第7話 バレンタイン騒動 その2

 「この時期は面倒だな、悪党も夜は寝ろよ! 悪党だって、土日祝日に夏季休暇や年末年始は休めば良いんだ!」

 文句を言いつつ、学園の屋根に立つドラゴンブリード。


 「久しぶりに、ヒーロー姿で兄弟4人揃ったってのに素直じゃないな~♪」

 狼を模した赤い外骨格のウルフブリードが隣で囃す。


 「ツンデレだな♪」

 紫色の重厚な外骨格のサンダーブリードも続く。


 「学園は管轄の俺達だけでも良かったんだぞ?」

 魚モチーフの緑の外骨格、マーマンブリードは心配する。


 ドラゴンブリード以外の3人は学園を守るヒーローユニット、デーモンプリンス。


 兄弟達はドラゴンブリードをメンバーと認識しているが、チームより単独行動を好むドラゴンブリードは普段はあまり兄弟達とヒーロー活動を共にしていない。


 「普段なら任せてるけど帝国に挑戦して来たなら俺も出る、帝国に栄えあれ!」


 「「栄えあれっ!」」


 ドラゴンブリードの号令に兄弟達が拳を突き合わせ、東西南北へ散開する。


 校内の警備は帝国軍の人狼達に任せ、ヒーロー達は外敵に備える。


 「北側、異臭も異常もなし引き続き警戒」

 ウルフブリードの連絡。


 「西側、異常なしだぜ♪」

 サンダーブリードも続く。


 「東側も異常なしだな」

 マーマンブリードも確認する。


 「そして、俺のいる南側は賑やかな百鬼夜行かよ」


 ドラゴンブリードが見たもの、寝静まった商店街を阿波踊りの様に鐘を突き

練り歩くバレンタインクラッカーと手下達。


 「ニュータントと人間がイチャイチャする学校なんざ、ぶっ潰してやる!」

嫉妬心丸出しで、進軍してくるヴィラン達。


 騒音や威嚇射撃など迷惑千万な輩であった。

 「そこまでだ、これ以上の狼藉は許さんっ!」

 ドラゴンブリードが吠える。


 自分達に立ちふさがったヒーローに、ヴィラン達が注目する。

 「ああ? 何もんだテメ~~~っ?」

 バレンタインクラッカーが聞き返す。


 「俺はドラゴンブリード、お前らを倒すヒーローだっ!」

 ドラゴンブリードが構える。


 「しゃらくせえ、やっちまえ~~~~っ!」

 数を頼りに、ドラゴンブリードに襲いかかるヴィラン達。


 「うるさい奴らは、溺れてしまえ!」

 そんなヴィラン達に、天から滝が降ってきた!


 三叉槍を振るい、水を操るのはマーマンブリード。


 「濡らし過ぎだよ、乾かすぜ~~!」

 雄叫びと共に熱波を放ち、雑兵どもを焼き払うのはウルフブリード。


 「行くぜ、プラズマミサイルッ!」

 変身後はミサイルランチャーになるリーゼントから、小型ミサイルを発射するのは

サンダーブリードだ。


 「やっぱり俺、出張らなくてよかったかな?」

 加勢に来た兄弟達が敵兵を駆逐したので、テンションが下がるドラゴンブリード。


 「いやいや、トリは残してるよ」

 マスクの下で笑う、ウルフブリード。


 「ケーキのイチゴ的な?」

 ボケるサンダーブリード。


 「露払いはすませた」

 マーマンブリードが促す。


 「ああ、同士諸君が! ちぃっきしょ~~~!」

 手下を壊滅させられた、バレンタインブレイカ―が全身から黒いオーラを放ち

ドラゴンブリードの心臓めがけてストレートを放つ。


 これこそ、敵の心臓を貫くバレンタインブレイカ―の必殺技『ハートブレイカ―』


 ドラゴンブリードにヴィランの技が直撃し轟音が響く。


 「馬鹿な、どんな装甲も撃ち抜く俺の技が効いてねえだとっ!」

 バレンタインクラッカーが驚愕し、動きを止めてしまう。


 「その程度で、龍の鱗は抜けねえよっ!」

 ドラゴンブリードの装甲からは摩擦の煙が上がるだけで無傷だった。


 「お前にギブアップは聞かない、ドラゴントライアングルッ!」

 立ちの姿勢のバレンタインクラッカーの腕を取って引きながら、母直伝の

三角締めを掛けるドラゴンブリードが容赦なく一気に締め上げる。


 「ぎゃ~~~っ!」

 バレンタインクラッカーは、叫びを上げながら気を失った。


 バレンタインクラッカーが気絶した同時刻、全国各地で騒動を起こしたヴィラン達がヒーロー達によって検挙されていた。


 嫉妬に狂ったヴィラン達の野望から、バレンタインの平和は守られた。


 そして、バレンタイン当日。


 「それではこれより、バレンタイン祭を開催いたします♪」

 リーファのスピーチにより、バレンタイン祭が学園で始まる。


 特設ステージでは、男女が想いを伝えあい成就したり撃沈したり悲喜こもごもな

告白大会が催される。

 「座敷ちゃん、俺の筋力で作ったチョコと思いを受け取ってくれ~~~!」

 甘粕力、渾身のチョコレートをおかっぱ頭で目かくれ少女の座敷百合子に差し出して愛を告白する。


 「甘粕君、あ、ありがとう♪」

 見事、逆チョコで告白に成功した力。


 「光子さん、エンゲージ眼鏡です受け取って下さい!」

 鯖江光子はそんな告白を一般生徒からされるも


 「ワケがわからんわっ!」

 と目からビームを出して、差し出された眼鏡を破壊して一蹴っ!


 その後もヒーロー生徒と一般生徒の告白大会は、会場を爆笑の渦で包み込んだ。


 屋台や学生食堂ではチョコを使ったメニューやドリンクが提供される。

 「クレープ、うまうま」


 「ギュンター、食い過ぎだぞ!」


 「俺もチョコパフェお替わり♪」

 幸太、明人、ギュンターは食欲を満たす。


 そして龍海はというと、学校をサボって堤防の上で寝そべり海を眺めていた。

 「は~あ、バレンタインなんてやってられねえよ」

 女子にモテないながらもバレンタインデーを守った龍海のぼやきは、波が優しく飲み込んだ。

















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