第4話異世界の出会い

 かなりの高さかから、飛龍と共に地面に激突した衝撃で、当然俺も身体中を打ちつけ重症に…


 あっ、防御の宝珠が作動して無傷だった!


 …危うく、うっかりミスで死ぬ所だった。

 しかし、悪魔(デーモン)騒ぎの時もそうだったけど、まったく痛みを感じないもんなんだな…



 ただ、意識がボーッとしていて、しばらく座り込んでいると、城門から兵士たちが完全武装で走ってくるのが見える…


 うん、中々統率の取れた良い行軍だ!




 ……そして囲まれた。


「キサマ!一体何者だ!モンスターを操り都市を襲うなど、許されんぞ!」

 隊長みたいな、少し良い鎧を着た騎士が叫ぶ。




 うげっ、なんでなんでこうなるんだよ‼︎


 転生初日に侵略者されて、兵士に追い詰められ状況に唾を吐いていると…



 …俺の心の叫びを知ってか、衛兵達は警戒しながらも近づいて来る。


 ちょ、ちょっと待って!

 やばいよやばいよ…


 ジリジリと近づいて来る衛兵達を見つめながら、上手い言い訳を考えてみたが、そんなに簡単に思い付く筈がない…


 ラノベの主人公なら、チートなスキルとかで乗り切るのだろうが…あいにく俺はお子様


 …そしてアホだ。



 戦うか、逃げるか…

 っても、大人と子供の体格差があるから、どっちも話にならんのでは⁉︎



 そうだ!

 使うか、コレ…



 俺は塔で準備したまま懐に入れて、持ちっぱなしだった、炎龍の牙に、手を掛ける。


 ふふふ…これなら、敵兵を全員瞬殺でき…



 …いやいや、あかんわ!!



 これじゃ、良くて王国から指名手配、下手したら魔王認定とかされて、討伐されて終了だから!



 俺は必至に、無い脳味噌を回転させる。

 …もう、衛兵との距離は無い



 くっ、一か八か‼︎


 俺は、自分の声と体で思い浮かんだ、体は子供だか頭脳は大人な少年の物真似をして見る。


「あっ、あれー?おじさーん、どうしたのぉ?ぼくぅ、ぐうぜん、ここを通ったら、大きな黒いかたまりが、とんできてビックリして、ころんじゃったんだー」


 …ど、どうだろうか?声が似てるから、探偵のおっさんやら太っちょ警部を騙すコ○ン君のように、演技できていただろうか?


 いや、その前に元ネタ知らんか…



 …

 ……ざわざわ


「…そっ、そうなのか…?」

 兵士の中の誰かが呟いた!


 …僥倖!



 そして一人の兵士が、隊長に進言してくれる。

「隊長、こんな子供が、飛龍を操って街を襲うでしょうか?我々の位置からでは、乗り手まで見えませんでしたし…」


 …考える隊長


「うぅむ…おい小僧!お前が見たと言う、その黒いのはどこに行った?」


 おぉ…のってきやがった!


「えーぼく、目をつぶってたから、良く分からないや?でも、あっちの方に、何かが、にげて行く音がしたような気がするよ?」



 隊長の迷推理を後押しすべく、無罪を装う少年を演じ、都合の良いだろう言い訳を提案する。

 そして、必至に無関係を装った。




 …その結果。












 無事に都市へ潜入できました‼︎

 …潜入って言うと悪い事しそうだけど、まぁいいか!


 結果的に、兵士達は結構いい奴ばかりだったみたいで、皆ただのビビリなだけだったようだ。


 アスペルに入るまで、色んな兵士達に一人で外に出るのはうんたらかんたらや…

 俺にもお前くらいの子供が、どーたらこーたら…

 などなど、何やらフガフガ言って心配したくれていたからな!



 …いやー、消し炭にしなくて良かったよ。


 街に着くと、「家まで送ってやろうか?」と言う、ありがた迷惑な申し出を「ありがた迷惑です」と、土下座で華麗に回避しておく。



 …そして、解放された俺は、一人で街を散策してみる。


 子供の目線と言う、記憶にも殆ど残っていないような、久し振りの感覚を楽しみながら、ゆっくりと歩いた。

 露天や商店が所狭しと立ち並ぶ、大通りの様な所を歩いてると…


 やたらと良い匂いがしてくる。



 …ぐぅー

 ぎゅるっ、ぐーぐぐー!



 …愛しのベイビーがお怒りだぜ。

 俺は、そう思いながら腹をさすった。


 が、ぺったんこだ!

 …違和感しかないな。


 だが、こーんなに身軽な体になれたのだから、改めて異世界の食事情を楽しまんと、損だ!


 俺は思い切り鼻を拡げて、周囲に拡散する匂いの分析を始める。


 …タレ、醤油、タレ、味噌…


 …

 解析完了!…どうやらこの中では、串に肉と野菜を刺して、濃そうなタレを満遍なく塗った、肉串と呼ばれる一品が、俺の中で勝利を収めた。



 ふんふ、ふ〜ん…

 俺はスキップしながら店の前に向かう。


 周りから見れば、年相応の微笑ましい姿だろう。

 が、これが現世なら、ドスンドスン揺れて、失笑と侮蔑を買うような地獄絵図だろう…


 …はっ、糞食らえ!だがなっ。


 そんな事を考えているとは思わせない、軽快なスキップで店に向かう。

 そして、店のオヤジが俺に気付いた所で、俺は立ち止まった。


 …そ、そうだ、俺って金持ってるのか?



 今までは、兎に角、死なない事と街に行く事だけを考えていたけど…

 服に金銭の重みは感じられないし、何処に財布があるのかも分からない。


 当然、あの世もこの世も"等価交換"だ。

 錬金が得意な兄とフルプレの弟の兄弟も言ってたしな。



 …しかし、いくらポケットを探しても一銭も出てこない。



 …

 ……


 なっ、なんてこった!文無しかよ…

 俺はご馳走を前に「待て!」を永久にさせられるのか…そんな焦らしプレイは望んでおらん!


 オヤジの冷ややかな目線を避けて、その場から逃げさる。

 そして、人目の少ない場所に移動すると、必死にメニューとアイテムボックスを漁ってみた。



 …

 ……んー、メニューでは所持金0ってなってるし、アイテムボックスにも現金は無い。



 金になりそうな物はあるけど、アイテム売るにも、このナリじゃな…めんどくさい事が多そうだ。

 いっそ、どっかのお姉様に、高そうなアイテム見せて、これやるから俺をヒモにして?

 …とか、言ってみようか。



 …無理か、そんな度胸ないしな。



 そんな事を、取り留めもなく考えて、人生を憂いていると…



 ーーガシッ!

「むっ…むぐー!」

 ーードサッ。

「いそげっ!」

 ーータッタッタッタタタ…





 …誘拐された。



 屈強な男達は「ぐへへ」と、雑魚キャラが吐きそうな笑い声を上げて、その場を走り去り、俺を担いで汚い建物に入って行った。


 どうやら…奴らのアジトのようだ…が、汚い。


 いや、マジで汚い!


 …

 …くそっ、何故なんだ!

 何故、俺の異世界生活を邪魔する!

 何故…俺の異世界生活は順調に行かないんだ…



 手を縛られ、口に紐を巻かれると言う、オーソドックスなスタイルで捕まり、声にならない悪態をつく。

 と、一人の誘拐犯が寝かされた俺の元にやって来た。


 …けっ、愉快な顔してやがる!



「ゔおぉいぃ〜、お前ぇ、可愛い顔してるじゃねぇかぁ!カネをもらう前に少し可愛がってやろうかぁ?」



 ……脳が震える‼︎



 い、いやいや、そんな事考えてる場合じゃない!

 やばい…

 異世界での初体験が、ホモでケツ穴を汚いオヤジに汚されるなんて!

 嫌だ!絶対、絶対嫌だ‼︎



 追い詰められた俺は、炎龍の牙に手を掛け…

 いや、手を掛けられない⁉︎


 そうだ…しまった。

 後ろ手に縛られているから、アイテムは奴らに向けて使えない。

 腹で発動させるのは、守りの宝珠で防御対処になるか不明だし…


 …誰か助けて‼︎



「…ん〜うぅ!」

 俺が縄を解こうとする姿に、余計興奮したのか、ハゲオヤジは喜んで触ろうとしてくる。


 …怖い。


 暴漢に合う女の子の気持ちはコレか。

 …俺は絶対にそんな事をはしないでおこう。



 そう、来世に誓い、全ての感情をシャットダウンしようとしていると…



 ーードン!

 ーーガチャガチャ…

 ーードンドン! ドカーン!



 突然ドアノブが回されたかと思うと、全く返事を待つ気が感じられないノックが数度響くと、蹴りで吹き飛ばされたドアが、俺の目の前で笑う変態オヤジを巻き込み、壁に激突して止まった。



 あの〜…ちょっとズレてたら、俺チンでるんですけど?

 少し股間に暖かい湿り気を感じたのを無視して、暴漢を襲う暴漢を確認する為、入り口に目を向ける。


 …お、弟の方⁉︎

 い、いや、違うな鎧が白い。


 そこには、白銀のフルプレートに身を包んだ、聖騎士の様な人間が立っていた。


 フルフェイスの兜を装着しているので、表情は読めないが…誰かを探してる、のか?


 ……ひょっとして、私の救世主様⁉︎


 俺は期待を込めて、瞳を煌めかせながら騎士を見つめる。


 騎士は、軽く室内を見回す。

 誘拐犯達が呆気に取られた表情で、騎士を見ているのを放置し、俺の所で顔の向きを止めた。


 …視線が合った気がした。


 も、もしかして…

 本当に俺を助けに来てくれたのか?

 入り口事件の衛兵の知り合いとかか?


 もし、このシュチュエーションで助けに来てくれたのなら…そして、俺が乙女なら、間違い無く。


「惚れてまうやろー‼︎」


 と、叫んでしまう状況だが…

 まぁ。アレは多分、男だろうし


 …せっ、せいぜい尊敬して、ありがたがるだけなんだからねっ!



 そんな事を考えていたら、鎧の奴は他の奴には目もくれず、ずんずん室内を歩いて…


 俺の前に跪いた。




「もしかして……ご主人様ですか?」


 …兜の隙間から、見知らぬ女性の声がした…。

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