大鷲は星空を翔ぶ

明弓ヒロ(AKARI hiro)

第1話 偵察

「こちら、F15イーグル、中島。硫黄島周辺、異常ありません」

了解ラジャー。速やかに帰還せよ」

 俺は操縦桿を引いた。


 軍として正式として認められず、実戦経験もないが、日々、我が国の領土の安全を守るのが俺の仕事だ。


 子供の頃に、漫画や映画に出てくる戦闘機パイロットに憧れた俺は、航空自衛隊に入隊し、厳しい訓練に耐えて、念願のF15パイロットになった。


 F15イーグル、その名の通り大空をかける大鷲。30年以上前の機体で引退間近だが、空力性能は最新のステルス機にも負けていない。無人機が主力となるであろう将来、パイロットの技量が試されるギリギリの時代に俺は生きているが、俺の腕が必要となることは、残念ながら、いや、喜ばしいことだが、無いであろう。


 命をかける緊張感の中で、戦場の大空を自在に飛べたら、いったいどんな気持ちなのなのだろうか。不謹慎な思いが頭をかすめながら、俺は、百里基地への決められた空路コースを、寸分違わずトレースした。


 空は曇天、かつ、暗天。雲がなければ、星空の下の、ロマンチックな飛行となるのだが。


 そして、視界の端で、一瞬、光が走った時、落雷が機体を襲った。


 しかし、何事もなく、空を飛ぶ。次第に雲が晴れ、星空が見える。


 東京の上空に差しかかり降下を始めた時、眼下には炎が舞っていた。そして、炎を背景に、豆粒のような黒い点が、ところどころに、浮いていた。


「これは、いったい?」

 目にしている光景に理解が追いつかないなか、条件反射的に、無線のスイッチを入れる。


「 百里基地、こちらF15、中島。百里基地、こちらF15、中島」

 無線で呼びかけるが応答がない。上空で旋回して様子を見ると、黒い点の行く先々で、炎が広がる。


「爆撃しているのか?!」

 冷静さを取り戻して地形を見ると、眼下にあるのは紛れもない東京だ。


「攻撃されている。いったい、どの国が」

 俺は敵機を目視できるよう降下を始めた。


「B29!」

 信じがたい光景だが、B29が東京を爆撃している。

「これは、現実なのか?」

 俺は、なすすべもなく、東京が火炎に飲み込まれるのを眺めていた。

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