起床

 子龍が寝返りをうちました。ごろごろと転がっていきました。毛布を体に巻いてみのむしになってみたり、枕に顔を埋めたりしています。両腕を伸ばしたり顔をぐしぐしこすったりして、それらに飽きた頃にやっと体を起こしました。

 ずいぶんよく眠った気がするよ、と子龍が言いました。よく眠ったので頭が晴れ晴れとしています。空は青々としていました。太陽はとっくに昇り、ひとびとはそれぞれの仕事をしています。八十竹は新聞を読んでぼんやりしています。空を渡る龍のごうごうという声が響いて、遠ざかっていきました。

「この新聞ってどこが出してるの」

「カゲトカゲネットワーク新聞部」

「どおりで、ひどく昔の忘れていたようなこと、誰も見たことのない未来のこと、さまざま書かれているわけだ」

「みんな冗談だと思って読んでいる」

 八十竹の書斎には時空便受け口があり、新聞は不定期に投函されます。購読を契約した覚えはないのですが、はて。集金人は帽子を深く被り、どこのものとも知れぬ制服を着た背の高い男です。前に来たときは低かったかもしれない。知らないようで知っているような、不思議な男でした。

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