#008 『 動き出す運命 』
翌朝、小鳥のさえずりで目を覚ますと俺は軽く周囲を見回す。
するとそこにはナイフでできた刺し跡や斬り割かれたかのような跡が部屋中広がっていた。特に酷いのは俺が激突した壁だった。
壁の板は二、三枚完全に割れていたものの幸いなことに丈夫な設計で建築された建物だったために隣の部屋まで穴が開くことはなかった。
「こりゃ、どうしようか。」
内心、隠せるか隠せないかと一人自問自答を繰り返し、部屋がこうなった言い訳を考えたがうまいこと思い浮かんでこなかった。
そんな時、ドアの方からノックが聞こえてくる。咄嗟に愛剣を握り抜刀する。
恐る恐る足音をせずにドアに近づくとドアの向こうから声が聞こえてくる。
「アストル様、大丈夫……ですか?」
フィンの声に俺は内心、ホッとするものの心配性のフィンに部屋を見せてはいけないと思い、剣をたか隅に置くと、さも何もなかったように適当に身支度をするとドアを僅かに開けてフィンが部屋を見れないようにする。
「大丈夫ですか?」
フィンの心配を大丈夫と適当にあしらうと身支度を済ませるべく部屋に戻る。
フィンにはこれ以上部屋を詮索されないようにあらかじめ朝食の注文と席の確保を命じて俺は支度を急いだ。
部屋を出るとすでに一階は繁盛しており、ほとんどの客が一階の食事処で食事と酒を楽しんでいた。
朝食をさっさと済ませ城へ向かうべくフィンを探すとものの数十秒で見つける。
「昨日と同じテーブルだな。」
見つけて早々、言うとフィンは頼んだ朝食のメニューを教えてくれた。
気まぐれスープにブロートパンといういかにも怪しそうなメニューに一瞬苦笑するが、すぐさま本題へと移る。
「今日は午前中に処分を下し、午後からは直接、統治問題に手を入れたい。おそらく、数日はホーリーヘッドへは帰れないだろうがそれは仕方ない。現状最優先課題は統治問題の解決だ。」
「そうですね。具体的な対策などはありますか?」
「一応のな。だが、実際にできるかどうかはまだ不明だ。一体どれだけの人が付いてくるか……。」
そんな、会話の中で突如、二階から悲鳴が響き渡る。
悲鳴を聞いてすぐさま俺とフィンは席を立ち二階へと駆け寄るが二階の廊下には怯えた若い女性ではなく、むしろ怒り故に謎のオーラを放つ若い娘だった。
その瞬間、俺は全てを悟り逃げ出す準備を行うもそれを察知した若い娘ことウェイトレス娘が鬼気迫る表情で近寄ってきて、胸倉をつかんでくる。
「貴方ねぇ!! どうしてくれんのよッあの部屋ッ!!!」
部屋という言葉を聞いて、フィンは剣から手を放し呆れた目つきで見てくる。
目つきからでも伝わってくる“説明してください”という言葉に俺は負けてフィンとウェイトレス娘、そして、ウェイトレス娘が連れてきたここの女将である五十代の女性の三人に説明するべく別室へ連行される。
仮にも貴族という立場である俺は、本来であればこうした民の怒りを買うようなことはしてはいけないがこの場合はある意味仕方がない。
別室へ移動して早々、説明をせがまれた俺は謎の襲撃者との間に起きた戦闘のことを話した。
「「そんなことが……。」」
俺の説明を聞いて、ウェイトレス娘と女将はある程度納得した様であったがフィンは何か引っかかるのか、考え込んでいた。
「でもなぜ、その襲撃者はお兄さんを襲ったの?」
ウェイトレス娘の素朴な質問がグサッと心に刺さる。
「そ、それは……。」
目線を横にスライドさせながら考え込む俺に助け舟を出したのはフィンだった。
「実のところ私どもは商人なのですよ。それ故に商売敵が多く、こうして身を隠しても時々襲われるのですよ。ハハハ、困ったものです。」
「だが、それだとうちが被害を被るだけじゃないか。このツケはどう払ってくれるんだい?」
女将の脅しともとれる笑みと主張により、宿泊費は修復代と迷惑料として三倍に請求されたものの他に何か言うことはなかった。
こうしてなんだかんだでまとまると頼んでいた朝食を済ませ、宿屋クロネコを後にする。
宿屋クロネコを出て街の南側にある城へと出向いていく中、フィンが俺に訊ねる。
「アルトス様は昨日、襲撃に会ったのですよね。」
「ああ、それがどうした?」
「…………それがおかしいのです。私も部屋を拝見しましたが部屋中のいたるところにナイフの刺さった後や壊れた家具が散乱していました。また、アルトス様は壁に激突したと言っています。であるならば……」
「––––––––そうだな。確かにお前の言うとおりだ。」
フィンの考えを汲み、俺は脳内を働かせた。
本来であれば激しい戦闘が真昼間の街中などで行われた際にはその物音に引き寄せられて衛兵の一人でも駆け寄ってくるはずだ。
だが、今回の襲撃はそのようなことはなかった。ましてや激突した壁の向こう側はフィンの宿泊した部屋だった。つまり、俺が壁に激突した時点でフィンは襲撃を知ることになる。
しかし、当のフィンはウェイトレス娘が部屋を見るまで襲撃のことはわからなかった。
これほどまでに近くにいながらなぜ、気が付かなかったのか。たとえ、寝ていたと仮定しても激突の衝撃でフィンは起きるはずだ。
「フィン……この街、何かありそうだ。警戒を怠るなよ。」
「ハイ。」
警戒心を強めながら俺とフィンは互いにフードを被り、街の南側を目指す。
街を南に進むこと十分。ついに、城の門前へとたどり着く。
門前は兵が左右に一人ずつ、配置されており完全武装で門を守護している。また、兵の装備は鉄でできた武器、防具のために強引な突破は不可能。
「覚悟はいいな? フィン。」
黒い笑みを浮かべ、俺は隣にいるフィンに問う。
「……はい。」
覇気のない呆れた声で応えるフィンに俺は「ではッ」と声をかけると一直線に門前へと歩み寄る。すると、すぐさま左右から声がかかり、目の前に槍が構えられる。
「「ここから先は、司令官の許可なく立ち入ることはできん。立ち去れッ!!」」
威勢のいい声に迅速な対応、まさに兵の中でもかなりのエリートと思われる二人に俺とフィンはフードを取り払い顔を見せると、大きい声で告げる。
「俺の名は、イーサン・アルトス。ここの領主の息子だ。訳あってここへ来た。さぁ、門を開けよッ!! これは命令だッッ!!!!」
名前と顔を知ったせいか門兵の二人は驚き、すぐさま謝罪する。
同時に向けていた槍を収め、命令通りに門を開け始める。
突如の訪問に城の中にいた兵や使用人は慌て始める。
その中には二階の窓より驚きながらも俺を眺めるグライド司令官の顔があった。
俺はその顔を見ると黒い笑みで微笑み返し、暗に“今からそちらに行くぞ”と脅しをかける。
門をくぐり抜けて、城内へと入る。階段を上り二階の来賓室へと案内される。
相手は仮にも司令官であるためにそれなりの面目やプライドがあるが俺には関係のないことだった。
その後、司令官に会いたいと告げた俺とフィンは数分、城の来賓室で待たされたものの通常よりも早くにグライド司令官との面談が行われた。
「これは、これは、アルトス様。どうも、私はオルドー・グライドです。ここの司令官を務めさせています。今回は如何ようで?」
対談が始まって開口一番にグライド司令官は精一杯作って来たであろう表情を浮かべながら聞く。
グライド司令官の言葉遣いを聞いてアルトスはグライド司令官の心情を察し口角を上げる。
丁寧な口調ではあるものの細部の動きや声の震えが少し大げさすぎる。
今にでも爆発しそうな怒りを抑え、隠すことに必死で会話の主導権を握りたいのが見えとれる。
ならば……。
そこまで考えるとすぐに俺はグライド司令官の質問に応える。
