#001.5 『 模擬戦闘 』

「はーッ……」


 俺は大きく息を吐き、荒げていた息を強引に整える。

 極度の緊張感が全身に走り体が萎縮する中、額には僅かに冷や汗が吹き出てくる。


 一瞬でも気を抜けば、意識を持っていかれてしまうほどのエクトルの威圧により、脳は本能的な恐怖から警笛を鳴らす。


 これがもし戦争中や決闘中であれば意識を飛ばした瞬間、死が訪れる。

 それほどまでにエクトルの威圧は凄まじく、それでいて剣術のレベルも違っていた。


 まさに、手も足も出ない。

 そんな状況の中、俺はグリップを強く握りしめ大地を力強く蹴って、エクトルへ突進した。




 ––––––––事の発端は数時間前、唐突に始まった。


「では、今日は私が相手をしよう。」


 やけに乗り気なエクトルはそう告げると模擬戦で使う刃の潰れた鉄剣を握り二、三振りした後、不敵な笑みを浮かべながら鋭い眼光で俺と兄のケイを睨む。


 まさに肉食動物が獲物を捕らえる時に見せるモノと同じモノが俺とケイに向けられ、強引にもエクトルとの模擬戦が始まった。


  模擬戦とは言っても、ただ剣のぶつかり合いではない。言うなれば、死なない程度に加減しながら行われる決闘というのが正しい認識だ。


 決闘というからにはもちろん、流血や骨折は当たり前にある。それに加えて、医療はほぼ気合任せの根性論式である。


 そのため、武家貴族はそう長く続かないのが世の常だ。

 だが、逆を言い換えれば武家貴族に生まれ、当主となった者は皆、例外なく––––––––


 故に、戦争において武家貴族は国家における最強の切り札となるため、消えるということはまずない。まさに、国家による貴族社会の需要と供給である。


 それはさておき、エクトル卿。

 正式名はイーサン・サー・エクトル辺境伯は、王国において王と肩を並べるくらいの強さを持つ男。

 その伝説は数知れず、戦場へ出れば屍の山が積み上がると言われている。


 それ故、一部の貴族からエクトルは、屍の騎士と呼ばれ恐れられている。


 そんな男に相対するはイーサン・サー・ケイ。

 積極的に物事に取り組まない性格に加えて、武家特有のスパルタ的教育も息苦しく、むさ苦しいとの理由で領の街に出ては女性を口説いている。


 また賢く休み、自由気ままな人生を過ごすことを目標に生活し放浪している。

 だが、その実は同年代の騎士や貴族の息子たちでは、歯が立たないほどの実力者。


 過去に小遣い稼ぎと称し王国の王都で年に一度行われる武闘大会では、顔を隠しながらも優勝し、大金を手に入れていたほどである。


 その両者が模擬戦という場でぶつかり合うというのは珍しい。


 それは領主の提案という名の命令があって初めて実現できる戦いである。

 事実、ケイはエクトル以外で素直に言うことを聞くのはこの世には存在しない。


 例え王の命令であろうとも、ケイは“面倒なことになるから”ということで仕方なく従っているだけと話していた。


 つまり、ケイにとっては自分より強い者でなければ従う気になれないという武家特有の精神を引き継いでいる。

 しかし、当の本人にはそれを認めていないため、エクトルとの関係は親子という優しいものではなく、師弟という関係に近い。


 エクトルという最強の師に教えを請う弟子ケイ。それが両者の関係性である。


 力なき者に意見は無い––––––––––––。

 イーサン家における唯一無二の家訓。力が全ての家に生まれ、育った者。

 その宿命を一手に引き受け、実現したのがエクトルの息子、イーサン・サー・ケイ。


 その両者の対決は、武術の家庭教師の掛け声で開始した。


