特別編 140文字以内の「超短文劇場」詰め合わせ
「髪型かえたんだ。いい雰囲気じゃん。」片想い中の彼の、最高の褒め言葉。
"彼にフラれた。"
まるで、彼との物語が突然完結を迎えてしまったかのように......
でも、物語の分だけ、人に優しくなれる。
"強がりだけど......"
ふと彼女の家に向かう情景を思い浮かべた時、僕のこころに何か物言わぬどんよりとした塊が、急激に存在感をあらわにし、僕の心をコンコンとノックした。
『終わってしまうのが、さみしく、悲しく、むなしい』と。
わたしは、いまどき...本当にいまどきだが、彼に手紙で想いを渡すことにした。
言葉で伝える。
メールで伝える。
手紙を渡す。
手紙は唯一渡す事の出来る想いだから。
「このパスタおいしいー!」
「おいしいね。」
そんな笑顔でかわす、何気ない些細な会話こそが幸せな会話。
ふとそんな事を、私は考えていた。
仕事で失敗し落ち込む僕に彼女が一言、
「おつかれさま」と言いながら、
僕の背中をそっと擦り、僕のこころに優しさをしみ込ませた。
はじめての失恋、死ぬほどつらかった。
二度目の失恋、やっぱり死ぬほどつらかった。
三度目の失恋、またかと思った。
四度目の失恋、恋愛が嫌になった。
五度目は、プロポーズだった。
告白できなかった。
落ち込みながら、家に帰り明かりよりも先にテレビをつけた。
「今日じゃなくて。明日がいい!」
たまたま流れた台詞が私に元気をくれた。
「あれっ、前髪ちょっと切った?」
「気が付いたぁ。そう、切った。」
「へぇ~。可愛くなったじゃん」
「ほんとう!?ありがとう」
「うん。かわい......」
ぱっと目が覚めた。
もう少し見ていたかったな......
『正夢になれ!』
入社してもうすぐ一年。
僕は他の同期よりも、成果も結果も全然出せず孤立していた。
焦りや劣等感が、洪水のように僕のこころに溢れ、心が折れかけた僕を、
部長が救ってくれた。
「即戦力じゃなくてもいい。成果と結果は速さじゃない。
諦めなかった人が出すんだ。」
「ねえ、好きだよ」
「ねえ、付き合ってよ」
「ねえ、大好きだよ」
あなただけに見せるかわいい顔して言いたいから。
鏡に向かって明日のリハーサル。
髪を切って、一番に片想いの彼に会った。
満面の笑みで会っていたのに、時間の流れと共に私の表情は曇っていった。
彼が私の髪の事にちっとも触れてくれなかったからだ。
"何も言ってくれないの...。"
「ばか」
わたしは決めた。
今日こそ想いを伝えると。彼はあと30秒でここを通る。
20.19.18...鼓動が早く大きくなる。
5.4.3..."イケ!"わたし!
"嫌い"から"好きに"突然変異を遂げた想いが"大好き"に変化するまでそう長くはかからなかった。
スポンジがこれ以上水が染み込む事を拒絶するように、
私の心は、彼への想いで溢れかえっていた。
十秒前、わたしに彼氏はいなかった。
十秒後、コクった。
十秒後、わたしに彼氏ができた。
三十秒で人生が変わった。
小さな子供のような寝顔で、小さな寝息をたてる彼。
"かわいい"そして"しあわせ♡"
コクった。
フラれた。
「別に好きな人がいる」って断られた。
「わたしだって、別に好きな人つくるもん。」
その強がり、誇ってもいい。
「また明日ね。」
「ねえ。好きだよ......」
彼は立ち止まらずに、どんどん私から離れていく。
距離は容赦なく離れていく。
唇を動かさずに「好きだよ」って......
立ち止まるわけないよね。
今日から仕事帰りにメイク教室。
わたしをふった彼の網膜にキレイになったわたしを焼き付かせる。
そして、踏み出す新しい恋への第一歩。
過去のわたしが色褪せて見えた。
わたしが新しい恋を見つけたからだ。
ありがとう過去のわたし。
ようこそ新しいわたし。よく乗り越えたね。
「あっ、あのさ...」
「好きなんだよね。」
言ってしまった。言えてしまった。
私は頬を赤らめ、顔の熱さを感じながら窓の外の風景に目をやった。
theoryのコートにタイトなミニスカートをあわせ、
ピエールマントゥのストッキング
セルジオロッシのヒールで完全武装。
時にはブランドに自信を与えてもらうのも悪くない。
同僚の彼がわたしを絶賛した。
「超すげー。超いいじゃん!よくやったなあ!」
実は全くやりたくなかった仕事だった。
私の仕事を認めてくれた。この仕事やってよかったと思えた。
「はい、毎日おつかれさま。」
と言って僕に弁当を作って渡してくれる。
ありがとう。
毎日の何気ない二人の世界が、僕は大好きだ。
今日の私はテンション高め。
久々に会う高校時代の友人とランチを楽しんでいることも一因だが、
出かける前の旦那の一言が、一番の要因。
「今日の服、センスいいじゃん。」
嬉しい褒め言葉。
会社の仲間四人とランチ。
一人の後輩男子が私にさりげなく
「黒目きれいですよね」
"こいつ、私のツボを心得ているな"
うれしかった。
唐突に視界がぼやけた。
まるで、少しくすんだグラス越しに風景を覗きこむかのように。
同時に心は、急に下から突き上げられるように激しく浮き上がった。
彼からの嬉しいプロポーズだった。
それは耳からすっと入り込み、瞬く間に僕の脳裏に焼き付けられた。
その瞬間、何でもなかった女性が、かわいい女の子に見え始めた。
告白されるって、いいものだな。
いつもはミルクと砂糖を入れて飲むコーヒー。
でも、今日はブラック。
くちづけをするようにそっとカップに顔を近づける。
コーヒーが私に純粋に伝える香りと苦味が、なんだか私を励ましているようだ。
フラれちゃった......
