第8話 小学生~中学生時代

 姉は幼い頃からバレエを習っていた。母静子は、娘たちを育てるため毎夜残業だと話していた。姉が帰宅するのは、夜遅い時は10時くらいだった。その時だけ、母と手をつないで、懐中電灯を持ち、姉を東名高速のバス停まで迎えに行った。


私は夜も1人で家にいることが多かった。でも、1人ではなかったから寂しくはなかった。


 ある時、母が私の『何か自分たちとは異なる力』に気づいた。

ユリ・ゲラーが大流行した頃だ。

退屈していた私は、床に転がりながら、スプーンを持って

「曲がれ、曲がれ・・・」

そう唱えながら、テレビの中の人を真似て、スプーンを撫でていた。


私が曲げたのは、スプーンの柄の付け根部分ではなく、口をつける部分の先端だった。何も知らず、私は母に自慢気に見せた。

スプーンの先が逆側に曲がっていたのだ。

喜んではいないことは、幼い私でも容易に理解できた。


私は色々な匂いや声や音を感じていた。そして、他の人たちが見えないものも見えていた。しかし「うそつき」と言われるのが怖くて、黙っていた。



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