2018〜2022短歌まとめ

■2018

2018/11/23 11:55

飴色の

柳を散らす

足元で

もぐら顔出す

夢の淵から


2018/11/23 18:32

たのみます

麦藁追った

犬のこと

呼び戻すなんて

とてもできない

2018/11/25 08:24

魔術師の

きみ降らす雪

手のひらを

透る幻視と

積もる幻想

2018/11/28 18:53

足生えて

歩き出すかと

線を抜く

コタツ息絶え

猫も這い出す



2018/11/30 21:59

きみ歩む

その道きちんと

見えてるよ

淡雪だもの

足跡くっきり



2018/12/05 09:36

雨音よ

聞かせておくれ

旅のこと

星粒ひとつ

この身に宿す



2018/12/05 10:29

夕闇が

指差しぼくを

笑ってる

声もたてずに

恐ろしい赤



2018/12/06 21:55

真夜中に

きみに捧げる唐草模様

煌煌満月

煮るなり焼くなり



2018/12/07 10:00

夢遠し

背伸びじゃ届かぬ

半歩先

未来の星に

立つぼくの影



2018/12/12 12:32

在りし日の

草はら走る

随想家

旅の始まり

いつもそこから



2018/12/13 13:18

もう飛べない

風が吹いても

傘窄め

次の勇気は

ビルの上から



2018/12/13 13:26

しおしおの

願いに水を

やってみる

起きておくれよ

もうだめか

2018/12/15 09:37

ぶなの森

雪に蓋され

眠る熊

水脈の鼓動

春無き静穏


■2019

2019/01/12 10:20

ともすれば

離れてしまう

きみの手を

繋ぎ止めたい

それだけだった



2019/01/25 06:20

花の野に

うそひとつだけ

置いてきた

朝露写す

罪のひとひら



2019/03/31 17:17

たましいの

切れ端きみに

あげるから

そのチョコレート

一個ちょうだい



2019/11/06 07:37

震える背

移ろう季節に

押され行く

夏の約束

覚えているかな‬



2019/11/07 07:37

飛び立ちて

跡も残さぬ

残雪や

きみが去る日は

せめて伝えて‬



2019/11/08 07:30

呼び声よ

朝を掻き分け

もう一度

きみはささやく

朝の挨拶



2019/11/08 07:38

手を繋ぎ

空を渡るの

白鳥の

型に抜かれた

道を通って



2019/11/15 07:37

きみの手に

触れられずとも

寒いねと

語りかける日

ここは雪国



2019/11/16 00:36

夢に見た

きみの言葉は

砂に散り

なんと言ったの

起きてから問う



2019/11/16 21:57

針の雨

開いた穴は

塞がらぬ

穴と向き合い

きみが手を振る

2019/11/16 22:07

星は呼ぶ

白い骨には

足生えて

みな空見上げ

海鳴りに乗る



2019/11/16 22:18

おーいって

どこから呼んで

いるのやら

姿を持たぬ

優しきひとよ



2019/11/16 22:27

洗浄日

窓の外には

迫る渦

残るは我らか

星の子か



2019/11/16 23:09

風なぞり

声抜き取りて

ひと齧り

骨の間を

満たす文字片



2019/11/19 22:53

大風よ

うなれ渦巻け

窓叩け

布団で猫と

丸まり強がる



2019/12/14 20:50

夢のような日々でした

あなたが出迎えてくれる朝

もう一度

同じ場所で

今日は待つ



2019/12/14 21:30

今宵こそ

薄紫の

きざはしを

天の穴まで

登りきるのだ

2019/12/14 23:27

はらはらと

舞い落つ涙は

まぼろしさ

紅葉も雪も

温度ないはず

2019/12/14 23:41

黄昏し

背中を撫でる

さざなみよ

時間が止まる

黄金の夕景



2019/12/18 23:40

川岸で

きみを呼ぶ火を

灯すのだ

闇泳ぐ音

きっと聞こえる



2019/12/18 23:45

幸福の

欠片零した

湯舟から

もう出たくない

ここが棺桶



2019/12/18 23:54

責務から

離れ隠れて

種を蒔く

明日の自分よ

芽を生かしてくれ



■2020

2020/01/12 00:56

常夜灯

おれにとっての

月ひとつ

檻の中では

摘まみ取れずに



2020/01/13 08:27

ねえとよぶ

声音ころころ

反芻し

えっなんだって

も一度言って



2020/01/13 08:33

耳元に

落ちるおはよう

まぼろしの

眠りからの音

目覚めてひとり



2020/01/13 08:40

三日月に

引っ掛けておいた

忘れ物

伸び上がる月が

ぱくんと食べる



2020/01/13 09:07

三毛猫

呼ばねはんで

過ぎて行ったじゃ

