6 浴室に癒されて、そして翌日
「おはよー!」
浴室のひとときに心も身体も癒されて、ぐっすり眠った翌日の朝。
晴れ渡る空の下、気分も軽く投稿する碧海はおはようの声も軽やかで。
「あ……」
「未心、さん……」
足取り軽く歩いていくと、やがて途中の十字路で別の方向から現れた藍沢と鉢合わせた。
顔を見合せ、互いに沈黙する碧海と藍沢の二人。
が、すぐに碧海は笑顔になり挨拶を放った。
「おはよ、藍沢さん!」
「お……おはよう、未心さん」
昨日のことをまだ気にしているのか、うつむき加減の藍沢は歯切れ悪く挨拶を返す。
「昨日はごめん!」
そこへ間髪入れず、碧海は頭を下げて謝った。
一瞬、ぽかんとした顔になる藍沢。だがすぐに表情を緩ませて。
「ううん、わたしの方こそ昨日はごめんね」
と同じく頭を下げて謝罪の言葉を碧海に返してきた。
「あれから続き観たよ! いやー、まさかヤシロあんなにオイシイ見せ場があるとはねぇ……」
「観たんだ! ね、ヤシロいいでしょ?」
そしてすぐに始まるモラッド話。
並んで歩きながら、昨日の続きとばかりに話が盛り上がっていく。
「あの展開知ってたら、昨日の私の感想はそりゃ怒るよねー」
照れ隠しの苦笑いを浮かべながら言う碧海に、藍沢も苦笑いで手をぱたぱた動かして。
「わたしも昨日はちょっと感情的になりすぎたよ」
と、照れくさそうに口にした。
「でも本当に最初のあの印象からあの展開はズルい!」
「うんうん、カッコ良すぎだよね、あれは」
「いわゆるギャップ萌え?」
「それ! 未心さんにもわかってもらえて嬉しいな」
朝とは思えないテンションで喋りながら歩いていく二人。
「あ、そうだ……」
「ん、なーに? どしたの藍沢さん?」
と、急に藍沢は立ち止まると、カバンをごそごそと漁り始める。
それを碧海が不思議そうに眺めていると、藍沢はそこから取り出したのは何冊ものコミックだった。
「え゛っ」
「これ、未心さんに読んでもらおうと思って!」
満面に笑顔で、それを差し出してくる藍沢。
唐突な展開に顔をひきつらせる碧海だったが、相手の勢いに飲まれ渡されたそれを思わず受け取ってしまう。
「お、重っ」
「まだアニメでやってない話も入ってるんだよ!」
抱えたコミックの山に悪戦苦闘する碧海をよそに、藍沢が嬉々とした様子で言った。
「こ、こんなにいきなり渡されてもー!」
「未心さん! しっかり読んで、もっと語り合おうね!」
一難去ってまた一難。
浴室に入り今日の疲れを癒せるのは、まだまだ先の事である……
~妄想バスタイムとりっぷGirl 完~
妄想バスタイムとりっぷGirl 光樹 晃(ミツキ コウ) @cou-mitsuki
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