第十八話 幻術士は復讐するⅡ
冒険者ギルドでリィルと別れてからすぐ、メンビル外郭付近に位置する
何故ここに来たのかというと、それは――復讐のためだ。
――ドンドンドンッ!
「御免くださーい」
――ドンドンドンッ!
「出てきてくださーい!」
――ドンドンドンッ!
「居るのはわかってるんですよー、フォンパさん!」
「――誰だよ、うるせえなっ!」
名前を呼んだところで、ようやく反応が返ってきた。
錆びついた
「あん? お前は昨日の糞ったれ【幻術士】じゃねぇか……何の用で来やがった?」
「逃げるなっていったのはあんたじゃないですか。俺は今日、
「
目じりを険しく釣り上げて、俺を睨みつける。
「……くくっ。そう簡単には信じられないですよね。安心してください、あんたに見せる分のMPは残しといたんでね」
「お前、何言ってやがる?」
フォンパはイライラした様子で、腰に帯びた双剣に手を当てる。
口答えするなら、切り伏せるぞとでも言わんばかりだ。
おお、怖い怖い。
……怖い人には、怖いモンスターで対抗しなくっちゃね。
今日手に入れたばかりの結晶を取り出し、魔力を込める。
「……ひとんちの前で幻術なんか使ってんじゃねえよ、縁起悪ぃ。
ついに双剣が引き抜かれた。
全く、怒りっぽい奴だ。
「まあまあ、黙って見ててくれよ。ここからが【召喚士】クロスの、ショータイムなんでね」
「はぁ? 【召喚士】だ?」
そう、【召喚士】だ。
答える代わりに、幻像に魔力を入れる。
――バチバチ、バチバチ
大気が揺れ、稲妻が
召喚するときに、ここまでの衝撃を感じたことは今までなかった。
そういえばステータスを見ていなかったことを思い出し、【鑑定レベルB】を使う。
種族:モンスター
名前:
性別:♀
レベル:100
HP:12579
MP:9858
攻撃:11653
防御:10782
魔力:9123
敏捷:10042
……レベル100の大台か。
そりゃいつもと召喚の雰囲気も変わるよな。
納得したところで、ちらりとフォンパのほうを見る。
奴の額からは、滝のように汗が流れ出ている。
実物を見れば、これがただの幻術じゃないと、理解できるくらいの勘は持っているらしい。
でも今更分かったところでもう遅い。
俺の復讐のボルテージは、今、最高潮に達している。
この
「……
――ビシャア
「ぐぁっ!?」
フォンパの体中を毒液が覆う。
「さて、フォンパ君。毒液を受けた君にこれから起こることを、懇切丁寧に説明してあげよう。俺は親切なんでね」
「
「ぐっ、がぁっ」
――カラン、カラン
フォンパは持っていた双剣を床に落とす。
麻痺で剣を握ることができなくなったようだ。
「それから血管の細胞が破壊され、体の内外で出血が起こる。毒の作用により、流れる血は決して固まらない。全身が血で溢れ、内臓が破壊されていく。体中の内臓が、悲鳴を上げながら壊死していく。そのしんどさは……嗚呼、俺には想像できないな」
フォンパは無表情のまま涙を流している。
もはや表情筋すら麻痺しているようだ。
「後悔してるか? してるよな? ……わかったら、今後差別をやめるんだぞ」
フォンパの口を開けて、粉の包みを放り込む。
これは、万が一の時のために、リアが用意してくれた特製の解毒薬だ。
一流の【調合師】が作った、値打ち物らしい。
「がはぁっ! ……はぁ、はぁ、はぁ」
薬の効果が早くも出て、呼吸ができるようになったみたいだ。
「ぐっ、うぅ、あんまりだ……ぐすっ、ぐすっ」
四つん這いの姿勢で、赤子のように泣きじゃくるフォンパ。
「それじゃあな、フォンパ。これに懲りたら、新人いびりもほどほどにするこったな」
背を向けながら、あばよっと手をあげてその場を去る。
これでまた一つ、復讐が終わった。
胸のすく思いで、リィルたちのいる場所へと帰るのであった。
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