天翔けるマフラー(一行小説まとめ)
夏は賑わう磐座も、秋を過ぎると訪れる者はぱったり途絶え、灰のような雪が座すのみ。
見上げてみても空はからっぽ、地には花、咲くそばから子雀が花を落として遊んでいるのだ。
見覚えのない子供の手にも祝福を配って歩く私こそ誰なのだろう。
水溜りから声をかけてきた魚の言うことを信じるならば、あの虹は水浴びした龍の鱗の輝きだ。
雨合羽を着た巡礼の鳥は、飛びもせず空に霞む向こう側を見ているのだ。
忘れ去られた白鳥の水かきが、薄氷を割り水面の上をペタペタと歩き回り、いつまでも飛び立たないのに、来年の迎えも来ないのだから。
お山へと去っていくひとの長くたなびくマフラー掴まえて、するりと残った手触りの、消えないうちに年だけ跨いでぼくは眠る。
予言するペンギンは未来を絵に描いて庭に飾り、通る者の目を楽しませている。
きみを送り出すために歌はいらず、花は空色に溶けて帰り、おいしいごはんにリボンをかけて、僅かな骨と交換した種は庭石の下に埋める。
紐に繋がれた鳥は、枯れて木の葉になってもまだ飛んでいる。
期限間近のから元気、20%オフだから買ったけれど、カラカラに乾いているじゃないか、こんなに寂しいものだなんて。
目覚めた一瞬、光が差し、自分が何者か分からなくてなって、壊れてしまったのか、いいや初めから何も無かった事を思い出したのだ、何者でもないことを、しかし光は過ぎ去り、部屋にまた陰が落ちると、記憶の汚濁に再び溺れる。
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