第4話 緑子 アイドルに出会う
ここ、特務対策課の専用トレーニングルームで今、緑子と
「はい! もっと姿勢を正して!」
そう言いながらパンパンとリズミカルに手を叩く緑子。
「そ……そんなこと言われても」
及び腰になりそうなのを必死で我慢して、頭に本を乗せてリズムに合わせて歩く
しばらく頑張った後おもむろに
「なぁ、緑子さん……これモデル歩きの練習じゃねーの?」
と、胡乱そうな顔で緑子へ問いかけた。
「そうよー」
コクコクと頷く緑子。
「これ戦闘関係なくね?」
と首を傾げて本が落ちそうになり慌てる
「だって、社長からメタルバンのCMを流すことにしたから、中身を見栄えのいい動きができるように鍛えてくれって……」
「いや待てよく分からない……そんなものより、今は戦闘技術を鍛える方が先じゃねぇの?」
「まぁ私もそう思うけど社長命令だし……あぁ!そういえばCMは人気アイドルと共演するって聞いたわよ」
「緑子さん、どんどん鍛えてくれ! さぁ次は何すればいいんだ?!」
めちゃくちゃやる気の上がった
……だが肝心な事を彼は忘れている、自分はアイドルとは変身前に会えないトップシークレットの存在だと。
◆◇◆
そんなこんなで撮影当日。
「おはようございまーす! 今日はよろしくおねがいしますね!」
現場に到着した人気アイドルの月村ひよりがスタッフに挨拶しているのが見えた。
「メタルバン、アイドルの子来たわよー」
とノンキに
スタジオの隅っこで、澱んだような空気をまといガックリと項垂れているメタルバンは
「そうだった……俺素顔で会えないじゃん……」
と絶望しているようである。
緑子はめんどくさいのでスルーして社長と話しているアイドルを見ていた。
「やぁ月村さんよく来てくれたね。私は特務対策課の総責任者であり、マッドブレイン社の社長である小村烈だ! よろしくね」
とニコリとひよりに微笑んだ。 世間一般でいうイケメンという部類にはいる社長に微笑まれて、ひよりは顔を赤くしてしまいながら
「よ……よろしくお願いします……」
とモジモジしている。
「じゃあ早速だけど紹介するね、そこにいるのが特務対策課戦闘部隊所属のコードネーム『メタルバン』だよ。その横にいるのが助手の
「よろしくお願いします」
ペコリとお辞儀する緑子とメタルバン
「あの、それで今回のCMのコンセプトはどういう感じなんでしょうか?」
と緑子は小村社長に問いかけた
「あぁ、そういえばまだ伝えてなかったね、今回のCMは特務対策課への通報の仕方と、非難誘導に従う事の徹底を伝えるために国の指示で制作されることになったんだよ」
と説明してくれた。
「なるほど……では私は見学してたらいいんですかね?」
社長は頷きながら
「うん、今回はまぁ休憩中のメタルバンのお世話してくれるかな?」
「了解しました、では控室のほうで待機してます」
「よろしく頼むね」
と話し合いが終わり、緑子は控室へと歩き出した。
◆◇◆
控室へ向かおうと歩いていた緑子は、撮影所のドアから建物の中へと紫色の霧のようなものが静かに入ってくるのを目撃した。
「えっ……なにこれ……」
霧は勢いを増しドンドン入ってくる。 すると近くにいた男性スタッフ達がバタバタと倒れだしたではないか、驚きながらも緑子は
「だっ、大丈夫ですか!」
と男性の様子を見る、意識を失った男性たちは苦しそうに
「これは……もしかして悪夢を見せられているのかしら」
緑子は倒れている人たちをわきに寄せて、社長達へ知らせるためにスマホで連絡を取ろうとしたが電波が遮断されているのか通じないようだ。
「本格的にマズいかもしれない……」
緑子は急いで撮影現場へ走った。
そこで見たものは男性全員が倒れており、女性たちが傀儡人形に捕まり縛り上げられようとしている姿だった。
「ちょっとこれどうなってるのよ……メタルバンは……」
そう言いながらキョロキョロと辺りを見回すと、なんとそこにはゆったりと椅子に腰かけ足を組み、尊大な様子で意識を失っている小村社長を膝に乗せ、愛玩するように頬を撫で擦っているきつい化粧をした派手な顔立ちの女が見えた。
その足元に転がっている金属の戦闘スーツはメタルバンだろう。
「なっ……何してんのよあんた!」
ちょっと顔を赤くして女に声をかける緑子を女は一瞥して
「見てわからぬのかえ? この
と見せつけるようにまた撫でている。
「……あんた襲来者ね? この人たちに何をしたの!」
「何と言われてものう……わらわの力で夢の国へ行ってもろうただけじゃ、そこでわらわへ永遠に
「つまり永遠に悪夢を見せてそのエネルギーを吸い取ろうって事じゃない! 絶対許されないわ!」
と言い募る緑子に、不満そうな顔で女は
「別にそなたの許しなどいらぬ、邪魔するなら容赦せんぞ……人形よ、やってしまうのじゃ!」
その声と共に周りにいた人形が一斉に緑子へ襲い掛かってきた。
「くっ……」
緑子は覚悟してペンダントへ手を伸ばした瞬間
「その人に手ぇだすんじゃねぇええええ」
ドガアアァァンという爆発音と共に傍にいた人形が吹き飛ぶ。
「緑子さん……すいません不意を突かれました……」
とノロノロとメタルバンが起き上がる。
「ば……メタルバン!あんた意識が戻ったの!」
「スーツの精神攻撃防御機能がやっと働いて……緑子さん、ここで俺がなんとか時間稼ぎますから応援を呼んでください」
「分かったわ、通信が妨害されているからなんとか外へ出てみる!」
と外を目指して緑子は駆けて行くのだった。
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