第6話 緑子 魅惑将軍エロイーナと戦う

「おのれ化け物がいい気になりおって! わらわを舐めてくれるなよ!」


と、動かしにくい肩をかばいながら、ムチを振るう。


「ちょっと! 誰が化け物よこの歩く猥褻物!」

 

 変身後の緑子の身体能力は飛躍的に跳ね上がる。 

動きの鈍ったムチなどものともせずにエロイーナへと肉薄し、素早く肩に刺さっていたレーザーブレードへと手を掛けて、わざと傷口を押し広げるように回しながら引き抜いた。


傷口から鮮血が迸り、流石にこれにはエロイーナもたまらず


「うぐぁぁぁぁぁぁっ」


と無防備に叫び声をあげる。


 そんな隙を見逃すほど緑子の戦い方は甘くない、そこに止めを刺すべくレーザーブレードを心臓目掛けて突き出そうとした瞬間、すぐそばに湧き出した亀裂から傀儡人形がエロイーナをかばうように飛び出してきた。


 緑子は、深々と人形に刺さったレーザーブレードから手を放し一旦距離を取り様子をうかがう。

すると亀裂から音もなく真っ黒な影が音もなくスルスルと出てきた。


『エロイーナ テッタイセヨ トノ オウノ ゴメイレイダ』


「其方はシャードウ将軍! くっ……余計なことを……情けなど受けずとも、わらわはあのくらい避けれたわえ!」


『ヨケイナ ハナシハ アトデシロ ユクゾ』


そう言うと、影はエロイーナを包み込むように捕らえ亀裂へと帰っていく。


「あぁ……わらわの極上の食事が……」


と社長へ未練を残すような声と共に亀裂も消え去っていった。


「……とりあえず通信は回復したようね……急いで応援を呼ばなくちゃ」


と、連絡を入れるために変身を解こうと女子トイレへと駆け込む緑子なのであった。



* * *


 三日後、大事を取って検査入院していた小村社長達は無事退院していた。


爆覇ばくは、今回は良くやってくれた。 敵の幹部を退けられたのは大きな収穫だったよ」


と対策本部へ出社してきた小村社長は、機嫌よく爆覇ばくはを褒めたたえる。 

だが爆覇ばくはは納得がいかないのか


「俺、途中で気絶してしまったようで何も覚えてなくて……」


それを聞いて緑子が


「私が駆け付けた時には、あの歩く猥褻物女がひどいケガをして亀裂へと帰っていくところだったわよ?」


と誤魔化す。


「でも肩に刺さったはずのブレードがなんで傀儡人形に刺さってたんだ?」


「ア……あぁ! それなら亀裂に飛び込む前に抜いて捨てていったのよ、そのあとで一体生き残ってた人形に私が刺したわ!」


「なんだって……! まだ傀儡が残ってたのか……すまない。 緑子さんに後始末を押し付けてしまったんだな」


と落ち込んでしまった。 

なんとなく罪悪感を感じた緑子は


「精神攻撃で弱ってたのによく戦ったわ! 爆覇ばくは君ならもっと強くなれる! だから一緒に頑張りましょう!」


と慰める。


「あぁ、だから今度こそちゃんと俺を鍛えてくれ!」


爆覇ばくはもやる気に満ち溢れているようだ。

そんな二人を、にこやかに見ていた社長は


「とりあえずCMは延期になったから、鍛錬を優先してくれてかまわないよ。 しかし爆覇ばくは達が見たっていう魅惑将軍? だっけ…… 一体何が目的だったんだろうね?」


と不思議そうな顔をしている。


「そりゃあ、負のエネルギーを回収しにきたんじゃ?」


と答える爆覇ばくは


「まぁそれはそうなんだけど、危険を犯してまで敵の真っただ中みたいな所にわざわざ来たことが不思議でねぇ……」


その言葉を聞いて、緑子は


「あの……魅惑将軍? が言ってましたよ……社長のエネルギーが極上の食事だって……」


と、何とも言えない顔で答える、それを聞いた爆覇ばくは


「あー……そういえばなんか社長の事、膝に乗せてめちゃくちゃ撫でてたな、あの派手な顔立ちのめちゃくちゃスタイルのいい痴女」


と、思い出してニヤニヤしている。


「ち……痴女に私は撫でられ放題されてたのかい……?」


困惑したような、心なしか嬉しそうな複雑な顔の社長。

そんな二人を冷めた目で見ている緑子。


「オ……オホン! とにかく開発の方へデータを回したから精神攻撃に対する対策は早急にやらせる! 爆覇ばくはは緑子君と特訓に励んでくれ!」


と社長は誤魔化すように早口でまくし立てて、そそくさと去っていった。

微妙に気まずい空気の流れる中緑子は


「さぁ! お望み通り特訓しましょうねー!」


と爽やかな笑顔で爆覇ばくはを見ながらゴキリと指を鳴らすのだった。


「お……お手柔らかに……オネガイシマス……」


と、遠い目で答える爆覇ばくは、その後トレーニングルームに爆覇ばくはの悲鳴が轟き渡ったことは言うまでもないのであった。


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