「それでは、はじめッ!!」


 告げられる開始の掛け声を合図に両者は勢いよく地面を蹴り、間合いを一気に詰める。

 刹那、ギーンという重低音の金属音が響き、火花が散る。


 エクトル、ケイ共に使っているのは刃の潰れた模擬剣ではあるがそれでも一応は鉄製。


 金属同士のぶつかり合いは現代人にしてみれば何がすごいのかわからず、無骨に見えるが実際は違う。

 剣と剣が勢いよく衝突すれば火花が散り、持ち手を衝撃で麻痺させ、反応を鈍らせる。


 一見、無骨に見えるただの鍔迫り合いも実際は嘘と戦術の駆け引きが繰り広げられる。

 相手がどう出るのか。自分はそれに対してどう対処すべきで、どう返せば相手を追い詰められるか。

 戦闘中、それが無限に繰り返される。それが一瞬でも途切れたり、遅れたりすれば容赦なく“死”が訪れる。


 敗北は一切の贔屓目に関係なく、平等に与えられる死の前触れ。

 それこそが戦争という物の本質である。そこに正義を求めるのは、人間のもつ理性で有り、感情である。


 故に、今を生きる現代人には理解できない点が多い。


 ただの金属の殴り合い。そう思えるのは平和に生きた人だけ。

 最前線で戦う兵士や戦士、領主や騎士などは戦闘をみて、評価されることも少なくない。


 古来より強いものが社会のヒエラルキーの頂点に立つのはそのためだ。

 ただ強いだけでこの世は上に行ける。それが古来では力であり、現代では経済なだけの話。


 そのため、俺もこうして剣術を磨いているわけではあるが……。

 元よりあまり運動が得意ではないため、剣術自体はそこまで強くはない。


 むしろ、俺の本領は戦闘ではなく、知的戦略による思考。

 相手がどのように来るのか。それにどのように対処すべきなのか。どうすれば可能となるのか。

 それらを思考し、実践し、成功させることこそ俺の本分。得意分野だ。


 ただ、ここでは領主の息子。

 その領主の命令とあらば例え嫌なことだろうともしなければならない。

 そのため俺はここで自分の番を待ちながらエクトルとケイの模擬戦を眺めていた。


 そんな第三者的目線の俺から見て、ケイの剣術は軽く、戦術もそれに沿ったヒットアンドアウェイ戦法。

 当てては避けてを繰り返し、相手の隙を狙う。


 対して、エクトルの剣術は重く、戦術は一撃必殺。

 当てられても必殺の一撃を相手に繰り出せば一巻の終わり。それがエクトルの本領。


 馬鹿みたいなムキムキな体に無尽蔵な体力、それに加えて剣術も達人並み。

 辺境伯の領主でなければ、大量殺人鬼のごとく風貌であちこちに屍の山ができてしまう。



 そんな二人は、次々と剣を打ち合う。

 ケイが距離を取れば一気にエクトルが突進してくる。逆に、近づき続ければエクトルの土俵で戦うこととなり、自分の得意戦法が使えなくなる。


 戦えば戦うだけ、一方的に不利な状況に追い込まれる。

 それを理解した上でなおも容赦なくエクトルは剣を振るう。だが、それを察していたのか、ケイもエクトルの剣をギリギリで躱す。


 一見、一進一退の攻防に見える戦いに教師は驚く。

 正直なところ、ケイが真面目に剣術を見せたのは今回が初めて。

 今まで手を抜いてやっていたのを本気と捉えていた教師にとっては驚きの光景だろう。


 だが、俺にはわかる。このまま打ち合えば、ケイは確実に負ける。


 それは剣術的な意味ではなく、持久力という意味でも耐久という意味でもである。

 ケイは受けるよりは躱すことを考えて、己の剣術を磨いてきた。


 つまり、剣術的に考えればケイの剣術にとってエクトルの剣術は相性が最悪過ぎる。


 言うなれば、天敵である。

 またそれに伴い、ケイは持久力が低い。


 これは、今まで一対一しかやってこなかったためだ。目の前の敵を倒せるならばその後は倒れてもいい。それが体に染み付き今こうして窮地に立たされている。


 対して、エクトルの剣術は幾多の戦場で培ってきたもの。

 目の前の敵だけでなく、その次も、そしてまたその次も、そうやって幾千もの敵を薙ぎ払ってきた中で、独自に進化した剣術。


 圧倒的な経験差。これがケイには欠如していた。

 ただ勝てば、良いというものではない。


 それを暗にケイに教えるかの様にエクトルは剣を振りかざす。

 そして、開始からおよそ十分。ケイはついにエクトルの剣を避けきれず、勢いよく後方へと飛ばされ、模擬戦第一回戦はエクトルの勝利で幕を閉じた。


「それにしても結構、強くなったな。ケイ。」


 剣を地面に刺して仁王立ちするエクトルは地面に倒れ、血反吐を吐く息子を見て賞賛する。

 初めて本気で打ち合い、それでも届かないエクトルの強さにケイは、激痛に耐えながら立ち上がる。


「今度は、勝ってみせますよ。エクトル卿。」


 口から血を流しながら、剣を支えに立ち上がるケイの姿を見て、エクトルは胸を張り応える。


「それは楽しみだ。いつでも、歓迎してやろう。」


 挑発的な意味合いで応えたエクトルの言葉を聞き、ケイは少しづつ後方へ下がる。

 自分の敗北を潔く認め、退場する。それが騎士の端くれとして生きてきた、今のケイのできることだった。




 そして、それを眺めるエクトルは再び、剣を構えると俺に突きつけて告げる。


「次は、お前だ。アルトス。」


 エクトルの声に呼応するかの様に、模擬剣を手に取ると間合いを見計らう。

 普段の使っている剣とは少しだけ重い、模擬剣を体の芯に沿う様に構えながら俺は思考を張り巡らせる。


 そんな中、正面五メートル程の距離にエクトルが剣を構える。

 俺と同じように体の芯に沿う様に構えるがその剣先は僅かにも揺れず、死の冷気を帯びたかのように冷たく煌めく。


 その時だった。エクトルの威圧が重く、体にのしかかりあたりの景色を黒く染め上げる。同時に、周囲の音も徐々に遠ざかっていく。


 ––––––––静寂。ただそれだけが、俺とエクトルの間にある空間を支配した。

 そして、同時に理解した。


 何故、エクトルが屍の騎士と称され、屍の山を築くのか––––––––それは一重にこのだ。


 戦場において、死は常に隣り合わせ。死を恐れれば恐れるほど、それは早く訪れる。

 だからこそ、死に争い続ける事こそが戦場を生き抜くコツなのだ。


 そして、そんな所で磨かれた剣術というのは、どれも残酷で冷酷だ。命を刈り取るためだけに生まれた、最悪。それこそがエクトルの剣術。


 ならと、俺は今まで磨いてきた剣術の全てを引き出す。

 俺の剣術。それはケイのとは違い、またエクトルの剣術とも異なる。

 俺のは、いわば両者のいいとこ取りのような剣術だ。躱すだけでなく受け流し、相手の隙を狙い一撃で仕留める。


 それが今の自分に出せる全力。無論、それで勝てるほどエクトルは甘くはない。

 当然、それを理解した上で反撃してくる。だから、それに罠を仕掛ける。

 俺の得意分野で勝負する。


「では、始めッ!!」


  本日、二度目の開始合図と同時にエクトルは地面を蹴り、間合いを一瞬にして詰めてくる。同時に、俺は自らの理解の甘さを実感する。


 開始直後に間合いを詰めることは想定していた。しかし、その速さは第三者から見てやや速い程度と認識していた。

 だが、実際は開始から一秒も経たずに視界の全てを覆い尽くす程の速さ。


 まさに一瞬の出来事に、俺はとっさに握っていた模擬剣を横に構え直し、エクトルの剣と俺との間に割り込ませる。

