大の障害だった。
雪花と一緒にいると、日本が北極に変わると実感していた。
幼い頃は、俺が雪花から逃げると
「おにいたまが、いじめだ~~!!」
と理不尽な事を言い泣き出して吹雪が起る。
その吹雪で、何度も気に入った玩具が凍り付いて粉砕されては
「ぜっがが、ぼぐのおもちゃごわじだ~~!!」
と俺が泣き出して電撃が迸ると、俺と雪花の相性は兄妹なのに最悪だった。
他の異母兄弟姉妹達は、母さん達には勝てなかったよ。
自分が凄い疲れるのも省みず、俺の自由を守ってくれる父さん。
今更面と向かって言うのは恥ずかしいけど、そんな父さんみたいに誰かの自由を守れるヒーローに、デーモンブリードに俺はなりたかった。
けど、俺はデーモンブリードにはなれなかった。
母さんの力と、父さんの力が混ざった俺自身の力は父さんとは似て非なる物だった
ので小さい頃はその事を思い出しては泣き喚いて電撃を出しまくった。
デーモンブリードに俺がなれない事だけは、そのデーモンブリードである父さんは助けてはくれなかった。
今思えば当たり前なのだが、それでも俺は自分が一番最初に抱いた夢が叶わなかった事だけは父さんを恨んでいるし今でも若干デーモンブリードになる事へ未練がある。
これから語るのは、俺が一番最初の夢と再び向き合って何となく夢と父さんへの感情の両方を昇華できたっぽいような? もしくは、そうでもないようなという曖昧な短い物語だ。
日記など面倒くさいのだが、日記を付けながら語って行きたいと思う。
これが後に帝国の公文書として纏められ、後世の人達に読まれる事になるのは諦めたので気にせず自分の想いを語って行く。
まずは、大会も終わり父さんがアメリカで暴れて帰って来た頃から語ろう。
「え、雪花があの大会で優勝? ナンデ!」
娘が転校していたことを知らなかった父さん。
「お義母様が許されたそうです、そのまま保護者代理として手続きを」
母さんがすまなそうに父さんに語る。
「そっか、お祖母ちゃんに頼むって手があったか!」
妹の要領の良さに俺は感心した。
「立場的にも母上が上位だから仕方ないか、雪花とも話をしないとなしばらく仕事を休んで家族との時間を作らないと」
納得は行かないが諦めた父さん。
「まあ♪ でしたら早速今夜から濃密な夫婦の時間を過ごしましょうね♪」
母さんが凄い綺麗な笑顔になる。
そして、父さんをいつの間にか現れた母さん達が取り囲みわっしょいわっしょいと担いで行ってしまった。
「ハーレム主人公ってのも、大変だよな」
担がれていく父さんを、俺は見送るしかなかった。
満面の笑顔で写真に写っている清楚な美少女が、青森から愛媛まで誰も傷つけず正確に矢文を放つモンスターだと誰が思うだろうか?
母に似て胸の大きい美少女なのだが、立てば芍薬座れば牡丹というのが外見だけは似合うが戦闘能力は怪獣映画の怪獣並のパワーを出せるモンスター娘で嫁に行けるか婿ができるのかと妹の事が心配になる。
正直おっかないのだが、矢文に書かれていた連絡先へ電話を掛けてみる。
「はい、どちら様でしょうか?」
一発で出た、間違いなく雪花だ。
「矢文とか寄越さず、普通に連絡しろよ! 突然転校したりとか、お前は一体何を考えてるんだ!」
こちらからは開口一番で説教、怒らないとダメだろあれは。
「まあ♪ お兄様~♪ お兄様から連絡をいただけるなんて雪花は嬉しいです♪」
こちらが説教しようと言うのに妹は喜んでいた。
「いや、喜ぶ所じゃないだろうが? 父さんも驚いていたし、帰れるなら家に帰って来いよ!」
妹と話し合うべく帰宅を促して見る。
「はい♪ 5月の連休には帰省させていただきます♪」
通じているようで通じていない会話。雪花が青森から帰省する事でGWがとんでもない事になると予想できたはずなのに、この時の俺はそのことが頭から抜け落ちていた。
幼い頃から苦手だった妹との関係を改善する事しか頭になかった。
この時の俺の選択は、後に兄弟姉妹が一つにまとまる為のフラグだったと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます