第3話遭遇

 って、そんなの許せるかー!!

 絶対…ぜーったいに、ハーレム無双するんだい!



 俺は取り敢えず、自分の気持ちを落ち着かせて、アイテムボックスに何か無いかを探ってみる。



 俺は基本的にケチだ…

 だから、アイテムは山程残ってる。


 …筈。


 そしたそれは、ゲーム内での課金も一緒で、俺のプレイスタイルは移動補助アイテムとかには殆ど

 金を掛けないのだ。


 移動速度2倍とかの、魔法の絨毯なんか無視して、必死にマラソンしてたな…



 ……

 …若干虚しくはなったが、今は、そんな事を言ってる場合じゃない!



 暗くなりかけた俺は、ガサゴソとバッグを漁る。

 …ん?

 おっ⁉︎


 これは…

 ー防御の宝珠ー

 ・敵の攻撃を三回まで無効化する



 おぉ!役に立つ物あった!

 取り敢えず、これは使っておこう。

 首輪型のアイテムを着ける。


 ……リロードオン!(やけくそ


 宝石は淡く光ると、落ち着いた。

 おぉ!凄い、丁寧なエフェクトだな。

 画面越しのゲーム時代には、考えられ無いような進化だ。


 このアイテムは回数消化で、効果が消えてしまう筈なので、受けた攻撃の数を管理しないとな。





 ……よし、次だ。


 ー帰還の魔灯ー

 ・ダンジョン入り口まで瞬時に移動出来る



 カンテラ形のアイテムで、灯火の代わりに紫の魔石が淡く光ってる。




 …これを使って、ダンジョン入り口に着いたら、

 ソッコー敵に会うとか…あり得るな。




 俺は、意地の悪い運営対策に攻撃用のアイテムも用意しておく事にする。



 …ガサゴソ

 ……ほじほじ



 これかなぁ〜


 ー炎龍の牙ー

 ・広範囲の対象に火属性のブレスダメージ



 確か、ここのダンジョンでも、入り口のレベル帯なら、こいつで一撃だろう。

 範囲アイテムだから、囲まれてても何とかなるしな…



 ……

 ケチ根性で下位互換の、

 ー火竜の牙ー

 に変えようかと思って、思いとどまる。



 ミスは許されないからな…






 ……よし。

 いくか、



 ー帰還の魔灯ー リロードオン!





 次の瞬間、目の前が一瞬にして切り替わる。


 これはまさしく、竜のボールを集める漫画で、

 幼い頃に、皆一度は挑戦するであろう……


 瞬間移動!


 ってやつだな。




 ちなみに、敵は居なかった…


 用意した攻撃アイテムは無駄になったが、懐にしまっておく。


 さて、ここからの移動は、どうするかな…

 ダンジョンの周りは大森林に囲まれてて、敵に会うと簡単に逝ける。

 そう考えて、一つのアイテムを思いつく。



「…はぁ〜、これ高かったんだけどなぁ」


 ー召喚笛ー

 ・モンスターを召喚し使役出来る。一定時間で消滅する


 見た目がカッコよかったので購入した、移動系の召喚笛(ワイバーン)を見つめる。




 …ええい!ままよ!

 リロードオン!




 笛が光って爆発するかと思って、めちゃくちゃ焦ったけど、普通に砕けて消え、目の前に中型の飛龍(ワイバーン)が現れた。



 ……すげーカッコイイ。

 呟くと、早く乗れと言わんばかりに翼を地面に降ろしてくれる。


 カッコ良く、颯爽と騎乗しようと思ったら、

 身体が小さくて、必死によじ登る

 …しか無かったのは内緒だ!






 ……バウン!バスンッ!

 ワイバーンは、俺がちゃんと鞍に乗ったのを確認すると、飛び上がった!


「うわー!スゲー!なんかスゲー!」

「すげー怖い‼︎」


 すげーしか言えない、自分の語彙の無さと、かなりの高所まで飛び上がるワイバーンに、ダブルで恐怖する。


 ……旋回とかは絶対にヤメテね?




 遠くの方の空に鳥形のモンスターも見えたけど、ワイバーン相手には襲ってこないだろう。

 ……来たらブレス吐いちゃる!




 …最初は怖かったけど、飛ぶのにも少し慣れてきたので、景色を楽しむ余裕が出来た。



 今までの自分の人生観なんて、ぶっ飛ぶ位の光景だった。



 ーーー俺は、「真人間」になる!ーーー



 と、叫んでみた。

 海族の王様じゃないよ?



 その後もハイテンションで、10分位飛んだだろうか?

 …子供の体には、風が結構キツくなってきた。


 ふと、地面の方に目をやると砂埃が見えた。

「あれは…追われてる?」


 少し小さいので見えにくいが、馬に乗った騎士達に護衛されて、全力疾走する馬車を発見した。


 結構、切羽詰まってる感じがするな、と思ったら…後ろから追いかけてるの、悪魔(デーモン)だ!


 悪魔は基本的にダンジョンなんかに籠ってて、ボスキャラ扱いなのに…


 こんな平原で、手下を連れて疾走してるなんてゲームで見た事無いぞ⁉︎


 この位置関係なら、俺と同じで終焉の塔から街の方向に向かって逃げてる感じか…


 …どうしよう。

 助けるべきか?でも、危ないし…


 せっかく塔でモンスターに出会わなかったのに、ここで危ない橋を渡るなんて…

 それに、俺なんてレベル1しか無いんだ、わざわざ調子に乗って助ける必要があるのか?


 屈強そうな護衛もいるし大丈夫なんじゃ…


 護衛では悪魔に恐らく勝てそうに無い…

 と、心の中では理解していても、自分の弱い心に助けに行く踏ん切りがつかない。


 そのまま上空で様子を見ていると、悪魔の攻撃で馬車の車輪が破壊された!



 そして…

 中から…美少女が出てきた‼︎



「…今いくぞぅ!」

 明確な助ける理由を得た俺は、心に闘志を燃やし飛龍を操る!

「リロードオン!」

 ー六創の聖槍ー

 ・六種の力が込められた、破魔の槍 (悪魔系にダメージアップ)


 アイテムを発動させると、俺は周りに展開している光り輝く六本の槍を、今にも騎士を殺そうと迫る、手下悪魔達に投げつけた。


 …

 …ザンザンザッ!…グギャァア⁉︎


 三匹いたエイリアンみたいな悪魔達は、俺の放った槍に貫かれて消え去る。


「なっ、なんだ⁉︎あれはっ!」

「味方?…竜騎士だ!」

 俺を見て騎士達が騒ぎ出す。


 そのまま騎士達の前に躍り出て、飛龍から降りると、モンスターの親玉悪魔の前に立ちはだかる。


「こ…子供?」

 俺の後ろ姿を見て、落胆とも疑問とも聞こえる声がする。

 …俺だって好きで子供のナリしてる訳じゃないやい!


「我が配下達を…あなた、なんなのでしょう…カッ⁉︎」


「…正義の…味方?」

 悪魔が邪魔そうに俺を見てくる…コエー。


「お呼びでは無いんです…ナッ!」


「せっかくアイテム使ったんだし…遊んでいけよっ!」

 俺はそう言うと、残り三本ある内の二本を奴に向かって放つ!


 器用に避けるが、自動追尾の槍からは逃げられんぞ!


 …ドスドスッ!

「グゥ…ハッ!」

 体を貫いた、あれだけの攻撃を受けても平気そうにしてる…


「…このイウェルト様に、傷…ヲッ!」

 槍が体に刺さったまま、両手を広げると悪魔は、広範囲スキルのソニックブラストを放ってくる。


「リロードオン、静寂のベール!」

 俺は、精神にも風属性にも防御効果のあるアイテムを使うが、威力を殺しきれず壊れた馬車に叩きつけられる。


「聖女様‼︎」

「…きゃあっ!」


 周りにいた人達も、スキルの影響を受けるが、聖女と呼ばれた少女は騎士が庇っていて、何とか無事のようだ…


 俺も、防御の宝珠が発動してくれたから無傷で済んだが…

 アイテム無かったら死んでたよな?怖っ!


