第8話

そのまま観察した。


腰の近くまで伸びた黒髪が、ゆっくり小さく揺れている。


女自身が揺れているためだ。


そのふり幅は小さいが、みなが言うとおり確かになにか変だ。


上から下までじっくりと見て気付いた。


普通人が揺れる場合は、足を軸にして上半身が揺れるものだ。


メトロノームのように。


しかしこの女は、上半身が揺れると同時に下半身もれている。


上半身と同じように。


少し鳥肌が立った。


まさかとは思ったが、私は女の足元を見た。


思ったとおりだった。


生きている人間では絶対に出来ない動き。


なにせ女の足は地面から少し浮いていたのだから。


この女は死人だ。


私はその場から動けなかった。


生まれて初めて世間から幽霊と呼ばれる存在を見たのだ。


そのまま女を見ていたが、気がつくと女はいなくなっていた。


周りを見回したが、その姿をとらえることは出来なかった。


私は女を見ていたのだ。

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