「いや~何、この私が召喚を命じたものの拒否されましたので…………。グライド司令官は召喚に応じず何をやっているのかなと。訪問した限りですよ。ハハハッ!!」
軽く煽りながらも詰め寄る俺にグライド司令官は一瞬、額に青筋を立てる。
しかし、仮にも身分が上の俺にグライド司令官はすぐさま表情を戻し、言い訳をする。
「それは、先の書面にも述べた通り、近年のこの街における問題の整理に忙しく、とても召喚には応じるだけの時間がなく……。」
「つまり、グライド司令官ともあろうお方が些細な街の問題の解決策や対抗策を思い浮かばなかったと……?」
先ほどよりも強めな煽りを入れてグライド司令官を挑発する俺に隣のフィンは気まずそうにただ立ち尽くす。
内心では歯ぎしりしながら今にでも目の前の俺に襲い掛かって殺したい感情を必死に抑え、何とか逃げ道を考えるグライド司令官に俺はとどめをさす。
「そうですか……まったく……、グライド司令官には呆れます。まさか、こんなにも無能であるなんて……ね?」
“無能”という言葉についに堪忍袋の緒が切れたのかグライド司令官はテーブルをバンッと叩き、俺に詰め寄る。
「このガキャァ、図に乗るな!!」
剣に手をかけ抜刀しようとするが即座に思いとどまる。
先ほどまでただ気まずそうに佇んでいたフィンからのただならぬ気配を感じ取ったためだった。
その瞬間、俺は今まで以上の下卑た笑みを浮かべ、釣れたなと内心で思う。
そして、即座に立つとグライド司令官に向かってできるだけ高圧的かつ容赦なく告げる。
「グライド司令官、貴官の先ほどの態度は目に余る。よって厳罰に処す。また、この街の統治問題においても具体的な対抗策や解決策を打ち出せずにいた。これでは今後も貴官にはこの街を預けられない。加えて、今回の度重なる領主への無礼。よって、貴官に言い渡す処罰は司令官の解任及び下士官への降格である。」
自分から煽り続けた挙句、怒りを露にした相手に理不尽にも責任を押し付け、相手を屈服させる。それはまるで中世の世界観に存在する悪徳貴族さながらだが今回ばかりはそうは言ってられない。
「この俺を解任するだとッ!! つけあがるなッ! この青二歳がッ!!」
年端もいかない青二才の少年に煽られ、無能と蔑まれ、あまつさえ司令官の解任を告げられ、すでに腹の中が煮えくり返っていたグライド元司令官は腰に掛けた剣を抜刀する。
そしてそのままの勢いで地面を蹴ると自分とアルトスの間にあったテーブルを軽々と薙ぎ払い、アルトスに迫る。
だが、それを予見していたのかアルトスはグライド元司令官を笑みを浮かべて睨むだけで何もしない。
グライド元司令官の剣があと少しでアルトスを捉えるところに突如として剣が現れ、火花が散る。
飛び掛かった故に足場を失っていたグライドは虚空から現れた剣に阻まれ、勢いよく後方へ飛ばされる。
「行けませんよ……グライド元司令官。この御方に手を上げられては…………。」
虚空から現れた剣はフィンの剣だった。
かつて、王国の中でも一流と謳われた二十一人の最強騎士。
その一人がフィン。本名、フィン・マックール。
普段は穏健で世話焼きな優しい性格だが、戦や剣における戦いにおいては無類の強さを持つ。
元エクトル近衛隊隊長を務め、一時はエクトルの右腕とさえ称された彼の剣の強さは二十一人の中でも第六位に位置する。
その二つ名は《斬首騎士:デュラハン》
もし、グライド司令官があの時、召喚に応じていれば彼の面目やプライドはこれほど傷つくことはなかったのかもしれない。
されど、それではこの街の状況は変わらなかったかもしれない。
そう言い聞かせるように俺は建物の外で警備している衛兵にグライド元司令官の拘束を命令する。