「くそっ!行っけぇぇ!」

 俺達を殺せるだけのスキルを放ったのに、誰も殺せていない事に驚く悪魔へ、慌てて残りの聖槍を放つ!


 …グザシュッ!

「グゥオォ…オッ…」

 さっきまでより、効いてきてる!


「オマケだ!リロードオン、ゼギスの雷槍‼︎」

 俺はトドメを刺すために、全十位まである内の、第八位の魔力が篭った槍を召喚し、動きの鈍くなった悪魔へ投げつけ畳み掛ける。


「ぐっ…」

 …槍の重さに体がグラつく、今までの体型ならビクともせんかったと思うんだけどな


「…ウガガガァア……きぃさまぁぁ‼︎序列四位の私が!…この程度でヤレると思う…ナッ!」

 先程までは、人間の貴族みたいだった悪魔の顔と体が、どんどん膨らみトゲトゲした真っ黒な怪物のそれに変貌を遂げていき、刺さっていた槍も全て抜けてしまった…



「ヤバそう…逃げ…いや、ダメージは結構あるはずだ!」

 俺は、思わず逃げたくなる衝動をなんとか抑え、さらに効果のありそうなアイテムを取り出す。

「魔封じの壺!」


「なっ!それは…太古の昔に、多くの同族を封じた…あの⁉︎」


 …なんだそれは?

 アイテムの設定に書いてあった効果が、対悪魔用ってなってたから出してみただけで、一回2000円のレア武器ガチャのハズレアイテムなんだけどな?


 …結局、俺が出した壺に封印されるのを恐れて、「聖女よ、首を洗って待っているんだ…ナッ!」と叫ぶと、デモンズゲートって言う見た事ない、空間転移出来そうなスキルを使って消えてしまった。


 …

「やったぞ!悪魔を退けたんだっ!」

「た、助かった…ありがとう…」

 後ろの方で騒ぐ声に、俺もようやく実感が湧いてくる。


 …両手を握りしめて見つめる。

 …初めての戦いに勝てた!俺もやれば出来るんじゃないか⁉︎


「…あのぉ、勇者様?」

 一人で喜びを噛み締めていると、不意に後ろから女の子の声がする…



 …ふっ…ふふ

 ……振り返れまてん!



 …もう何年も女の子と喋って無いのに、勢いで助けたけど…無理だ!

 無理、無理!上手く喋れる自信が無い!


 …

「あっ、あのぉ…ありがとうございますぅ。わたしぃ…私、本当に怖くてぇ…」


 少女から涙声が聞こえる…


「勇者様!お名前を御教え下さい!」

 騎士が鎧をガシャガシャさせてる…跪いているのだろうか?


 …どうしよう、

 失礼だし、一応振り向く…か?



 ー召喚時間が間もなく終了しますー



「んっ⁉︎」

 どうするか悩んでいると、頭の中に直接響く声が聞こえた。


 …ヤバ!


 そうだ!飛龍(ワイバーン)の召喚時間だっ⁉︎

 一定時間で消えてしまう相棒の飛龍、せっかく召喚したのに街に着けないとか、勿体無さ過ぎる‼︎


 俺は結局振り向けず、飛龍に走ると尻尾で担ぎ上げてもらう。



「あっ、勇者様!どうか、どうかお名前を!」


 食い下がる少女に、顔を直視できない俺は、上を見ながら言い放つ。


「ユウト…風間悠人だ!…です。」



 …カッコ悪いながらも、なんとか名前を言って飛び立った。




 どうやら、城塞都市アスペルに着いたようだ。

 …あ、どうやって目的地を伝えるんだろ。


 取り敢えず、身振り手振りで、

 ワイバーンに「あれあれ!」と指示を出すと、

 アスペルの街に向かってくれる。




 よしよし!城壁までもう少し…

 と、思っていると、衛兵が集合し始めて…

 カタパルトを用意してやがる!



「ちぃっ、クソが‼︎」

 叫びながら、飛んでくる矢を避けようとするも、ワイバーンの右翼をやられてしまう。




 浮力を得られなくなったワイバーンは、呆気なく地面に激突して…



…消滅してしまった。

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