第7話

「そうだろう」


長老は自分の理解者が出来たためか、なんだか嬉しそうだった。


「その後も長老の言ったとおりでした。目の前にいる女をじっと見ていたはずなのですが、いつの間にか自動販売機を見ていました」


「うんうん」


「女から目を離した覚えもない。女がどこかへ歩いて行ったわけでもない。そうかと言って、女が目の前から一瞬で消えたわけでもない。それなのに女がいなくなっていました。長老の言うとおりで、まさに気がついたら目の前の女がいつの間にかいなくなっていた、という状況でしたね」


「そうだろう、そうだろう」


私は考えたが、やはりわからなかった。


という状況。


いったいどういう状況なのか。


とにかく今晩は、私が女を見に行くのだ。



二時半に目覚ましで目覚め、三時少し前に家を出ると、ほぼ三時ちょうどに自動販売機の前に着いた。


離れたところからでもわかる。


この道に街灯はない。


唯一明るく光る自動販売機の前に、やけに背の高い女がいるのだから。


近づき、一瞬の躊躇の後、声をかけた。


「もしもし」


返事はない。

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