第2話 帰還

 何度、呼び出しても百里基地への無線は通じなかったが、俺は予定通り基地への進路をとった。


 タイムトラベル?、まさか。幻覚を見ていると考えたほうが合理的だ。とにかく、一度、速やかに帰還するのが最優先だ。


 視界に入った基地は、攻撃された気配はないが、明らかに外観が違う。そして、零式艦上戦闘機、いわゆるゼロ戦が駐留していた。


 見知らぬ基地に着陸すべきか、一瞬迷ったが、無限に飛び続けることも出来ない。俺は着陸態勢に入った。


 サーチライトで照らされる。万が一、攻撃された時には、すぐに上昇できるよう、操縦桿を握りながら、滑走路へと機体と沈める。


 そして着陸した。


 俺はすぐにはコックピットから出ず、様子をみていると、まわりに人が集まってくる。しかし、それ以上は近づかず、遠巻きに一定の距離をおいている。しばらく、にらみ合いが続いた後、一人の男が近づいてきた。


「お前は何者だ。所属を明らかにせよ」


 俺はコックピットのキャノピーを開け、答えた。

「百里基地所属、航空自衛隊第305飛行隊 中島曹長であります」


「航空自衛隊? それは、海軍か、陸軍か?」

「航空自衛隊であります」

「だから、海軍か陸軍かとたずねている」

「海軍でも陸軍でもありません」


 男は周りの人間と言葉をかわし、俺に向き直った。

「お前は日本人か」

「はい、日本人であります」


 男は周りの人間と、また何か話をした。

「降りて、話を聞かせろ」


 俺は覚悟を決め、機体を降りた。

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