フィンの攻撃が効いたのかグライド元司令官はそれ以上は直接、何もしてこなかったが怒りに燃えた目つきでただ俺を睨んできただけだった。
それはまるで、復讐に燃えた者のように————。
◇・◇・◇
グライド元司令官を処罰してから数時間後、書斎で仕事を始めていた。
既に時刻は午後をさしている中で俺は羊皮紙の山と戦っていた。
灌漑施設の改修工事の計画書と決算書。加えて老朽化の激しい軍船の廃棄及び新規造船許可申請書など、前世では一生に一度たりとも拝むことができなかったであろう紙の束に目を通して不備や矛盾、不正な中抜きのための資金の水増しなどがないかを確認する。
内容に問題がなければ承認サインを行い履行させる。一方で内容に不備があれば担当官を召喚し事情を聴く。
それで問題がなければいいが……問題は不正を行おうとする輩がどの世界においても一定数いるということだ。
昔の貴族や官僚は前世の所では国会議員や公務員であるがその中身は天と地ほどの差がある。公務員や国会議員が不正を行えば法によって罰し、メディアなどに連日報道される。
そうしてできた空席に予備の人員を導入し埋めることで組織は持続的に活動が可能になる。
だが、中世ヨーロッパのような世界観であるこの転生後の世界ではそう簡単に貴族や官僚を処罰できない。
なぜなら、そもそも官僚や貴族になれるだけの教育を受けたものが少なく、またそうした不正貴族や不正官僚は互いの不正を隠すために団結するからだ。
加えて、人手不足であるが故にそう簡単に切り捨てることができない。故に楽して利益を得るべく不正を働くのは悪質極まりないが、下手に取り締まっては現在の統治に支障をきたす恐れがある。
当たり前の教育に当たり前の納税などは充実した官僚体制と圧倒的な力を持つ中央集権体制の賜物であることは今更ながら理解する。
まさに、近代国家の強みが現状問題として現れている。
「早く、初等教育だけでも導入したいな。これは……。」
一人、書斎で羊皮紙の束をのぞき込みながらひっそりと呟く。
そんな中、慌ただしい様子で伝令兵が書斎へと雪崩れ込む。
「アルトス様、領主エクトル卿が帰還なさいましたッ!!!」
突如としてもたらされたエクトルの帰還という報告に俺は一瞬何か引っかかったが、すぐさま命令を下した。
「全兵に通達。父上を迎え入れ、城内の防衛及び都市の警戒を厳とせよッ!!」
◇・◇・◇
「大丈夫ですか、父上?」
カーナヴォン城の正門前広場に左右四人、計八人の護衛を連れ、俺と四人のメイドは領主エクトルを迎える。
エクトル一行は荷馬車一台に騎兵九人となっていた。
「ああ、大丈夫だ。だが、すでに半数がやられた。とんだクソ野郎どもだ。」
エクトルが王都へ行ってからすでに一か月弱。
その間の政務を行っていた俺はこれで政務より解放されるはずだが、新たなる問題が発生したことでそうもいってられない状態になった。
エクトルが王都からの帰還中に度々襲撃に会い、護衛を失っていた。
これなら度々ある貴族への襲撃だが、問題はエクトル親衛隊をここまで追い詰めることのできる技量の敵がいたということだった。
普通、貴族への襲撃はハイリスクハイリターンだが、その実行犯は基本的に決まっている。
主にあるのが地域に潜む大規模な盗賊団であったり、凄腕の傭兵集団だがその程度ではエクトル親衛隊はここまで追い詰められることはない。
エクトル親衛隊は王国の中でもかなりの実力者集団と言われているためだ。
事実、王家の近衛隊を除けば王国一だ。
しかし、現実問題ここまで追い詰められ憔悴した親衛隊は初めてだ。
ということは敵は————同じ貴族だということだ。
いかに精強なエクトル親衛隊であろうとも所詮は人間、数には勝ることはできない。
