きっとわかっていたような

俺は知っていた




俺の家庭はあいつの母親が子供を産んだ途端子供を俺に押し付けて離婚した


だからしんどい思いをしていることはわかっていたが俺だって本当は1人にさせたいわけじゃなかった


ほんとなら『いい父親』でいたかった


けれど俺にはそんな余裕がなかった


仕事して帰って休日は寝ていた




その間ものすごく静かで寝やすかったのはとても覚えている


起きたらご飯を置いてくれていた


冷蔵庫には昼飯や夕食があった


もちろん惣菜だったし、ごはんもチンするやつで作ってはいなかったがありがたいとは思っていた


ただそれが当たり前になってきて


夜遅くまで起きてることがないあいつはいつも早く寝ていた


本当なら夜更かししてゲームとか漫画とか欲しかったんだろう


けれど俺はそんなことも考えていなかった


正直にいえばなんでこんな奴がいるんだということまで思ったことはあった


中学になって3年生の時に泣きながら俺に




「学校に行きたくないです。もう辛いです。」


と言ってきた


俺はとてもその時まともじゃなかった




「辛い?俺だって仕事が辛いさ、お前も我慢しろ」




そういったことを今思い返せばただのクズだ


親身になって話すべきだった




そんな会話をした数日後学校から電話があって呼び出された




その理由はあいつがリストカットをしていて腕や手首が深く傷ついていたからだった


最近貧血のような状態が多かったため保健医が心配になり腕を見たらそうだったから思わず悲鳴をあげたそうだ













そして俺は始めてあいつを殴った


「なんでこんな気持ち悪いことしてるんだ!何がしたいんだ!」


そういった時あいつはいきなり泣き出した


それまで感情を持った表情をあまり見た事がなかったから大変驚いた




その日から俺はそいつのことを気持ち悪く思い

精神病院へ入院させた




そして退院したのは中学が卒業する直前の頃だった



俺は息子がいない生活で始めてごはんがないことにきづいた


いつも用意してくれていた奴がいないんだからひとりでにご飯が歩いて食べられに来るなんてないってわかっていたがご飯を買いに行くだけのために外に出るのはバカバカしいと思った


それからあいつの物を整理した


大量の賞状、トロフィーを箱につめた

あいつの小学校から貯めていたノートを全て何も言わずに捨てた

それがあいつのためだと思った


帰ってきた時にノートには今まで書いてきた絵などが書いていてそれを見ることが楽しみだったのにと言われた


素直に俺はしょうもないと思ってしまった


だからどうした?楽しみがなくなるぐらいでそんなに泣き叫ぶほどのことか?


そんな思いを押し付けていた


ダメな親だった


こんな俺に育てられて辛かっただろう


ごめんな...


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