日陰の暗がりに

溶けていったじゃ



2020/01/13 09:22

三毛猫の

模様をなぞり

世界地図

白い海原

縞の草原



2020/01/13 09:29

三日月を

数える指先

彷徨って

果てが来たなら

今はおやすみ



2020/01/13 09:37

三度呼び

沈黙せしきみ

忠実な

朝の使者言う

よくお休みでと


2020/04/26 09:21

言葉とは

小さな光

ひとの熱

航路そのまま

星を頼りに



2020/06/27 19:30

あの頃に

戻れたとして

夕暮れの

風ひやり降る

一人の砂場‬



2020/06/30 08:27

死神に

あらこんにちは

会釈する

いつも会う彼

微笑むだけで



2020/06/30 10:17

夜のたび

星屑齧る

片翼の

もう飛べぬきみ

ドライブ行こう

2020/06/30 12:11

河原石

積んで崩して

痛みの塔

伸びる爪今日も

切り揃えまた

2020/07/01 15:11

約束は

終わりを知らず

生き続け

終止符打つ手

目覚めは遠し



2020/07/09 09:44

涼しげな

機械の肌の

月下人

言葉を持たぬ

身の罪ゆえに



2020/07/12 22:11

蓋閉じて

籠もれば静か

海の音

銃弾避けて

ヤドカリ眠る

2020/07/14 15:32

ぼくたちは

ずっと目覚めて

いるからさ

またねさよなら

言わなくなった



2020/07/26 15:51

朝焼けの

輪を追い越して

忘れじの

背中に添える

星の祝福

2020/08/03 06:55

道祖神

置いて行かれた

祈り手に

拾い集める

旅人の鞄



2020/08/12 16:42

子守唄

知らぬきみにも

届いたか

夕闇から声

幻のえにし



2020/08/12 17:34

守るべき

ものが無くとも

背負わせる

目を開けてくれ

小さな勇者



2020/08/13 19:53

兄弟は

みな旅立って

どこへやら

ここにはもう

ぼくだけが



2020/08/13 19:59


飛ぶ鳥の

羽音留めて

おきたくて

ペン探す間に

終わる夕暮れ



2020/08/18 22:12


取り外し

天日干しにて

乾かすの

虫が無慈悲に

食らった小指を



2020/08/18 22:25


来世への

鍵を持つのは

俺だけで

忘れた顔の

きみの手を取る

2020/08/23 20:00


思い出の

夏は陽炎

ゆらめいて

幽霊となり

また来年‬



2020/09/12 23:25


闇に消ゆ

星の野原を

駆けた日よ

空滑るきみ

花振り呼ぶね

2020/09/12 23:29


さよならが

またひとつ空に

またたいて

星座をつくる

ぼくだけの舟



2020/09/12 23:36


その声を

早くに失くし

春は過ぎ

綿毛も飛んでく

次はどちらへ



2020/09/17 22:15


壊れたよ

月夜が聞いた

ひとりごと

ネジ一本が

闇に飲まれて



2020/09/17 22:32


吠える声

何言ってるの

聞こえない

きみの絶望

邪魔する雨音



2020/10/25 20:57


雨予報でもなく止まぬ

秋の雨

冬の足音

屋根を走って



2020/11/11 23:16


ボリュームを

下げて微かに囁くは

いつもの話

けれど頰寄せ

2020/11/11 23:33


霧を食む

きみの口から

おやすみを

聞きたくはない

夢まで共に



2020/11/11 23:44


待ちぼうけ

無心に磨き

つやつやな

りんごをあげる

枯れ葉カサカサ



2020/11/19 18:52


白鳥の

群れ押し寄せて

白む夕

降るふる空の

欠片冷たく



2020/11/21 15:26


冬支度

取り外されし

ブランコを

仰ぎ見る子は

一人佇む

2020/11/24 18:48


吐く息は

白く昇って

白鳥の

歌に混ざって

まだ飛んでいる



2020/11/24 21:43


おやすみを

伝えるひとが

いないから

まだ眠らない

夜更の天使



2020/11/24 21:52


飛ぶ姿

見てみたいけど

きみの羽

戻ってきたら

さよならだろね

2020/11/24 22:11


結末を

知ってなお飛び続けるか

果てへと向かう

星の片割れ



2020/12/01 09:50


無重力

灰の空には

雪の星

巡る天球

眠い年の瀬



2020/12/05 18:39


窓の外

外灯照らす

雪の影

閉ざされていく

ストーブほかほか

2020/12/06 23:20


うっすらと

敷かれた雪の日の目覚め

もう何もせず

過ごすと決める

2020/12/11 22:42


この雨は

幾つ数えりゃ

終わるのか

降る星よりも

冷たい秋雨