 その結果、無事成功しエクトルの剣と俺の剣が衝突する。


 力任せの一撃ではなく、蹴り出しによる助走と振り下ろす際のエネルギーを利用した重い一撃。それが、俺の両腕にのし掛かり、凄まじい衝撃が身体の芯から駆け抜ける。


「グッ……」


 衝撃に耐えきれず、食い縛った歯から息を漏らす。

 教師と行ういつもの模擬戦とは一線を画す程の実力差。

 それが俺の恐怖を掻き立て、腕の痛みが戦意を失わせる。


 金属の鈍い重低音が二人の間で鳴り響き、聴覚を鈍らせる。

 また、衝突に伴い火花が大量に飛び散り、視界をフラッシュさせ数秒、視覚を奪われる。


 それを好機と見たエクトルが再び襲いかかり、剣を追撃のため構え直す。

 それを予測していた俺は再び防ぐべく構え直すが、腕の痛みで反応が僅かに遅れる。


 そこを突くようにエクトルは剣を一の字を描くように真横から全力で振り払う。

 先ほどと同じ剣を間一髪で防ぐことに成功したものの、衝撃を和らげるべく、後方へ大きく飛ぶ。そこを再び衝撃が襲う。


 休む暇もなく、体の芯から破壊されるかの様な衝撃に、俺はグァッと血反吐を空に向かって吐き出す。

 だが、先ほどの追撃で衝撃を和らいだお陰か、なんとか意識を飛ばすことなく、耐えることができた。


 すでにボロボロ状態の体を起こすと視線をエクトルに合わせる。


 ここにきて始めて束の間の休息得た俺は、剣を正中線で構え直し、攻撃を繰り出すべく地面を蹴り上げる。


 歯を食い縛り、グリップを離さないように強く握る。

 僅かに離れていた間合いを一気に駆け抜け、エクトルの懐に飛び込むとすぐさま、攻撃を繰り出す。


 剣先を地面スレスレに構え、繰り出すのは下から上への斬り上げ攻撃。


 本来、相手からの斬り下げを利用して攻撃を攻撃で返すべく作られた型を俺はエクトルのほぼ真下から放つ。


 さすがというべきか、それを見たエクトルは一瞬驚くも、直ぐに対応する。


 強い共鳴音を伴う剣戟が二度、三度と繰り出される。

 その度に火花が散り、エクトルと俺の顔が険しくなる。


 剣さばきはエクトルが上ではあるが、俺はそれを覚悟で必死に食らいつく。

 終わりなく繰り返される一進一退の攻防にケイの兄も審判役の教師も、目を見張る。



 そんな状況の中、イーサン家最強の当主を相手に一歩も引けを取らずに、食らいつくアルトスの姿を偶然にも水を汲みに来たメイド達が見惚れていた。


 そして、その光景を見た一人のメイドがエクトルの妻を呼ぶべく急ぎばやで屋敷へと戻る。


 剣を交える度に、エクトルの攻撃が早くそして重くなっていく。


 それに比べて、俺の思考はすでに限界を超えていた。今にでも倒れそうなくらいに熱い身体を酷使させながらも、エクトルの攻撃を回避と受け流しで防ぐ。


 手数では明らかに負けてはいるものの先程のケイとの戦闘を思い出し、俺は体力を残す。

 第一回戦と同様に持久力で負ければ、元も子もない。


 今現在は防御に専念し、思考を遮る無用な焦りと僅かに残った麻痺を消し去ることに集中する。


 それがエクトルに勝つ、唯一の道。

 そう自分に言い聞かせる様に、徐々に冷静さを取り戻していく。

 だが、俺の狙いを悟ったのか、エクトルがより一層険しい表情で迫り来る。


 狙いは一つ––––––––心臓。

 速く、それでいて見事なまでの突きに俺は反応を余儀なくされる。


 今にでも焼き切れそうな思考を張り巡らせ、適切な対応を思考する。防御に突きは防ぎにくいが、移動による回避は容易となる。


 そして、俺はコンマ数秒中に意を決して反応をする。

