第17話方針
ーーーー翌朝
目が醒めると…
俺はメリーに揉みくちゃにされていて、反対側にはレアが腕にしがみついて眠っていた。
俺はなんとか抜け出し、体を起こして呟く。
「…これが噂に聞くハーレムってやつだな。」
すると、レアが目覚める。
「…んむぅ……トイレ…」
なぜか不満気にのそのそと起き上がると、トイレに向かって行く。
…いや、俺が運んで来た訳じゃないよな!?
「……ふふふっ」
レアの不満に不満を抱えていると、俺の横で寝てる筈のメリーから笑い声が聞こえ、起こしてしまったのだろうかと、メリーを見る。
「…ごめん、起こしたか?」
「いいえ、そんなの大丈夫ですわ。それよりユウト様は元気になられまして?」
優しい笑みで聞いて来るので、俺は恥ずかしくなり、目線を逸らしながら感謝を伝えた。
昨日の自分は結構頑張ったと思うので、その夜はメリーに色々とご褒美を貰っていたのだけど…
…ここで何をしてもらったか言うと、18禁指定になってしまうので、自粛しておく。
あ~、後…ここにティファが加われば最強なのにな、と思ったのも内緒にしておこう。
その後は、それぞれ用意を済ませて、リビングに向かうと既に朝食が用意されていて、何故か痩せ形の男が座って飯食っとる…
「おはようございます。ユウト様!」
いつも若干不健康そうなヘッケランが、元気な顔で挨拶してくるのは腹立つな…
と言うかお前さんは昨日、一切役に立って無いのに何でいるんだよっ!
「…お前が居ないから昨日は……」
俺のクレームを手を突き出し止めてくる…無駄に手がでかいな。
「分かっております。この度はお力になれず申し訳ありませんでした。」
こめかみに指を当てて申し訳さそうに言うと、立ち上がり深々とお辞儀してくる。
「しかし、ティファ殿から素晴らしい対応だったと聞き及んでおり、私は感服しております。こんなにアッサリと解決されるとは…」
私の杞憂に付き合わせて申し訳ない、とも付け足していた。
まぁ、実際のところ、被害は俺がリアルマネーを5万突っ込んで3つしかGET出来なかった、貴重なアリアーシャの涙を消費したって事だけだったからな。
…いや、俺も涙が出る所だったけど、そうは言ってられない状況だったし、仕方ない投資だろう。
ヘッケランはネロが帰ってこないにも関わらず、昨日ウチに来なかったのは、必死に情報収集と対策を練っていたからだと言い訳していた。
「もちろん、それは無駄になってしまいましたが、わははは…」
と、演技くさい笑い声を上げていた…
こいつ…確認に来るのがめんどくさくて、引きこもってたんじゃなかろうか?
しかし、これ以上追求はしても仕方がないので、腕立て、腹筋、スクワット×20回を3セットの刑に処しておいた。
…やり方を説明したら、結構、ガチで青くなっていたのに、メリーが座って差し上げましょうか?と言うと、若干嬉しそうな顔をするのが気に入らんぞ!
…それは俺の特権だ!
その後は、通常運転に戻って、日課の"戦略議"を…
…レアと二人で傍観する。
当然、お菓子付きだ。
…そう言えば、レンにヘッケランの事を、やんわり聞いてみたんだが、仕事柄、命を狙われる事は山程あるそうで
「正直、覚えてへんわ!殺ってもうてたら、すまんな。でもお互い様やからな!」
って言われた程度だった…
レンは同郷だし、ヘッケランは仲間だから微妙な関係ではあるだらうけど、ここは大人な対応をお願いする他ないかな…
ヘッケランは会議に先立って、再び昨日の件を謝る。
「昨日は、私がお力になれず申し訳ありませんでした。ですが、あの者達を退けるだけではなく、情報を共有する"仲間"にされてしまうとは…このヘッケラン、脱帽でございます。」
…ヘッケランはああ言って褒めちぎってるくるし、俺が褒められてると姉妹達は満足そうだ。
…でも、俺は何か引っかかるんだよな
…いや、きっと気のせいだな!
多分、仇であるレン達と俺達が和解してしまった事を、理解はしても納得出来ないのかもしれない…
レン達と会う時はヘッケランに気を使うようにしないとな!と、そう自分の心に留めておいた。
俺は、この時の判断を、後になって死ぬ程後悔する事になる。
…とは、知る由も無かった。
その話が終わると、頓挫していた次の街攻略に関しての話し合いが始まったり
どうやら、前に揉めていた都市の順番はメリーの意見が通ったようで、シルクット、バノペアの順番になっていた。
次は、シルクットか…確か刺繍や織物が盛んな街のは……もぐもぐもぐ
「…これも…おいしっ…」
人が考え事してるのに、お菓子を無理矢理突っ込んで来る、レアを軽く睨んだが…
幸せそうに食べている顔が可愛いので、怒るのは諦めよう。
…しかし旨いなコレ!!