2020/12/27 10:13


落日の

畑で採れし

ふじりんご

ストーブで煮る

砂糖少なめ



■2021

2021/03/18 19:58


水槽に

飼った天使の

名を決める

知らぬ言葉を

紡ぐその口



2021/03/24 21:37


残雪は

土に灼けただ

消えていき

最後のひとひら

空へと帰る

2021/04/04 21:45


手のひらの

中に浮かんだ

真実の

闇の鏡に

ぼくは映らず



2021/04/04 22:18


もう誰も

心の中に

呼びたくない

雨の一日

方舟浮かべて

2021/04/05 20:42


朝は来ず

それでも窓は

閉めないで

永遠の別れ

思い出すから



2021/04/07 21:28


ストーブの

機嫌直らず

聞いてみりゃ

梅に恋して

散らぬようにと



2021/04/14 19:28


もう雪は

解けたからほら

戻っておいで

猫の形に

凹む花園



2021/05/29 18:21


ひだまりが

座った場所を

踏んでいる

素足の温もり

あなたに届ける



2021/05/29 18:28


すれ違い

触れられぬ手を

嘆かずに

伸ばし続けろ

硝子の空に



2021/05/29 18:38


日々綴る

言葉は光の

道となり

電子の野原の

お家に届く

2021/06/10 23:16


猫型の

穴に向かって

囁くの

今日あったこと

終わってしまったこと



2021/09/07 22:51


眠すぎて

絆創膏すら

剥がせない

夜が長くとも

寝落ち一瞬



2021/09/26 19:13


幸せは

全て心が

決めるもの

運命でもなく

未来でもなく



2021/10/05 22:30


車には

ガソリン足して

走り出す

峠は紅葉

降り立つ知らぬ瀬

2021/10/05 22:32


秋の空

手を伸ばしても

高すぎて

届かないから

山にも登る



2021/10/26 09:07

指先で掬った滴は塩辛い

浸っていいかい

身が錆びるまで

2021/10/26 09:18


日々越えて

涙の海も

こさえるが

きみが溺れる

ほどは泣かない



2021/10/26 09:25


雨漏りを

受け止める皿

用意して

きみが微笑む

涙は透明

2021/10/26 09:41


この涙

決してきみには

見せるまい

毒をぺろりと

飲み干されては



2021/10/26 09:46


オイルの血

歯車の鼓動

欠けたネジ

涙流せぬ

きみは優しい



2021/10/26 09:54


暗い部屋

脆さ埃を

日々拭う

きみの制服

無垢な白色



2021/10/26 11:17


ぽろぽろと

落とし物する

後を追う

立ち止まるな、そう

きみは泣かない



2021/10/29 15:53


その涙

もっとおくれと

ねだられて

レモンを絞る

コップいっぱい



2021/12/15 22:24


憂鬱を

片手にぶら下げ

デートする

名の無い花々

四季巡る庭



2021/12/16 20:32


分かたれた

それぞれの道

夜に落つ

暗い月光

きみを照らすか



■2022

2022/01/06 21:21


降る雪を

舌先に乗せ

溶かす熱

泡立ち落ちる

袖の闇へと



2022/01/07 16:56


ひとひらの

鱗手に行く

蛇の道

てくてく歩く

足はすり切れ



2022/02/04 13:38


花びらは

急須の底で

春を待つ

夏の盛りの

ままの姿で



2022/03/19 21:52


師に宛てた

手紙一筆

したためる

風の草原にいま

私はいます



2022/04/17 09:01


夢だけを

ただ追うはずの

生なのに

転がり落ちる

盤上の球



2022/04/17 10:13


傍目には

悪夢のような

ぼくの夢

瓶に封じて

飾るきみの手



2022/04/17 10:27


起きて夢

起きられずに夢

漂う日

この身うつつに

残したままで



2022/07/29 20:54


気付いたら

そっぽ向いてる

扇風機

こっちをみてよ

お話ししよう



2022/07/31 18:04


焼きついた

路上の影は

片割れを

探せないまま

日照りにひとり

2022/08/31 13:59


日常がついえることなど無いからさ

俺はいつでもここにいるよと



2022/08/31 14:28


書を食らい

獣閉じ込め

闊歩する

四足の庭園

無邪気な唇

2022/09/13 23:31


鈴虫の

声に重なる

エンジンの

遠い唸りも

眠りに沈んで



2022/09/14 23:29


うたうたい

四季を渡ろう

風よ吹け

星の歩みに

合わせて大股


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