 体をエクトル同様に屈めながら右前方へと移動し、エクトルの突きを回避する。


 そのタイミングを見計らい俺は勢いよく空中へと飛ぶ。

 空中で体を捻りながら、自分の下にいるエクトルを見下ろすと剣を構えて、勢いよく振り下ろす。


 その光景を、下から見上げるエクトルの顔が一気に焦りへと変化する。

 しかし、それでも反応すべく、エクトルは右足で突進の勢いを抑えると直ぐさま体制を変えて剣を構える。


 だが、焦りを感じ始めたことで反応が僅かに遅れ––––––––俺の剣がエクトルの剣に直撃する。

 その瞬間、衝撃に耐えられずにエクトルの模擬剣にヒビが一斉に入り、先端が砕け散る。


 また、反応したものの体制が不安定だった為、俺の剣の衝撃がうまく分散されず、姿勢が崩れる。



 突きは一般的に防御しにくい。

 また、西洋の剣と同じ剣をつかってやっているこの模擬戦において突きは非常に有効な攻撃方法だが、回避がされやすく重い剣を微動だにせずに突くのは思いの外、体力がいる。


 そのため、そう簡単に繰り出せず、次への対応も遅れてしまう。

 そのことをエクトルは承知していた。その中でも唯一、彼が見落としていたのは勝者の奢りだった。


 勝って兜の緒を閉めよ。

 遥か昔の人のことわざであるこの言葉がまさに、エクトルの敗因だった。


 エクトルが姿勢を崩したそのタイミングを好機に俺は追撃を行う。


 なし崩し的に倒れた、無防備なエクトルを上から襲いかかり剣を突き刺そうとする。


 刹那、女性の声が辺りの空気を震わせる。


「————何ですか! これはッッ!!」


 その声に俺は、剣を止める。

 そこには、ドレスを身に纏った気品な黒髪の女性。

 エクトルの正妻で有り、ケイの母親。


 そして、俺の育ての母親が、肩で息をしながら怒っていた。


 ドレスを身に纏った気品な女性。

 それは正式名、イーサン・サー・メアリー夫人。


 元伯爵家のご令嬢で有り、才色兼備と称されるくらい有名であったが、当時まだ駆け出しの騎士見習いだったエクトルに命を救われたことで恋をしてしまい、親の反対を押し切って結婚した。

 その後、エクトルの活躍が大きくなるとそのことを聞いた両親と和解して現在に至る。


 また、怒るとエクトル並みに恐ろしく、正論で相手を叩きのめす。


 そんな女性が現在、怒っている。

 その恐ろしさを知っている皆は彼女の声で一斉に姿勢を正し、あらゆる行動を中断する。


「これは、何事ですか……。」


 ゆっくりと、だが意気戦々としたオーラを放ちながらメアリーは告げる。

 すると、エクトルがまるで何もなかったかのようにスッと立ち上がり、服に付着した砂埃を軽く払いながらメアリーの元へと歩み寄る。


「すまんな、メアリー。これはちょっとした模擬戦だ。」


 そう告げるエクトルに、メアリーは先程と打って変って機嫌を直す。


「…………そうなのですか。でも、可愛い子供達をあまり傷つけないでくれますか。」


 意気戦々としたオーラはすでになく、メアリーはいつもの才色兼備な貴族へと戻っていった。


 そして、そのままエクトルはメアリーを伴って、周囲にいたメイド達と屋敷へ一斉に戻った。


 結果、メアリー夫人による唐突な参戦により、模擬戦はそのままとなったが教師曰く、俺の事実上の勝利で第二回模擬戦は終了した。


 以降、エクトルはメアリー夫人と模擬戦などをする事を禁止されたようで、エクトルによるスパルタ教育は終わりを告げたが、代わりに俺とケイの模擬戦がエクトルの監視の元、幾度となく行われた。

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