第6話 ピザの晩餐会

マナミ「起きろー」

タクロー「はいはい。起きてます。」


ウィ〜ン


タクロー「おいっ。」

マナミ「あっ、起きたね。」

タクロー「起きてるし。起こしっぱなしかよ。」

マナミ「ごめん。集中してた。」

マナミ「わっ!」


ガッタン!

ドカッ。


マナミ「あーっ!!」


タクロー「あれ?暗い。」

タクロー「なんだっ!?」


辺りは真っ暗。

ここが自分の部屋かもわからない。


タクロー「マナミー。」

タクロー「おーい。おーい。」


動けない。

というかこの闇がなにか、自分の目が見えなくなったのか?

突然自分は死んだのか?

全てがわからない。


タクロー「死んだのか?俺?」


その時、点のように光るところが見えた。

暗いのとわけがわからないので、ハイハイしながら光にむかう。

進む速さより光が大きくなるのが早い。

光が向かってくるような気がして、立ち止まるタクロー。

光はどんどん向かってくる。

凄いはやさで、どんどんと。

怖くて目を閉じた。

っと、次の瞬間

シャーって音と同時に周りが急に明るくなったのだ。

目の前に広がるのは自分の部屋ではない。

恐る恐る周りを見渡す。

メッキ感たっぷりの広い空間。

誰もいない。


ヒューッ!


タクロー「はっ!?」


なにがこっちに来る。


スーッ


みかん箱くらいの黒っぽい鉄?

こっちに向かってくる。

タクローの横まできて、ピタッと止まった。

ラジコン?

そんなんじゃない。ただの黒い箱である。

タイヤもついてない。

マジマジみる。

すると急に音がして


ブーッ

ブーッ


タクロー「わっ、ごめんなさーい!」


音はどんどん大きくなり、怖いしうるさいしで目を閉じる。


ヒューッ


タクロー「はっ!まただっ」


また急に真っ暗に。

怖くて動けない。

っと次の瞬間、地面が急に斜めに。

どんどん、どんどん斜めに。

いよいよ滑り出すタクロー。


タクロー「ひぃ〜っ!」


もう止まらない。

滑り続けるタクロー。

ずっと下に何か光が!

凄い速さで光に吸い込まれる。


ピカー!!


ドサッ!


