イノシシとキノコとスナイパールーちゃん 2
さて、早速血抜きである。
首の動脈を解体ナイフで切り裂こうとしたのだが、全く切れない。さすが魔物。毛皮が丈夫である。
ひとまず聖剣を召喚し、それによって首を切り裂いた。聖剣はぶつぶつ文句を言っていたので、へし折ろうとすると静かになった。
首を切り裂いたら、そのままさかさまにして血を抜く。
ドラゴンなど、血が高い獲物もいるのだが、イノシシは血に価値はないのでどんどん垂れ流しである。
「うー、重いよー」
お姫に両足を持ってもらい、さかさまにつるしてもらっている。木の枝程度じゃこの巨体を支えられそうにないし、お姫に両足を持ってもらい空に飛びながらつるしてもらうのが一番確実だからだ。このまま、聖剣で腹も裂いて、大動脈を切り裂いてから内臓を取り出していく。どんどん血があふれるが無視である。血があふれるぐらいがちょうどいいのだ、血が抜ければ抜けるほど肉はおいしくなる。
「はい、これ、心臓」
「はいなのです」
「こっちが肺」
「はいなのです」
「これが肝臓だね。岩の上に置いておいて」
「了解なのです」
「腸は水で洗うから、別のところに」
「はいなのです」
ルーちゃんが内蔵の仕分けを手伝ってくれる。一部の内臓は持ち帰るが、大体の内臓はアシが早いので、この場で焼いて食べる予定だ。血みどろになりながら、モツを抜く。抜き切ったら、あとは川に投げ込むだけだ。
「川に入れるのです?」
「冷やすためだね。お肉の身が焼けちゃうからね」
「へー」
温度を下げるのはお肉を美味しくするのに大事なのだ。ここの川は山のかなり上から流れてきているから、非常に冷たくて、温度を下げるのにちょうどいい。
「ふえー、おわったおわった」
「お疲れ様。さて、ひとまず私は服を洗ったり、内臓洗ったり、お肉洗ったりしてるけどどうする?」
「キノコ狩りをしてくるよ!」
謎のポーズをとるお姫とルーちゃん。なんだ、そのポーズ。キノコ狩りのポーズか。
「まあ行ってらっしゃい」
「おいしいキノコをいっぱいとってくるぞー!」
「おー!!」
二人は森の中に意気揚々と消えていった。
さて、私はやらないといけないことがいっぱいある。ひとまず、たき火を起こさないと。
ひとまずそこの木を聖剣でばらばらにして薪にする。聖剣、便利だな。私は思った。
一時間程度たったころ、二人は大量のキノコを抱えて戻ってきた。
茶色いキノコだ。見た目はマツタケみたいだけど。
「ずいぶん一杯取れたんだね」
「あっちに群生地があったからね! 一杯取れたよ」
「そうなのです!!!」
どや顔しながらキノコを見せびらかすルーちゃん。かわいい。
ひとまずこちらも、内臓を水にさらして最低限の血抜きは終わったし、火も焚いているので、準備はできている状態だ。
「ひとまずこれが串ね。これでよく焼いて、キノコも焼いて食べよ」
「わーい、お肉だー!」
「おにくー!!!」
おいしいのは肝臓と心臓、肺である。消化器官も、ちゃんと洗浄すればおいしいのだが、ここでは洗浄処理できないので、捨てていく予定である。串にぷすぷす刺しながら、二人に渡していく。
お姫はキノコも一緒に串にさして、焼き始めた。私もキノコを一緒に焼き始める。ルーちゃんは肉オンリーだ。すごく肉食獣である。かわいい。
キノコは焼くと、おいしそうな匂いがするものだった。そういえばこのきのこ、大丈夫なのだろうかと思っていたが、お姫がガンガン食べるし、特に具合も悪くなっていないみたいだから、私も食べることにした。
もぐもぐ…… このきのこ、すっごいおいしかった。
食後、家に帰るために片づけをしていると、急に眠気に襲われた。なんだろう、これ、と思っていたらすでに地面で意識が遠のいた。もしかしてキノコのせいかな。そんなことを思いながら意識が飛んでいく。
「受付ちゃん!? 大丈夫!?」
「おねーちゃん!!」
「ルーちゃん、ひとまず急いで帰るよ。ボクは飛ぶけど、ついてきてね!」
「ルーは強い子なので大丈夫なのです」
そんな風に騒ぎながら、私はお姫にお米様抱っこされて、ギルドまで連れていかれた。
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