第7話 ずっと向こう側に

タクロー「起きてるよ。」

マナミ「起きろー!」

タクロー「だから起きて…!?」


パサッ

ドタバタッ


タクロー「マナミ!」


コンコン!


タクロー「マナミ入るぞー!」


マナミ「起きろー!」


そこにマナミの姿はない。

目の前には、シュンが持って来た目覚まし時計が。


マナミ「起きろー!」


ボイスアラーム?


マナミ「タクロー、ごめんね勝手に居なくなって。約束守って。そしたらまた会えるから。ありがとう。またね!」


カチャッ


ボイスアラームだ。

タクローはアラームを何回も何回も鳴らした。何回も。


「起きろー」


もうそこにマナミはいない。

つい数日前まで1人だったこの部屋が妙に広く感じる。

音もない。

ずっとこうだったはずなのに。

なにかポッカリ穴があいて。

そこにはマナミがいない。

寂しさ?物足りなさ?いろんな想いが混ざってよくわからない。

ただ今言えることは、もうここにはマナミがいない。

喪失感?

気持ちの整理。

タクローは思い出した。

こうしてはいられない。


約束!


そうタクローには守らなきゃならないことが。


そうして3日後。


今日は朝からバイト。

タクロー[マナミが言ってた日だけど今日はバイトだし、あんなとこ行く用事もないからなー、マナミの思い過ごしじゃないかな。]

そんな事考えていた時、

店長「タクロー、配達。」

タクロー「はーい。場所は〜!?」

タクロー「!?」

店長「なんかその場所指定なんだ。変わってるけど常連さんの妹でさ。頼むわ。」

タクロー「…あっ、はい。」

店長「大丈夫か?」

タクロー「大丈夫です。行ってきます。」


タクローが向かったのは、


そう、橋の横のベンチ!

しかもその場所指定。

橋についたタクローは少し離れた場所にバイクを停めて歩く。

ベンチを見ると若い女性が。


女「あっ、ピザ屋さーん。こっちー。」

タクロー「あっ、はい。」

タクロー「お待たせしました。間違いありませんね。では二千円です。」

女「はい。」

タクロー「ありがとうございます。それじゃあ、またお願いします。」

女「あっ、あの〜…」

タクロー「なにか?」

女「少し時間あります?」

タクロー「すぐ着いたので、少しなら余裕ありますけど。」

女「変でしょ。こんなとこで一人でピザ頼むなんてさ。」

タクロー「実は、イタズラなのかって思って半信半疑できました。いらっしゃって逆に驚いてます。」

女「あっ、私、ナミっていいます。」

タクロー「あっ、タクローです。」

ナミ「多分私たち大学一緒よ。」

タクロー「えっ?」

ナミ「なんか見覚えあって。シュンくんといつも一緒にいない?」

タクロー「シュンの事知ってるの?」

ナミ「シュンくんとは高校一緒なの。」

ナミ「あまり話したことないけど。」

タクロー「じゃあ同い年だ。」

ナミ「よろくね!」

タクロー「こちらこそ」

タクロー「で、ナミちゃんはなんでこんなとこでピザを。」

ナミ「そーそー!その話。」

ナミ「うちのおばあちゃんがこのピザ大好きで、よくここに座って一緒に食べたの。でも去年亡くなっちゃってさ。で、今日命日だからここでピザ頼んだわけ。」

タクロー「そっか。」

ナミ「そーだ!せっかくだから一緒に食べようよ。大学も一緒だったことだし!」

タクロー「いいの?」

ナミ「1人じゃ食べきれないし、じゃあここに一緒に座って食べよう。」

タクロー「うん。じゃあ。」


マナミ…ベンチに…座らないで…約束。


タクロー「はっ!?」


タクローはすぐ立ち上がった。


ギーッ

ギギーッ


タクロー「あぶなーい!!」

ナミ「キャーッ!!!」


バキバキッ!

ドカンッ!!

バタバタッ!!!


タクロー「はっ!大丈夫?」

ナミ「…えっ!」

ナミ「タクローくんは?大丈夫っ?」


橋の横の大木が倒れたのだ。


ナミ「…ありがとう。けどびっくりなんだけど。なんでこんな大きな木が?」

ナミ「今日来た時思ったんだけど、ベンチの位置がなんか変わってて。元の位置なら逃げ遅れてたかも。」

タクロー「…だね。でもナミちゃん無事でよかったよ。」

ナミ「タクローくんのおかげだよ。」

タクロー[マナミ…このことか!]

ナミ「タクローくん?」

タクロー「あっ、いやっ、なんか俺もよくわからなくて。突然だったから。」

ナミ「わたしの命の恩人だね。」

タクロー「大げさだよ。」

ナミ「タクローくん彼女いるの?」

タクロー「えっ?いないよ。」

ナミ「好きな人は?」

タクロー「いないよ。」

ナミ「じゃあ今日からわたしが彼女っていうのはどうですか?」

タクロー「はっ?冗談でしょ?」

ナミ「こんな死にかけた時に冗談言うとおもう??本気よっ!」

タクロー「…」

ナミ「嫌ですかっ??」

タクロー「嫌じゃないけど、話が急すぎてなんとなく。」

ナミ「嫌じゃないなら、今日からわたしが彼女!それでいーいっ?」

タクロー「俺、ぽっちゃりしてるし、不細工だし…」

ナミ「知ってる。見ればわかる。でもいいの。わたしはタクローくんがいいの。」

ナミ「まだなにも知らないけど、なんか直感っていうか、運命とか?なんか、わかんないけど、なにかを感じたのっ!!」

タクロー「実は俺も少しは…」

ナミ「じゃあ決まり〜!」

ナミ「これからはナミってよんでねっ!」

タクロー「はい。」

ナミ「呼んでっ!」

タクロー「ナミ…」

ナミ「よろしい!タクローっ!」


こうしてピザの配達で、危機を回避したと同時にタクローに彼女ができた。

マナミのおかげで。

あの日マナミがいて、マナミが忠告してくれて、そうマナミがいてくれたおかげで。

今どこにいるのかはわからない。

どこかずっと向こう側で、きっと元気にやってるに違いない。

タクローがいる今のずっと向こう側に。


「起きろー!」


今日もまた鳴っている。


ナミ「あなたー、朝よー」

タクロー「起きてるよ。」


「約束守ってくれたら、また会えるから」


…俺、約束守ったんだから、いつか必ずまた会えるよな。

マナミ…。









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どうした?目覚まし時計 オッケーいなお @k160204989

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