常に命を狙われながら昼夜、大地を駆けることは精神的に来るものがあり、満足な寝床もない中でいつ襲われて死ぬかもしれないというのは想像以上に疲弊し憔悴する。
そんな精神状態や健康状態での戦闘は判断を鈍らせ、手傷を負うのは想像に容易い。
加えて、常に一定数の兵力を持つ貴族であれば、時間をかけ念密に計画すれば親衛隊をここまで追い詰めることは可能だ。
だが、そもそも貴族というのは王の代理という名目で権利を主張し行使する者だ。そんな者たちがどのような意図をもって攻撃してくるのかわからない。
元来、貴族による貴族殺しは国家における反逆を意味する。
そんな、ハイリスクを背負ってまで得たかったリターンは何だったのか。
つまり、エクトルを襲ったのは単なる刺客ではなく、明確な敵意を持つ貴族。
それはおそらく、今回俺を襲撃した犯人と同じかその黒幕の可能性がある。
「誰が、このようなことを……。」
思考を整理するも何処にも敵が見当たらない。
敵の意図が読めない以上、取れる対策というのは常に後手となる。
「そのことで話がある。アルトス、すぐに私たちと共に書斎へ来い。あそこなら話は聞かれまい。」
そう言うとエクトルは荷馬車から降りてきた見知らぬフードを被った人の肩を掴むと急ぎ早に城へと入り書斎を目指す。
その様子に何かしらのことが動いていることを知った俺はメイドたちと護衛の兵に親衛隊のことを任せ、すぐさまエクトルの後をついていく。
城に入り、異常な雰囲気を漂わせているエクトルの様子を見て察したのか、辺りに居たメイドたちは慌てる様に色々と準備を始める。
ザワザワとした雰囲気の中、書斎にたどり着くとエクトルは先程まで肩を掴んでいた手を離し、頭を抑える。
「どこから話せば良いのか…」
そんな困惑気味のエクトルに俺は落ち着いた態度で尋ねた。
「何かあったのですね。」
「ああ。だが、その前にお前にここにいる人を紹介しよう。」
そう言うとエクトルはフードを被った人物に手を差し伸べる。
「彼女の名は、オリヴィア・ウェスト。今日から私の元で預かることになった。」
エクトル言葉を合図にフードの人物はフードを取ると今まで隠れていた、美しい黄金に煌めく長い髪が目の前に現れる。
黄金比のような整った顔立ちには宝石のガーネットのような紅い瞳とプルンと柔らかい薄ピンク色の唇があり、いかにもな美少女がそこに立っていた。
「どうも、ご紹介に預かりました。オリヴィア・ウェストです。以後、お見知り置きを。」
オリヴィアの美しさに一瞬魅了されそうになるがわずかに残っていた理性で振り払うと社交辞令的に自己紹介する。
「……はい。私はイーサン・アルトス。エクトル卿の次男にして政務を仰せつかっています。」
互いの自己紹介も終わり、顔も見合わせた俺とオリヴィアはエクトルに視線を戻す。
はぁ~とため息をつくエクトルに俺は説明を……と言いそうになるが、その前に隣のオリヴィアから先に説明を求める声が出る。
「エクトル卿、これはどういうことでしょうか。私は急ぎ、兵と共に王都へ向かわねばなりません。ですから今ここで————」
「オリヴィア、今更王都へ向かっても意味はない。それに、私は君の母君と約束したのだ。必ず君を守りぬくと……。」
オリヴィアの言葉を聞き、険しい顔になったエクトルはすぐさまオリヴィアの意見を遮るように話し始める。
「それにだ。今の我々が軍を率いて王都へ向かうなどできはしない。」
「どういうことでしょうか。父上。」
オリヴィアとエクトルの会話をある程度聞いた俺は現在起こっている事態を把握すべく訊ねる。
「そうだな。では、はじめから話すとしようか。事は一か月も前になる。」
そう言ってエクトルは、事の事態を話し始めた。
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