マナミ「おーい。」

タクロー「はっ!!」

マナミ「やっと目覚ましたー?」

マナミ「急に倒れるからびっくり。」

タクロー「俺、倒れたの?」

マナミ「そーだよっ!」

マナミ「大丈夫?」

タクロー「へんな夢見た。」

マナミ「夢?」

タクロー「急に真っ暗になって。」

タクロー「遠くに光ってる何か見えて、今度は急に明るくなって。なんかわからない広い部屋に出て、黒い鉄のかたまりがこっちに向かってきて。」

マナミ「…ちょっと落ちついたら。」

タクロー「だな。夢だったのか。」

マナミ「まっ、大丈夫でよかったよ。」

タクロー「俺気絶してたの?」

マナミ「…う、うん。」

タクロー「ずっと?」

マナミ「う、うん、ずっと。」

タクロー「そっか〜。ならいいや。」

マナミ「無事だったんだからいいんじゃない?」

タクロー「すげーリアルな夢だったな。」

マナミ「まだ言ってるし。」

タクロー「そーいや、マナミの持ってる丸いやつ、修理してる。それと同じような色だったなー。」

マナミ「…こ、これ!?こんなのどこにでもあるし…」

タクロー「ないし、どこにも。」

タクロー「それってなんなの?」

マナミ「機械。」

タクロー「それはわかる!」

マナミ「説明難しい。専門用語いっぱい使うし。」

タクロー「難しそうだな。」

マナミ「そーそー、難しいのよ。」

タクロー「じゃあ、また今度教えてくれ。今日は軽いパニックだから。」

マナミ「それより大学は?」

タクロー「おっ、やべ。」

マナミ「急げ〜!」

タクロー「おう。」

タクロー「行ってきます。」

マナミ「行ってらっしゃーい。」


奇妙な出来事なのか、タクローのマヌケな夢だったのか。

ただ今はそれが夢なんだか、

タクローには知る余地もない。


大学が終わりアパートに着いたタクロー


ガチャッ


タクロー「おーい。」

マナミ「あっ!?おかえりー」

タクロー「なにビックリしてんだ?」

マナミ「なんでもない。」

タクロー「なんだ?」

マナミ「なんでもない。」

タクロー「なんかへんだな。」

マナミ「わたしねっ」

タクロー「なんだ?」

マナミ「もう全部終わったから帰るの。」

タクロー「えっ!?」

タクロー「いつ?」

マナミ「明日。」

タクロー「急だなー。」

マナミ「今日全部終わったから。」

タクロー「そっか。」

マナミ「色々ありがとう。」

タクロー「なんも。」

マナミ「今日は私がごちそうするね。」


ピンポーン


マナミ「はーい。」

タクロー「誰だ?」

ピザ屋「お待たせしましたー。」

マナミ「ありがとうこざいます。」

ピザ屋「あれ?タクローくん?」

タクロー「おつかれ〜。」

ピザ屋「なーんだ。タクローくんの家だったのかー。」

マナミ「私が頼んだ。」

タクロー「ご苦労様ー。」

ピザ屋「じゃ、また明日。」

タクロー「ピザ?」

マナミ「こっちに来て一番気に入ったのはピザなの!」

タクロー「そっか。」

マナミ「最後に一緒に食べたくて。」

タクロー「そっか。」

マナミ「食べよっか。」

タクロー「おー、いただきます。」

マナミ「いただきまーす。」


あっという間に食べ終えてまったり。

なんか色々話した。

小さな時の事、好きな事、学校の事。

タクローはマナミの事聞くのは初めてだ。


タクロー「そっかー、機械の学校って大変なんだなー。」

マナミ「そーよ。大変なの。」

タクロー「で、どこに帰るんだ?」

マナミ「えっ!?、遠く。」

タクロー「遠く?」

タクロー「沖縄とか?」

マナミ「…もっと。」

タクロー「外国?」

マナミ「まっ、そんなとこかな。」

タクロー「なんだよ、そんなとこって。」

マナミ「いいじゃない。いきなり来て、いきなり帰った不思議ちゃん。でさっ。」

タクロー「俺は全部見られてるのに。」

マナミ「細かい事言わない!」

タクロー「まっ、いいか。それで。」

マナミ「そーそー。」

タクロー「駅くらいまでは送るよ。」

マナミ「寂しくなるからいい。」

タクロー「わかった!じゃあやめとく。」

マナミ「タクロー。」

タクロー「なんだよ、いきなり。」

マナミ「今から言うこと聞いて、そして必ず守って!」

タクロー「なんだ!?」

マナミ「駅の裏の橋に行ってもベンチにはなるべく座らないで。もし座る用事出来たら必ず木から離れて座って!」

タクロー「なんだそれ?」

マナミ「いいからっ!!」

タクロー「わかったよ。よくわからないけどさっ。」

マナミ「必ずね!」

タクロー「なんなんだよ?」

マナミ「いいから、お願いっ!」

タクロー「そんなマジに言われたら、聞くしかないじゃん。」

マナミ「約束!」

タクロー「わかった。約束するよ。」

タクロー「でも、いつの話だ?」

マナミ「3日後。」

タクロー「なんだよ。リアルだな。」

マナミ「お願い。」

タクロー「わかったよ。」

マナミ「信じてるから。」

タクロー「なんだよ。急におもいなー。」

タクロー「なんかさ、訳わからないままって感じだったけど、おかげでこの数日暇しなかったわ。」

マナミ「こっちこそ。ありがとう。」

タクロー「さっ、明日寝坊して帰れなくなったら大変だから寝るか。」

マナミ「帰れなくなったらさー、また泊めてくれるー?」

タクロー「あのなー。」

マナミ「なんちゃってー。」

マナミ「おやすみ〜」

タクロー「おやすみ。」


タクローは、なんか眠りにつけなくてもぞもぞしていた。

普段はすぐ寝れるのに。

3日後?

マナミの言葉を思い出していた。


マナミ「タクロー?起きてる?」

タクロー「あっ、うん。」

マナミ「わたし、実はさー」

タクロー「もう、聞かないからいいよ。」

マナミ「だってー」

タクロー「…知らないほうがいい事もあるかもしれないし。」

タクロー「最初に来た時から普通ではなかったからさ。バカな俺でもマナミが親戚じゃない事くらいわかる。どこから来てどこに帰るかとかはわからないけど。」

マナミ「!?」

マナミ「気づいてた?」

タクロー「うちってさ、親戚少ない訳。結構遠縁もわかるし。知ってる限りマナミって子はいない。」

タクロー「ただ、なんか他人って気はしなくてさ。不思議と。だからなんか手助けしなきゃって思って。」

マナミ「本能的に?」

タクロー「そんなとこだ。」

タクロー「だから、わかんないけど遠縁っての当たってるのかもな。」

マナミ「複雑だけど、当たってるの。」

タクロー「だから3日後の事もわからないけど信じようって。」

マナミ「それは信じて。」

タクロー「きっと俺の運命?みたいなのが関係してるのかって。」

マナミ「そうなの。ものすごく。」

タクロー「わかってるよ。なんとなく。」

タクロー「だから、安心して寝な。」

マナミ「うん。わかった。」

マナミ「タクロー、ありがとう。」

タクロー「そういうのは明日言えよな!」

マナミ「わかった。」

タクロー「おやすみ。」

マナミ「おやすみ〜」


2人はいつの間にか眠っていた。

安心したのかぐっすりと。


マナミ「起きろー!」






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