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 夕ぐれどき、空があい色とだいだい色にそまるころ。時計台とけいだいからオルゴールの音がなったら、それが合図あいずになるでしょう。

 まっしろな絵本えほんをみつけたら、おきにいりのクレヨンであなたのねがいごとをかいてください。

 そこはふしぎのくに。魔法まほうのせかい。ここにはないすてきなものが山のよう。もしもあなたがかなしいとき、どこにもいられなくなったときは、きっとむかえにきてくれるでしょう。

 もしかするとあなたは、わたしが思うよりずっとつらい気もちでいるのかもしれません。なにもかもがいやでたまらなくて、かぞくや友だちともあいたくない、ひとりぼっちで、どこかへいなくなってしまえたら。そんなふうに思ってしまって、なみだがとまらなくなってしまったら。

 どうか、どうか、すべてをあきらめようとしないでほしいのです。

 わたしはあなたのとなりにはいないけれど、なんとか、あなたがわらって、幸せであってほしいといのっているのです。あなたにわたしのあいをとどけることはできませんが、どうかあなたが、たくさんの人に愛されてほしいとねがっているのです。

 けして、あなたがこのせかいでひとりきりではないのだとわかってほしいのです。

 あなたにとってこのせかいはどんなふうにできているでしょう。お日さまは見えているでしょうか。よるのように、ほらあなのように、まっくらやみの中にいるのでしょうか。

 だとしたら、わたしのいのりが、これからはじまるおはなしが、あなたにとってのひかりになってくれたら、どんなにうれしいことでしょう。

 ねがいごとはかけましたか? さあ、オルゴールの音にみみをすませて。

 ゆめのせかいの、はじまりはじまり――


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