第5話 父の突然死

 1975年7月12日。

その日はとても暑く、静子は夜になっても居間の窓を網戸にして、部屋に風を入れていた。娘たちを寝かせる時間になり、静子が勢いよく窓を閉めようとした。


その時だった。


静子の手をかすめ、頭上まで白くて細長い何かが飛び上がった。

非常に大きな白蛇だった。


ガラス窓のレールの上に白蛇が体を伸ばし横たわっていたのだが、静子が何も気づかず勢いよく窓を閉めたため、白蛇が窓枠に押され驚いて跳ね上がったのだ。

そして、あろうことか大きな白蛇は静子の足下に落ち、畳の上を這いずり、窓の近くにあった私の玩具専用の開き戸の中に入ってしまった。


松雄は白蛇を追い、開き戸を開け、私の玩具のラケットを2本手に取った。

白蛇をこれ以上刺激しないように、ラケットで挟み、窓からゆっくりゆっくり外に出した。


それから、ちょうど1週間後の7月19日。

午前2時43分。

家族全員の寝室。そこで松雄が突然叫び声を上げ、そのまま帰らぬ人となってしまった。死因は、脳卒中である。


私が目を覚ました時、母の静子が泣きじゃくり、姉は父の横で立ちすくんでいた。


 私は、夢を見ていた。

寝室のドアの上、天井から、眠っている自分を、父ではない誰かと手をつなぎ、とても冷静に見ている。そんな光景を今でも忘れることができず、しっかりと覚えている。


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