今日のオヤツはサルネアに頼んで、ポテチのような物を作ってもらった。
確か、モイだったか、ロイモだったか…そんな名前のジャガイモっぽいのを、薄切りにして揚げてもらって塩を振っただけなのに、コレは止まらんな……もぐもぐもぐ…
…あぁ、シュワっとした炭酸が欲しくなる。
俺はあんまり酒は飲めないし、誰か炭酸水を発明してくれないだろうか?と、俺は切に願うのだった。
結局、また、まともに話を聞いていなかった訳だが、今回はあっさりと話が決まったみたいで、織物商会へは物流・運搬での事業提携から入り込み…
貴族への根回しはメイド派遣で情報収集から、弱みを握って行く事になったようだ。
物流関係は傭兵団を護衛にして、安値で各地に物を運ばせるし、信用が必要なハウスメイド達には、俺達がしっかり教育 (主にメリーが)して送り出す。
勿論、何かあった時の責任はウチ持ちになるけど、メリットの方がデカイ筈だと言う意見でまとまった。
計画は決まったので、今度は俺達アイアンメイデンの支部を作る為の拠点探しに向かう事になり、いつものように、メリーに同行を頼もうとしたら…
「申し訳ございませんユウト様。今日は貴族共のパーティに参加しなければなりませんの…なので、ご一緒できませんわ」
『ども』って聞こえたけどスルーしておこう…
仕方ないので、ヘッケランに頼もうかと思ったけど、男二人で家探しとか…寒気しかしないので我欲の為にパスする、愚かなオレ!!
次にティファを誘ってみると即OK…即OK!って何か響きがヤラシイ…
…昔の俺の残滓が邪魔をするので、キリッとした表情で用意をお願いし部屋に戻ろうとする。
と、レアが俺の服を引っ張ってきた。
…こらこら、人の服で指を拭くのはやめなさい…ん?違うのか?
「どうしたレア?お代わり欲しいのか?」
サルネアに追加を頼んで欲しいのかと聞いてみる。
「…ごしゅじんさま……わたしも…行く」
…あらあらあら、まぁまぁまぁ、この子が自分から動こうとするなんて!、
俺は、そんな娘の成長に歓喜するバカ親を気取ってみる。
いやしかし、レアが自分から意見を言ってくるなんて、ほんとに珍しいな…
俺はもちろん即OK…して、三人で向かう準備を始める。
メリーが仲間外れにされたように、恨めしそうに見て来るけど、一番に誘ったし、関係無い関係無い……
「…ニィニィー!!」
皆の用意が終わり、庭に出ると…ティファが馬車を用意してくれ…た…
たのだが、またラビットホースだった!
ティファ姉さん、マジ勘弁っす…とは言えず、ありがたく笑顔で乗り込む。
それから結局、シルクットに着くまでの間で、レアと二人で二回ゲロリンちょしました☆
……
そして、順調にシルクットへ到着し、街の検問所の列へと並ぶ。
…アスペルから見ると内陸側に位置する街だけど、結構デカイし、しっかりした作りをしてるな。
俺達はお上りさんの様に、キョロキョロしながら検問所を簡単にパスした。
…この辺りはヘッケランに用意してもらってバッチリだ。
……
都市に入るとデッカイ観光案内所的な物があり、中へと入っていく。
…市役所的なことも兼ねてるのかな…?
いくつかのカウンターと、希望の内容に対応するプレートが掛かっているので、不動産の賃貸や売買のカウンターを探す。
6年の修行期間で読み書きバッチリだかんな!
【住宅取引】と書かれたプレートのカウンターに向かい相談をする。
中々、小綺麗なお姉さんが条件を聞いてくれるので、部屋数や設備、場所の希望などを地図を見て大まかに伝える。
一応、中心部に近くて、商会にも直ぐに行ける辺りで探してもらった。
何軒か準備が出来たとの事だったので、三人で外に出ると、ヒョロそうな黒髪眼鏡のお兄さんが待っていた。
「…ユウト・カザマ様ですね!本日のご案内を務めるハービーと申します。」
俺が美女二人連れと見て、一瞬、羅刹の表情をしたが、すぐに営業スマイルになって挨拶してくれる。
さて、では物件探し行ってみますか!
…ぐぅ~
「…おなかへった……」
俺は、隣で腹の音を響かせるレアを見た。
…先行き不安だ!!
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