片想いの彼がさっきまで座っていたデスクにこっそり座り、
デスクの上に手を置いて、目をつむり、わずかに残る彼の温もりを今一度たしかめる。
わたしの密かな独占タイム。
「よろしく」
この一節を目にした瞬間、わたしの頭から足先まで電気が駆け抜けたように、ピーンと背筋が伸びた。
無理だと思っていた高い壁を一気に越えた、奇跡の跳躍をしたようだ。
わたしの恋が実った。
牛肉のパイ包みに、オニオングラタンスープ、
焼きたてのパンにサラダ。すべて私の手作り。
抑えても抑えても、うれしい気持ちが前面に押し出されてくる。
今日、彼がアメリカから帰って来る。
それはまるで溶岩石に雨水が染み込むように、じんわり時間をかけて、
わたしの心にしみわたっていった。
やがてそれは圧倒的に私の心を支配する。
彼への想いが私に寄生した。
この曲を聴くとせつなくなる。
見えない風のようにパッと過ぎ去ってくれればいいのに。
大きな塊となってわたしの心に居座り続ける。
時間が解決してくれるかな......
でも、選んだのはわたし。
そのぬくもりを感じた瞬間、恋愛映画のクライマックスを迎えるように、
わたしの脳から"幸せだ"と明確な指令がすべての細胞に、光よりも早く伝えられた。
彼と初めて唇を重ねあわせた時だった。
休み明けはいつも憂鬱な私。
会社の最寄駅に着き、一目散でお気に入りのカフェに向かう。
コーヒーをすすりながら、『今週ものりきろうー!』
まわりの見ず知らずの同胞と、無言のエールを交わし、私は月曜日に勢いをつける。
公園のベンチにひとり座り、池を漠然と眺める。
まるで、今のわたしの気持ちと同調するように、空は曇り、
「仲直りできるかなぁ......」
些細な事で彼とケンカした。
今夜の月はやけに綺麗に見えた。
ケンカした彼と仲直りした夜。空を見上げ、
まわりの小さな星にも輝きをお裾分けしながら光る月を、
わたしは淡く微笑むように眺めていた。
彼は大好物のオムライスを口いっぱいに頬張った。
その瞬間、彼は笑顔になり、瞳が隠れてしまうほど目をほそめてた。
彼のその表情が、わたしにすべての感想を伝えていた。
「頑張って作ってよかった。」
「明日めしでもどお?」
片想いの彼の一言が、何でもないその一言が、
私の記憶にあまりに鮮明に焼き付いた。
録画したドラマのワンシーンを観るように何度も巻き戻してしまう。
"今日楽しみだな"
胸を躍らせて出勤する私。
反射的に私は彼の姿を目で追っていた。
「なぜ?」私の心にふと思い当たるひとつの想い。
その想いは時と共に成長し、説得力を増し私は従わざるをえなかった。
「すきだから。」
今朝、いつもと違う髪型にしてみた。
彼氏に見せたら、うれしい一言。
私は花が咲いたような表情で家を出た。
朝日が眩しいな。
「今以上可愛くなってどうするの」だって。
仕事で嫌な事があり、蓄積された疲れも重なり、
私はいつも以上にへこんでいた。
つらくて思わず彼氏に電話してしまった。
電話に出た彼が、
「おう、ちょうどお前の事考えてた。」
って言ってくれた。
キュンとした...泣きそう。
「好きだ」
この一言を言うのにどれくらいの勇気が必要なのだろう。
今日も彼女と"友達"として美術館にいく。
次は"デート"という名に変えたい。
晴れた日曜日。彼と食材のお買い物。
「今日なにつくろうかな~。」
「何かリクエストある?」
「うーん。寒いしカレーかシチュー。」
「じゃあ、ニンジンとジャガイ...」「あっ、あとさ」
「うん?」
「好きだ。」
「なっ...もう、なによ」
私は急に顔を赤らめてしまった。
『おまけ』
※決め台詞と心理描写をいれる尺が足らず、単なる情報に変更したボツ作品。途中の"景色だ"まで作品です。実際にツイッターに情報としてツイートしました。せっかくなのでそのまま情報としてご活用ください(笑)
品川方面から札の辻交差点を左折。
桜田通りに入る。ここから眺める夜の東京タワーは、別格の存在感と圧倒的な眺望を見せてくれ、外国にいるような景色だ。
彼女とドライブの時、ちょっとしたサプライズにもなる。
と、たまにはこういうのもありかな(笑)
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