第10話 対ナポリ女学院 その1

 「たっちゃん♪ はい、試合用のスーツよ♪」

 控室でリーファが龍海にプロレスラーが着るようなマスク付き全身タイツを掲げる。


 「え? いつも通りのじゃ駄目なの」

 鱗で覆われたドラゴンのようなリングコスチュームを見て尋ねる。


 「たっつん、相手殺す気か? ガチ装備禁止だってばよ」

 アメコミヒーロータイプの白い全身タイツとマスク姿のカロリーブースターが

ツッコむ。


 「選手は簡易の装備を着用して競技に臨む事、グラウンドは無しでリングアウトと

ワンダウンで負けて3人中2人倒せば勝ちだ」

 着替え終わって、黒のジャンプスーツを纏い銀のゴテゴテしたフレームのサングラスと仮面を一体化したような装備を付けたレンズが説明する。


 「凄いシンプルなルールだな、相撲に似てる」

 競技初参加の龍海が感想を漏らす。


 「それはね、ヒーローの活動は瞬時の判断や行動が要求されるからよ。

戦いで一度でもダウンすれば、自分だけでなく人々の命運が危うくなる」

 龍海の感想にリーファが切り出す。


 「事件現場から除外されれば仕事どころじゃないでしょう?

寝技での試合展開がないのも、常に敵との格闘に時間をかけられるとは限らないと

言う実際のヒーロー活動での動きを想定した瞬時に考えて動ける能力を鍛える為の

ルールなのよ」


 リーファが真面目にルールの意味を説明する。


 カロリーブースターとレンズの二人は、理事長であるリーファの視線を察して

控室を出るそしてリーファが控室のドアに鍵をかける。


 「さあ、たっちゃ~ん♪ お着替えしましょうね~♪ 大丈夫よ~♪

 見た目はシンプルだけどスーツの生地の繊維はママの髪で、装甲はママの鱗で

出来てるから防御力は折り紙つきよ~♪」


 「わかった、脱ぐから待って!」

 母に脱がされる前に、急いでパンツ一丁になる龍海。


 その時、母の愛が生み出したドラゴン素材のスーツが禍々しいオーラを放ちながら

勝手にリーファの手を離れて龍海に向かって飛んで行きベチョッっとスライム状に

なって彼の全身を寄生生物の如く覆った。


 「あああああっ!」

 体の中にドロドロとした物が、自分の筋線維や細胞にまで真の意味で骨身に染み込み虫唾が走る感覚に襲われる龍海。


 時間にして30秒後、龍海はアメコミヒーローっぽくその身を変えていた。


 「あれ? 何か違和感がない、ていうか服を着てる感じがしない」

 鏡の前で自分の姿を見て、脱ごうと思いマスクに手を付けるとマスクの部分が龍海の体の中に沈んでいき龍海の素顔が現れる。


 次に龍海が全部脱ごうと意識すると、スーツが全て体の中に吸い込まれパンツ一丁

の姿になる。

 パンツは、試しに下して見たら普通に脱げて自分の息子が確認

できたので再び履いた。


 リーファは笑顔で息子を眺めている。


 「え? これ、もしかしてスーツと俺の体一が体化してる~~っ?」

 驚きの声を上げる龍海。


 「あらあら♪ 自分の体に取り込むほど気に入ってくれて、ママ嬉しいわ~♪」

 リーファ、満面の笑みで喜んでいる。


 「喜んでないって、これ脱げないんだけど? どうすりゃいいんだよ母さんっ!」

 母にツッコむ龍海。


 「うふふ♪ 大丈夫、そのスーツはたっちゃんの体に悪い物ではないから」

 龍海の言葉はどこ吹く風で少女のように喜ぶリーファ、龍海は仕方なく状況を受け

入れる事にした。


 「まあ、仕方ねえか行ってきます」

 体をスーツで覆い、控室を出て行く龍海を笑顔で見送るリーファ。


 控室を出て球場へ入った力華学園チームも円形ステージに上がり、先に上がっていたナポリ女学院の面々と対面する。


 「さ~ていよいよ始まる第一回戦、まずは愛媛県の魔界こと力華学園と対決するのは鹿児島のイタリアと名高いナポリ女学院だ~っ!」

 酷い言いようのアナウンスが流れる。


 「うわ~、アメコミみた~い♪」

 サッカーユニフォームにシューズ、顔にはドミノマスクの茶髪の少女が龍海達を

指して微笑む。


 「いけませんわ、リベロさん♪ ごきげんよう、力華学園の皆さん♪ 本日はよろしくお願いいたします」

 サッカー少女のリベロをたしなめるのは、白衣白帽のコックコートにドミノマスクを付けた金髪縦ロールの少女だ。


 「美味しそうなピザを出す人ですね、よろしく」

 ドラゴンブリードが右手を差し出す。


 「まあ♪ ありがとうございます、今度ごちそういたしますわね♪」

 ピザをほめられて喜んで握手してくる少女。


 「あ~、ピッツァヨーラったら後にしなさいよ」

 そんな少女こと、ピッツァヨーラを止めたのは白いブルーズに赤いベレー帽と

如何にも画家といった風体の壜底丸眼鏡の小柄な少女。


 「あなたはドミノマスクじゃないの?」

 レンズが画家風の子に尋ねる。


 「ええ、私はこれで正体を隠せるから平気。私はジェッソよ、よろしく」

  画家風のジェッソが自己紹介をしたところで再度アナウンス。


 「両校の代表選手が揃いました、それでは第1試合ラウンド1の開始ですっ!」

 アナウンサーの言葉が終わると同時に掲示板に対戦者の名前が表示される。


 第一ラウンド:リベロVSカロリーブースター

















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